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第45話 兄弟姉妹

  「そう言えば、アキラさんに聞きたかったんですけど・・・」


  運ばれて来た料理をあらかた食べ終わり、ちびちびと酒を飲んでいたララが俺に問い掛けのきた。


  「何?恥ずかしい質問以外なら答えるよ?」


  「別にそんなんじゃ無いですよ!ただ、アキラさんは喧嘩は好きじゃ無いって言ってる割に慣れてるなと思って・・・」


  彼女は慌てて首を振り、遠慮がちに聞いてきた。


  「あぁ、俺にも兄貴が居るんだけどさ・・・それがまた身長が俺より高くて筋肉質で、色々と武術を習ってたんだよ・・・。俺はその実験台にされてたんだよね・・・だから、兄貴にいいようにされない様に、俺も勉強したんだよ!クソ兄貴のせいで頑丈になったのは良いけど、地獄の日々だったよ!!」


  俺は自分で言いながら腹が立った。


  「あぁ、解りますよその気持ち!私も兄との稽古で何度も死に掛けましたから!!どうして兄って存在はああも乱暴なんですかね!?」


  彼女は自分の兄を思い出し、怒りながら酒を一気飲みしている。


  「私はひとりっ子だから、兄弟が居るのは羨ましいわ・・・」


  俺とララが兄について愚痴を言っていると、ラフィが少し寂しそうに呟いた。


  「あ・・・なんかごめん・・・」


  俺は自分の考え無しの発言を恥じた。

  ラフィの母親は、彼女が産まれてすぐに亡くなったと聞いている。

  いくら彼女が望んでも、彼女と同じ血を引く弟妹を得る事は出来ないのだ。


  「別に謝らなくても良いわよ!母様が亡くなったのは病気で仕方のない事だったし、父様も母様には感謝してたわ・・・最後に私をのこしてくれたからって・・・。だから、気にしてないわ!私にとって、村の子供達が妹や弟みたいな存在だしね!まぁ、年齢的には、私にもあの位の子供が居てもおかしくないんだけどね・・・。もし私が子供を産むなら、2人以上は欲しいわね!私は気にしてないけど、子供達には兄弟姉妹と仲良く暮らして欲しいもの!」


  ラフィはそう言うと、俺とララに笑った。

  俺は、以前彼女が子供はいくらでも欲しいと言っていた意味を理解した。


  「アキラとララさんの兄弟はお兄さんだけなの?良かったら聞かせてくれない?」


  彼女は笑顔で机に身を乗り出して聞いてきた。


  「俺は兄貴だけだよ・・・出来ることなら弟か妹が欲しかった!下の兄弟がいる友達は、兄か姉が欲しかったって言ってたけどね・・・」


  俺は遠い目をして答えた。


  「私は1人妹が居ますよ!これがまた可愛いんですよ!私が国を出る時はまだ8歳だったんですけど、泣きながら私にしがみついて、行かないで!って言ってましたよ・・・。あの子ももう15歳かぁ・・・もし結婚してたらどうしよう!?姉より先に結婚する妹なんて許しませんよ!?」


  ララは笑顔で妹について語っていたが、徐々に表情が暗くなり、今は頭を抱えて叫んでいる。

  周りの客が何事かとこちらを見ている。


  「落ち着きなよララさん!貴女は美人なんだから、きっと良い人が見つかりますよ!」


  「そうよ!いざとなったらアキラが居るじゃない!?大丈夫!既成事実さえ作れば彼も逃げられないわ!!目指すは重婚よ!アキラが何と言っても丸め込めば良いわ!!」


  俺とラフィは彼女を慌てて宥める。

  俺は問題発言をしたラフィを睨むが、すぐにララに向き直る。

  今はララを落ち着かせるのが先だ。


  「本当に見つかりますかね・・・?たぶん、旅の途中でミクラスにも行きますよね?もし兄に会ったら何て言われるか・・・絶対鼻で笑われます!想像したら腹が立って来ました!!マスター、お酒を樽で持って来て下さい!!今日は飲まないとやってられません!!」


  「ちょっと待って!マスター、今のは無しで!!ララさん、落ち着いて!そんなんじゃ更に婚期を逃しますよ!?」


  俺がそう言うと、彼女はピタッと止まった。

  彼女の目に涙が浮かんでくる。


  「うぅ・・・酷いですよアキラさん・・・私だって行き遅れてる事を気にしてるんですよ!?」


  彼女は大粒の涙を流して机に突っ伏す。


  「なんか面倒臭くなってきたわ・・・」


  「俺もだよ・・・」


  俺とラフィはため息をつき、半ば諦めてジョッキに残っていた酒を飲み干した。






  「ほらよ・・・これは俺の奢りだ」


  俺とラフィが泣いているララを見ながら困っていると、先程の店員が酒を持ってきた。


  「えっ?いや、良いですよ!こちらこそ騒がしくて申し訳ないです・・・」


  「気にしなくて良い。さっきはうちの客が悪かったな?あいつは普段は気の良い奴なんだが、酒を飲むと他の客に絡む癖があってな・・・」

  

  店員は困った様にため息をついた。


  「あんた等は他所者だろ?ここは寂れた村だが、俺はこの村が好きなんだ。この村に悪い印象を持たれたままは嫌なんでね・・・だから、これは俺の奢りだ。そっちの猫人族の姉ちゃんも、飲めば少しは落ち着くだろう?」


  「ありがとうございます。では、いただきます・・・」


  俺が礼を言うと、彼は軽く手を振って去っていった。


  (ヤベェ・・・あの人なんかカッコイイ!!)


  ラフィも同じ事を思ったのか、彼の後ろ姿を見直した様に眺めていた。


  「うぅ・・・お酒が来ましたね・・・」


  「さっきの店員さんの奢りだよ・・・ララさんも飲めば少しは落ち着くだろうってさ」


  酒の匂いに気付いたララが顔を上げる。

  彼女はまだ涙ぐんでいる。


  「そうですか・・・後でお礼を言わないといけませんね・・・。取り敢えず、これを飲んだら帰りましょう」


  ララは奢ってもらった酒を、ゆっくりと味わいながら飲む。

  俺とラフィもララに合わせてゆっくと飲み、店員にお礼を言って店を出た。






  「さっきはすみませんでした・・・」


  ララは店を出るなり、申し訳無さそうに謝った。


  「まぁ良いんじゃない?泣きたい時もあるわよ!」


  「まぁ、落ち着いてくれて良かったよ!これからは、ララさんの相手探しもしないとね!?」


  俺がそう言うと、ラフィが真顔で見てくる。


  「貴方で良いんじゃない?」


  「あのさ・・・さっきも何か問題発言してたけど、それはダメです!!」


  「良いじゃない!?何が不満なのよ!!」


  「不満はありません!でもダメです!!」


  俺とラフィが言い合っていると、ララがそれを見て笑っていた。


  「あはは!やっぱりアキラさん達は面白いですね!喧嘩ばかりしてるのに、いつも一緒で羨ましいです!!」


  ララはそう言うと、俺とラフィの間に入って腕を取り歩き出した。


  「今日も一緒に寝ましょう!?寝るまで沢山お話ししたいです!!」


  「それは良いわね!今夜も楽しくなりそうね!?」


  俺は彼女の言葉に困惑したが、楽しそうな彼女達を見て、苦笑して頷いた。

  


  


  

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