150:守護戦車と魚介尽くし
遅刻しましたorz
「異常ありませんね、問題なくエンジンも掛かります」
王都で見てもらったドワーフの整備士の報告を聞き安心する、どうやら意識の方がチハ本体から離れ豆チハに移っただけでチハ自体は操縦士が動かす分には問題ないとの事だ
オベルダンの一行の件は片付いてないがやっと家に帰ってこれた
今のチハ…豆チハはシェリティナとオットーの二人をを乗せたまま付いてくる意識を持ったベビーカー、意識を持った戦車から華麗なる転身…と言ってもいいのか?
赤ん坊の扱いを知っている様だが宝玉の中の記憶では赤ん坊と一緒にいる映像が有った事を思い出す、宝玉はもう一度チェックしておいた方が良いだろうな
さて家の玄関までたどり着いたが…
シュナとミュレッタが豆チハから子供を返してもらうと手すり…じゃなくてアンテナ部分が消えて更に身体を小さくする…このサイズなら玄関も通れるだろうが未知の生命体過ぎて言葉にならない
「チハ君お家に上る前にきれいきれい出来る?」
玄関に持ってきた使い古しのブランケットをシュナが見せると
「ちはぁあ」
と言って砲塔をこくこくしてる、置けってことかな?
首長玄関にブランケットを置くと器用にぐりぐりして無限軌道を拭いている
「おまえさ前みたいに人型には成れないの?」
俺が聞くとぶるぶる震えだした
「おい無理はしなくて良いんだぞ、出来ればってってだけだからさ」
なおも震える豆チハ、公分体を生み出したときのように淡く光りだす…光りだしたが…
「ちはぁ~~~これ!これ!」
これが限界ってことだろうか?無限軌道が消えて二本の生々しい脚が生えていた…一生懸命努力してくれたんだよな、でもごめんそれはキモい…口には絶対に出さないけど
「俺が悪かった元のままでいいぞ」
メカメカしい二本の脚だったら格好良いね!と言えたのかもしれない多脚砲台とか好きだし…
上半身?を拭かせて貰いながらちょっと触らせてもらったけど、履帯が肉球みたいにぷにぷにしてて柔らかい、重さも両手で持ち上げられる重さで小さな子供くらい?程よい重量とこの肉球履帯で背中踏んでもらったら凄い気持ちよさそう
そういや昔は親父に頼まれて良く背中踏んであげたっけ…背中や肩のこりに丁度良かったんだろうな
今なら親父のその気持が少し判る
「今日からシェリティナのボディーガードよろしくな」
金属っぽいのに柔らかい頭を撫でてやれば
「チッハ!」
機銃部分を斜めに傾けてる姿は敬礼っぽいし『イエッサ!』って言ってる?お前日本軍だろ何処でその言葉覚えた?
ちゃ~はぁ~!
シェリティナも真似してる、うちの娘可愛すぎじゃなかろうか!
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それ曲がるんだ…
伸びた上に曲がる、砲身の話だ
帰っては来たものの料理をする気力はなく全員で向かいの大将の店に、ミュレッタにとっては久方振りの大将のお店
カナさんも混じって赤ちゃん談義で盛り上がる三人に二ポの港町からの魚介が華を添えていたのだが
守護戦車の豆チハが砲身を象の鼻のようにして刺し身を食べていた…
口そこなんだ…
砲塔の下にある前部の覗き窓をパカリと開けて食べ物を放り込んでいる、そこは本来そういう風に開かないはずだとか味覚有るのか?なんて思いもしたがそもそも戦車が刺し身を食べているのだから一々気にしたら負けなんだろう
出産祝いに縁起物として異世界の鯛と伊勢海老…こっちでの名前は知らないがどう見ても鯛と伊勢海老
それと正式名称は忘れたが確か親父はシッタカと呼んでいた小さな巻き貝にそっくりな貝の酒蒸し、少々身を取り出すのにコツがいるがするするっと全部取り出せた時は気持ちが良い貝だ
鯛の刺し身は平造り、そぎ造り、松皮造りの三種盛りで同じ魚だと言うのに食感のレパートリーの広さに感嘆
伊勢海老は洗いと味噌汁
洗いは茹でた尾が薄っすらと紅く色づき氷水で引き締まった身とのコントラストは咲いた花びらの様に美しい
味噌汁には豪快に海老の頭が載っていて昆布と海老の出汁と味噌の香りが鼻を刺激する
山葵も天然物だしこれを日本で食べたのなら軽く諭吉が飛びそう、というか飛ぶだろうが出産という命がけの行いへのねぎらいはプライスレス、これでも安すぎる
「この子がオットー君か、サトルの友達になってくれると嬉しいな」
大将は初めて息子と同い年の男の子に親しみを覚えている様だった、俺にとっても娘と同い年の子だからなみんな元気に育って欲しい
「私としてもみんな仲良くしてくれると嬉しいです」
ミュレッタは改めて周りに向けてそう答えた
今までも知り合いでは有ったがほぼ同時期に子供を授かった事で団結のような目に見えない意識が芽生えつつ有るのを感じながら俺達は振る舞われる料理を楽しんだ
勿論最後は名物のモツ鍋に〆の具材は雑炊という定番コースでみな久しぶりの大将を満喫したのだった
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翌日、今日まではこっちにいられるが明日にはまたエピリズに行ってオベルダンの一行の視察に同席しないといけない
国王に会いに行ってチハと一連の出来事の説明をと思っていたのに
「じいじでちゅよ~」
自称祖父が既に家に来ている、赤ん坊がシェリティナだけでなくオットーの二人に増えたことでより祖父バカが進行してしまっていた
「それでなんですが」
オットーをあやすただのじいじと化した国王に向かって説明したのだが
「うむ、サンダン王国側は今回の邂逅自体はイレギュラーなものとして目を瞑ってくれているがこちらが正式にオベルダンとの国交を結ぶ事には反対している」
赤子をあやしながら器用にこちらの話をしっかりと聞いていた
「なんとかなりませんかね?オベルダンとの国交を樹立自体はどうでもいいんですが彼女たち商人をこちら側に取り込めれば必ず我が国の商業にとって有益になると進言します」
俺の目的はオベルダンとの国交樹立ではなく彼女たちのヘッドハンティング、むしろオベルダン王国とは切り離して彼女たちを取り込みたい
コンクルザディアの工場の人員に企業の営業は居ても根っからの商人は存在しない、商人という意味ではエピリズの村に移り住んだエピール族の者の方が長けていると言ってもいいくらいだ
彼女たちをお抱え商人、商会にして現状ごちゃまぜになっている国の事業を減らし国の構造をシンプル化したい、官民の分離と言ったほうがいいのかも知れないな
「確かに国交を結ばずに彼女たちだけを取り込めれば国としてもサンダン王国と揉めずに済む、しかしオベルダン王国にとっては国の絡まないビジネスでは旨味がない…黙っていないだろう」
参入されても実害がなければそれで良し、一方参入しても利益がないのなら怒る、極自然な考え方だ
それをなんとかしようというのだから策を講じなければならないのも当然の流れだろう
どんな策を講じればいいのか
明日から俺は彼女たちとの会話は全てがその為の交渉だと思って行動する
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