114:悲しきかな見る影もなし
2024/11/12 30000PV達成記念 三話同時投稿 この回が1話目になります
今後も愛読して頂けるようがんばりますのでよろしくお願いします
「おう!あんた」
毛玉がこっちにやって来た、年のために持ってきていたショートソードを私もツァーミも抜き子供達の盾に
「あーーー、賢狼族のおばさん!」
「誰がおばさんだ!私はまだ二十代だ!」
アーミンが毛玉に指差し声を上げれば毛玉もまた返事を返した
「本当だ毛玉になっちゃってるけど匂いがおばちゃん」
「加齢臭みたいに言うんじゃないよ!」
確かに聞き覚えのある声…だが丸々としていて私の知っている賢狼族とは似ても似つかない
「なんだっけウル…ウル…まあいいか」
カールは興味なさげに諦めた
「諦めんな!ウルーダだ!」
「肥えすぎでしょう…」
「判ってるよ…」
傷ついたのかいきなりトーンダウンしてしまうがいくらなんでも太り過ぎである
「一体どんな生活を送ってきたんですか」
「あの部屋が悪い!至れり尽くせり数歩歩けばトイレも風呂も有る、娯楽はゲームに映画、飯は黙っていても出てくる…そうだあの部屋が全部悪いんだ!」
自分の怠惰を環境のせいにしているが他の皆は普通に暮らしているのだ
「自堕落な生活を送っておいてそれは私達の国に対する侮辱ととっても構わんのだぞ」
「俺知ってるこういうのヒキニートっていうんだぜ」
そこ変な言葉で煽らない
「物知り!アーミン何処でそんな言葉覚えたの!」
「まっちゃんが教えてくれた」
余計なことを…
「そう言えば一年住居付き、ただ飯食い放題でしたね、今はどうされてるんですか?」
「家賃払えってきたからこうして仕事を探してんだろうが」
毛玉…もとい賢狼族のウルーダが指差す方向を見れば、先程追い出された建物、看板には多言語で就職ギルドと書かれている
「就職先を探すならここだって言われたから来たのになんだあの態度、こっちは客だぞ」
就職ギルドに来るのは希望者であって客ではないというのは私にも判る
「でもなんで追い出されたんですか?」
ツァーミも不思議に思ったみたいで聞いてみたが
「希望言っただけだよ、三食昼寝付き仕事は一時間まで」
「有るわけ無いでしょうが!」
「やっぱりヒキニートじゃんか」
「うるさい!身体が思ったように動かせねぇんだから仕方ねぇだろ…徐々に仕事量増やすつもりだったんだからよう」
ふてくされているし、さっきからの騒動でかなり目立ってしまっている、どうするべきか
「とりあえず事情を聞くわ、ギルドにもう一度行くわよ、ツァーミ子供たちをお願い」
「え~!ギルド俺達も行きたい」
「大人の話し合いなの付いてきちゃ駄目、ほらおやつにもう一軒買って食べていいから」
ツァーミが頷き子供たちと一緒にデザートの出店に向かわせる、こっちのデザートもカリッとあげられた程よいザイズの生地の中に餡が詰まっていて手軽に食べられるもので看板にはフライケーキと書かれていた
「さ、行くわよ」
ウルーダを立たせてギルドのドアを開ける
「またあんたか!そんな条件じゃ、ってメーベさんじゃないですかどうしたんですかこの女?の知り合いですか?」
見覚えのある顔だ、確か住民課のガルダンの部下だったかしら
「女のところ疑問形にすんな!どう見ても女だろうが」
結構難しいんじゃないかしら…声も太いし知り合いならまだしも初見では性別が判らなくても仕方がないレベルまで肥えきっている
「この女性に出来そうな仕事は?彼女の言う条件に関しては無視していいから」
「なんでだよ!働くのは私なんだぞ」
「それじゃいつまで経っても働けないからよ!」
「しかしですねその体ではそもそもちゃんと働けるかどうか…働けない者を送りつけたと有ればギルドの信用問題になります」
彼の言うことも最もだこのギルドは公営で出来立てなのだ信用は落とせない…となると
『ミュレッタ、今は仕事それとも』
『安定期に入っているので働いてます、どうしました?』
『今エピリズの村にいるんだけどノウミさんに一人みっちり絞って欲しい人物が居るの、お願いできないかしら』
『掛け合って見ますが、どれくらい絞っていいんですか?』
『それはもう雑巾から一滴も雫が落ちないまでとことんでお願い』
『解りました、それならダー…ノウミさんも喜んで引き受けてくれると思います』
『それじゃ、帰りに連れて行くからお願いするわ』
『お待ちしてます』
あの子二人っきりだとダーリンって呼んでるのね…
「お邪魔したわね、いい勤め先が見つかったから失礼するわ」
「は?念話か?お前誰と話してたんだよ」
「安心しなさい、衣食住すべて揃って三食食べれる素敵な職場よ」
「その笑顔怖いんですけど」
「大丈夫直ぐに慣れるわ、慣れなくても逃げられないから大丈夫よ」
「なんだよそれ、嫌だ!なあおっさん真面目に働くから仕事、御生だから仕事紹介してくれよぉぉぉぉ」
「良かったな、頑張るんだぞ」
その後軽トラに括り付けられた毛玉が駐屯地に向かって走っていく姿を住民たちが目撃したという噂が立っては直ぐに消えていった
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