第47話 道程
「はぁ・・・やっと目印の岩に着いたね・・・」
俺達は半日掛けて目印の岩に辿り着き、少し休憩を入れた。
「相変わらず体力無いわね・・・これから山を登るけど大丈夫なの?」
「流石に山道を支えながら登るのは無理ですよ?」
ラフィとララは、俺を見ながらため息をつく。
「都会育ちの体力の無さをナメたらいけないよ君達!まぁ、迷惑にならない程度には頑張るよ・・・」
俺はそんな彼女達に苦笑しながら言った。
「自慢気に言わないでよ・・・さて、そろそろ行きましょう?今日の内に祠の入り口までは行きたいわ!」
「そうですね!祠の近くなら野宿出来そうな場所もあるかも知れませんしね!」
彼女達は立ち上がり、山に向かって歩き出す。
「ちょっと待って!立ち上がれない・・・起こして・・・」
「早速迷惑掛けてんじゃないのよ!?」
ラフィはそう言いながらも、俺の手を引いて立たせてくれた。
「すまないねぇ・・・。ラフィってさ、口では色々言うけど、なんだかんだ助けてくれるよね・・・ありがとう」
「べ、別に良いわよお礼なんて・・・」
ラフィは赤面して顔を背けた。
ララはそれを見てニヤニヤと笑っている。
「ほら、さっさと行くわよ!遅れたら置いて行くからね!?」
「了解!ララさん、行こうか!」
「はい!楽しんで行きましょう!」
俺とララは、照れながら足早に歩いて行くラフィの後を追って山に入った。
「あのさ・・・これ、道じゃ無くね?」
俺は山に入ってしばらくして、俺の前を歩くラフィに言った。
「そうね・・・ララさんには悪いわね・・・」
「まぁ、長い事使われてなかったみたいですし、仕方ないですよ・・・」
先頭を歩くララは、藪を払いながらため息まじりに答える。
「いくら何でも酷すぎるよね・・・どんだけ放置してんだよ・・・」
「愚痴言ってないで行くわよ!私達の前に道が無いから何だって言うのよ!私達が通った後に道が出来るのよ!!」
「おぉ・・・ラフィさんカッコイイ!惚れちゃいそうです!!」
「高村光太郎の道程だね!良い詩だよね!!」
「タカムラコウタロウって誰よ?」
ラフィが俺を振り向いて聞いて来た。
「あ、ゴメン・・・高村光太郎は、向こうの世界に居た詩人だよ・・・。自分の道は自分で切り開かなきゃいけない、その道のりが人生という一本の道になるって詩だよ!俺の居た国の教科書にも載ってた有名な詩だけど、まさかこっちで聞くなんて思わなかったよ・・・」
俺はラフィに謝り、高村光太郎の詩について説明した。
ラフィとララは感心したように頷いている。
「どこの世界にもすごい考えを持った人がいるのね・・・。私は、別に深い意味で言った訳じゃないけど、そんな人と同じ言葉が出て来た事は嬉しいわね!」
ラフィは嬉しそうに笑っている。
「深い言葉ですね・・・我が道を行くって感じがカッコイイです!私もそうありたいです!」
「いや、ララさんは既に我が道を行ってますよね?国を飛び出してまで婿探しとか自由すぎますよ・・・」
「そうね・・・」
ララの言葉に、俺とラフィは呆れてしまった。
「えーっ!何ですかその反応!?」
ララは少しムッとしている。
「あはは!ララさんゴメン!気を取り直して先に進みましょう!」
「何か釈然としません・・・まぁ良いです!早く野宿出来そうな場所を探しましょう!」
俺が謝ると、ララは気持ちを切り替えて先に進んだ。
「地図にある場所ってここでしょうか?周辺の植物などの特徴は合ってますけど、自身が無いです・・・」
「取り敢えず入り口を探しましょう?」
「了解!まぁ、日が暮れるまでまだあるし、見落としの無いように探そうか・・・」
俺達はしばらく歩き続け、地図に記してある場所らしき所まで辿り着いた。
ダリウスが言うには、入り口は隠れていて分かりにくいらしい。
俺達は手分けして入り口を探し始めた。
「ラフィ、ララさん、そっちはどう?」
「こっちには無いわ!」
「私の方も見当たりません!」
入り口を探し始めてから30分程経つが、いまだに見つからない。
木々の合間から見える空は茜色に染まり始めている。
「おかしいな・・・ここじゃ無いのかな?おっと・・・って、うわっ!!?」
俺は中腰の姿勢がキツくなり、腰を伸ばして身体を逸らすと、バランスを崩して盛大にコケた。
「アキラ、どうしたの!?」
「痛え・・・頭打った・・・」
俺はコケた勢いで藪を転がり落ち、身体に着いた葉っぱなどを払いながら起き上がった。
「あ・・・見つけた・・・。ラフィ!ララさん!ここにあったよ!!」
「アキラ大丈夫なの?入り口が見つかってよかったわ!」
「いきなり叫んだから驚きましたよ・・・。おぉ、本当だ・・・アキラさん、お手柄ですね!」
彼女達は俺を心配して駆け寄り、入り口を見て笑顔になった。
「入り口も見つけたし、今日はこの辺で野宿しようか?」
「そうね!祠の探索は明日にしましょ!」
俺達は、来た道を少しだけ戻り、ひらけた場所で野宿の準備を始めた。




