112:選挙
本日投稿1話目 問題を解決しようとして更に問題になるというのは往々にしてよくあること
村のいざこざを解消するために行われた公布だったのだが
三人の代表者を巡ってトラブルが急増して負傷者まで出してしまった、これでは元も子もない
緊急会議が招集される
「まいったね、こりゃあ、原因はなんだったのかね?」
呼ばれたオルドアさんの顔からも疲れが見える
「どうやら、元貴族が自分こそが代表者にふさわしいと触れ回ったのが事の発端らしいです、怒った住民をその…サンダン王国での立場を持ち出して罵ったと聞いています」
これまでコンクルザディアにやって来た種族は元々が階級社会ではなかったが故、この手の階級社会について甘く考えていた
同じ村に住む者同士でも起きてしまったのだ、村とサンダン王国なら尚更その意識は大きくなってしまうだろうことはもう容易に想像できる
でも、こうなってしまった時の解決策を私は知らない
「これはもう選挙しかないですね」
「そうだろうな、しかし候補者が多くなりすぎたらどうする?日本の様に供託金を取るか?」
「将来的にはそれでいいと思いますが現状それだと元々の財力で元貴族が有利過ぎて不満が出るでしょう」
そうなのだ村に移り住むに当たって元々の財力に応じてコンクルザディアの紙幣貨幣に換金してあるために経済力ではどうやっても元貴族に軍配が上がってしまう
絶対に不満が出てしまうだろう
「変則的ですがトーナメント制の選挙はどうです?」
「トーナメント?勝ち抜き制にするのかね」
「選挙が根付くまでの特例的措置だと思ってもらえれば、全ての…年齢制限は設けるでしょうが男も女も関係なく参加できる事の喧伝に利用するんですよ、誰かが勝手に決めるんじゃなく自分にもその権利が有ると感じてもらうんです」
「なるほど、それならそれで構わないが不正に対する対応はどうするのかね」
「幸い戸籍制度を採用していますから候補者も投票者も身元は確認できますし、紙を利用すれば簡単には投票券も偽造できないでしょう」
戸籍に関しては紙とタブレット両方に入っているから確認は問題無さそうね、これも技術…彼らのテクノロジーが有って初めて出来ること
普通だったらこの世界でこんな風に選挙は出来なかっただろう
「この際ですから、意見者としての代表としてではなく住民の代表としての議員にしてしまった方が良くないですか?」
「そうしてもらえると私としても助かる」
代官のオルドアさんの発言だ
「やはり種族が違うからか意見がしばしば食い違うのだよ、代官の補佐は構わないが代表者は彼らの中から選ばれるのが好ましいのではないだろうか?」
「少し早急すぎるかもしれませんが、後回しにしてもいずれは起こる問題がでてくるかもしれません、ここは一度で膿を出し切るつもりでやってみるのはどうでしょうか?」
「確かに何もせずに手をこまねいていても起きるのなら、起きてもらって問題解決に専念するほうが良いかもしれないな…人口もまだそこまで多くなっていない今の内にやってしまおうか」
国王様も腹が決まったようだ
此処から先は国王様は退席、色々と詰めた後で再度国王様からの可否を問うものとなった
「まずは罰則行為とそれについての刑の重さから入ろうか」
「いきなり罰則からですか?」
「うん、選挙自体はやり方としてはそこまで難しいものじゃないんだ、それよりもズルしようとする人をどうやって出さないようにするか、選挙のあとに報復が起きないようにするかの方が難しいと思う」
そういうものなのか
「オルドアさんは代官として選挙の管理人になってもらいます、実質それと引き継ぎで代官としてのお仕事は終わりという流れで行きましょう」
「大変では有るが、やっとこの仕事から離れられると思えば頑張れそうだ」
そう言って苦笑いのオルドアさん、上に立つっていうのも偉いようでいて実際には細々としたいざこざに巻き込まれたりと大変なのだ同じ種族ならまだしも他種族なら尚更…
ここで決まったのは金品に拠る買収や賄賂・恫喝恐喝・暴力・報復行為については問答無用の奴隷落ち、選挙活動妨害については一定期間の独房行きもちろん前科が付く、また選挙管理関係者及び取り締まる自警団に対する同様の行為には最悪極刑まで有り、管理者側も賄賂などを享受した場合も犯罪者として裁かれるとなった
随分と彼らにしては重い刑のように感じるのだけど向こうの選挙管理委員会がぬるすぎたからという答えがクレイさんから帰ってきた、何事も穏便に済まそうとするのが彼らだと思っていたけど意外な一面も見れた気がする
斯くして公布は変更となり村の代表者、内一人は代官に任じられる事となり合計四人の代表者選びの選挙がエピリズの村で行われることになったのだった
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