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最近、幼馴染がぐいぐいくる。(仮)  作者: 「」
第三話 エンライ
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幼馴染の提案

 午前中の授業を終えて昼休み。

 円香を一瞥し、いつものメンバーに囲まれていることを確認していると、石井に声を掛けられて昼食に誘われる。

 交際相手とは週三、四日は一緒に過ごしているとのこと。毎日一緒に昼食を取れない代わりに彼女が用意してくれたという弁当を持ってきおり、自慢げにそのことを話された。

 嫁が作る弁当を愛妻弁当と呼ぶが、愛しの彼女が作る弁当はなんと呼ぶのだろう。

 まぁ、いいかそんなことは。


 梅雨も開けているのに薄暗い廊下を歩き学食へ。

 夏はほぼ誰も使用してないテラスへと更に移動する。

 ガラスの引き戸を開けば、生ぬるい風に晒される。

 付近にきた学生がこちらを見て嫌そうな表情を見せてくる。

 冬も使用率下がるだろうなと予想。


 冷房の効いた室内より圧倒的に快適度は落ちるが、たまに吹く風に雲の隙間からの日差しを遮る屋根もあり、俺は嫌いじゃない。

 曇っているおかげもあり今日は特に過ごしやすいほうだろう。


「何か聞きたいことがあるんじゃないか?」


 弁当を包んでいた風呂敷を解きながら石井が言った。

 一軍の男子は気づいてないかもしれないが、俺と石井はよくつるんでいるしクラスの雰囲気を察しているのだろう。本人も人間観察が趣味みたいなことを言っていた。

 誰も気づいていて何も言わないのは、女子のいざこざに巻き込まれるのだけはゴメンだという理由に他ならない。

 俺だって嫌だ。

 面倒くさいことこの上ない。

 それに矛先がこちらに向けば進級するまで睨まれることになる。


 一瞬だけ間を起き、新しく知りたいことは何かあっただろうかと思考を巡らせる。

 そして、出てきた質問は。


「女子のことを教えてくれ」


 と、曖昧な質問。


「藍浦もお年頃ってことかい?」

「本気で言ってるのか」

「あまりにも真剣だったもので、ちょっとからかいたくなっただけだよ。ごめんごめん」

「ったく」

「ちょっとは肩の力が抜けたかな?」


 そんなに力んでいたんだろうか。

 自分では普段通りのつもりだったのだけど。


「君は顔に出やすいからね。立花さんも君の顔を見ればわかっていただろうね」

「なんで石井がわかるんだよ」

「親友だろ?」

「いつからだよ……」


 出会って即、親友。

 それにしては俺はこいつのこと知らないんだけど。

 陰の薄いイケメンで彼女持ちという事ぐらいだろう。

 ……なんか、ムカつくな。


「なんてね、友達は君だけだから仲良くしたいだけだよ」

「俺と友達になってもメリットなんてないけどな」

「君といるのが楽しい、楽という意味もある。それだけでいいんじゃないかい?」

「ふ~ん。恥ずかしい事言うのな」

「あはは。君が聞いてきたんだろ」


 確かにその通りだが、決め顔でそんなことを言われるのを期待した訳では無い。

 こっちまで小っ恥ずかしい。


「で、藍浦。具体的には何が聞きたい?」

「円香の置かれている近況と状況」


 そう言えば気になる人物が一人いたな。


「あと、中村? 彼についても教えて欲しい」

「サッカー部の中村先輩か」


 彼女の手作り弁当、綺麗に焼き上がった卵焼きを口に運びながら石井は思い出すように考え込む。


「僕も学年が違うから彼女から聞いた情報だけでいいか?」

「あぁ」

「藍浦はどこまで知ってるのかい?」

「一個上の先輩で次期エースってことぐらい」

「そうそう次期エースって言われているけれど、実質今も彼がサッカー部の中心だよ。ルックスもあり部の中心。彼がこの学校でトップに君臨していると言っても過言じゃないね」

「いるんだな。そんな天に二物も三物も与えられる奴って」

「元々強豪校出身でこの高校転校してきたらしいんだけれど、なんで少し強いだけ、数年前に全国にいけたぐらいで、最近は県大会で敗退する高校にいるのかって僕の彼女も不思議がってたよ」

「へぇ……」


 彼女何者だよ。

 年上だってのはわかるが、そこまで情報が集まるものなのか。

 中村の情報だから集まりやすいのか。


「そんなわけで人気もナンバーワン。さすがに創作物みたいにファンクラブがあるわけじゃないが、あってもおかしくないぐらいの人気ってところ」

「性格は?」

「好青年らしい」


 完璧超人じゃない。

 せめてワキガであってくれ。


「今彼の彼女に一番近い相手が立花さんって噂だね」

「それであんな事になってんのか」


 女子の嫉妬恐るべしというべきか。


「いや」


 石井の否定が入る。


「最初の質問に答えにもなるんだけれど、厄介なのが彼女持ちのサッカー部員とも立花さんは仲良くしているようで、といってもマネージャーとして致し方ないし、寧ろ向こうから寄ってくるだけっていう。そのおかげで彼女の美貌に焦った交際相手が焦りや嫉妬で立花さんを嫌っている」

「……彼氏を信じてやれないもんなのかね」

「信じるとか嫉妬するとかはまた別の話しだよ。相手が高嶺であればあるほど焦る気持ちは僕にもわかる」

「そんなもんなのか」

「君も恋したらわかるよ」


 鳥肌が立ちそう。

 おまけに口の中がもにゅもにゅして砂糖水でも吐きそう。


「ここからは僕の憶測なんだけれど、うちのクラスの女子たちに先輩たちから圧力が掛かってるんじゃないかな」

「円香に嫌がらせしろって?」

「あぁ、本人たちは立花さんになんとも思ってなくても、先輩に圧力を掛けられて『立花さんのせいで』ってなってるんだろうね。もし断れば自身の部活内での立場が危うくなる」

「それだけサッカー部の彼氏持ちってのは権力があるのか」


 卒業したらそれまでの力。

 この小さな閉じられた環境だけの力。


「そうだね。立花さんは中村先輩のファンとサッカー部員の彼女の両方からの悪意を向けられているってところかな」

「はぁ……」


 ため息も出る。


「休みを挟んで悪化している原因は?」


 石井の話しは状況整理にしかならない。

 知らなかったことも増えたというか、マネージャーを続けていたことで増えた問題。

 本人の真面目さ、誰とも親しくなれるという性格から招いた嫉妬。

 元はと言えば前田さんのためにっていう友情からきたもの。


「男子部員の一人が立花さんをデートに誘った」

「聞いてないぞ」

「立花さんにとってはいつものことだったんじゃないか? あんだけ可愛い子なんだ、誘われるのは必然だろ」

「確かに」


 円香の保護者面してなんでも知っている気になっているが、身内でも話さないことはある。


「解決法なんて思い浮かばないしな」


 聞いただけで何か思いつくなら円香が既に自身の力で解決しているだろうし。


「僕が思い浮かぶのは一つだけあるけれどね」

「何だよ」

「君が立花さんと付き合えば良い」

「……アホ言え。俺は好きでもない人とは付き合わないぞ」

「なんてね」


 一つの解決法としては間違ってない。

 よほど性根が腐っている奴じゃない限り、彼氏持ちの女子を誘おうとは思わないだろう。


「ま、参考になったよ」


 少しだけ残った弁当を片付けて先に教室に戻ることにした。

 気は進まないが、やってみるだけの価値はありそう。

 俺だって平穏に解決して欲しい。


 授業を全て終えて、部活に行く円香を見送る。

 スマホのメモ通りに足りない調味料や日用品を買い足して帰宅。

 家事に勤しむ。

 夕食を終え、少し温くなった風呂に入り、部屋に戻ると円香が人のベッドの上でうつ伏せになりながらスマホを弄っている。


「なぁ、円香」


 頭をタオルで拭いながらベッドの縁に腰掛ける。

 古くなったシングルベッドが少し軋む音がする。


「んー。なにー?」


 視線はスマホに映された漫画に釘付けのままの返事。

 声もぼんやりとしているあたり意識も持っていかれている。

 ってか、それ俺のスマホ。

 まぁいいけど。


「付き合ってほしいんだけど」

「いいよー。どこ行けば良い?」

「やっぱいいや」

「んー……。どうしたの?」


 スマホを枕の上に起き仰向けになり、視線がこちらに向く。

 形の良い柔らかい胸があとから追従していた。


「こう言ったらどういう反応すんのかな? って、わりぃ。円香こういう悪戯嫌いだよな」

「別にいいよー。私も昔似たようなことしたし、その時の解答が今の私が言った言葉と一字一句一緒だったけれど」

「そんなことあったっけ?」

「そんなもんだよ。お互いにきっと忘れる程度の悪戯だし。いーちゃんが理由もなくそんな悪戯する訳ないし、何を考えてそう言ったのかなーってそっちの方が気になるよ」

「やりづらいな幼馴染って」

「えへへ~」


 褒めてねぇ……。

 なんで嬉しそうなんだよ。


「で?」

「あぁ、今日のことだよ」

「なるほど」


 言葉は足りずとも伝わる。


「今日はあからさまだったもんね」

「石井と少し話したんだけどさ、俺と円香が付き合えばそういう面倒くさいの減るんじゃないかって話しなんだけど」


 俺と円香が釣り合うのかという問題があるが、彼女に対する嫌がらせがなくなったら別れたと言えばいい。

 提案しておきながらやはり気が進まない。


「なるほどねぇー……。でも、私が偽造カップル提案した時は断ったじゃん」

「あの時と今は違うだろ」

「一緒だよ一緒。でも、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「そうか」

「これでも私は昔からモテますからっ」


 自身の胸を叩き誇らしげに言う。


「そんな訳で慣れてますよー。うん、だから私は大丈夫だよ」


 じっくりと円香の顔を見つめる。

 嘘を言っているかどうか、それが俺にはわかる。


「わかった」


 曇のない力強い瞳をみて頷く。

 嘘は言っていない。

 本当に大丈夫なんだろう。

 気丈に振る舞っているかと思ったのだが、空元気ってわけでもない。

 彼女は強い。

 そう思わせてくれた。

 小さな頃のいつも後ろをついてきていた円香はもういない。

 そんな風に思った。

 寂しくもあった、巣立つ子を見る親の気持ちという奴だろうか。


 けれど、忘れていたことがある。

 いくら成長して強くなったとはいえ、円香がただの普通の女の子ってこと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰でも思いつくその解決方法。彼の方から口にしたというだけで、まあ色々意識と環境の変化が感じられると。 それにしても、環境の方はもっと悪くなっていきそうですねえ…
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