第43話 夜の心配
「さてと、やっと着いたわね!早く宿を探しましょう!」
俺達は、ネタが尽きるまで会話をして、なんとか夕方には目的の村に到着した。
ラフィとララは伸びをして馬車を降りたが、俺は座ったまま動けないでいる。
「ぬぉぉぉ!腰が痛くて立ち上がれない!?ラフィ・・・助けて・・・」
「貴方の腰はどういう作りになってるのよ・・・ほら!行くわよ!」
俺が涙目で懇願すると、ラフィは溜息をついて俺の手を引っ張った。
ララはそれを見て爆笑している。
「ぷっ!貴方、産まれたての子鹿みたいになってるわよ?」
「アキラさん、可愛いです!」
「五月蝿ぇ!笑ってんじゃねーよ!?俺だってなぁ、好きでこうなってんじゃねーんだよ!!」
プルプルとしている俺を見て爆笑している彼女達に、涙を流して叫んだ。
それを見ていた村の人達は哀れんだ目をしている。
「ほら、肩に掴まりなさいよ・・・宿まで連れて行ってあげるから泣かないでよ・・・」
「私も肩を貸しますから、イジケないで下さい・・・」
彼女達は両側から俺の身体を支えて歩き出した。
事情を知らない人が見れば、美人2人を侍らせてる様に見えるだろう。
「ごめんよ・・・俺の腰が不甲斐ないばかりに・・・」
「別に良いわよ・・・でも、そんな事で夜の方は大丈夫なの?私はそっちの方が心配だわ・・・」
俺はラフィの言葉の意味が理解出来なかった。
ララも同じく理解していないようだ。
「ごめんラフィ、何の事?」
「決まってるじゃない、子作りよ!」
「ぶっ!!?いきなり何言ってんの!?」
俺は彼女の言葉に盛大に噴いた。
人前でなんて事を言い出すんだと思った。
「あぁ、それは心配ですね・・・大丈夫なんですかアキラさん・・・。朝は元気みたいですけど、腰がこうだと心配ですよ?」
ララはラフィの言葉の意味を理解し、俺の心配をし始める。
「ごめん・・・恥ずかしいからもうやめてあげて!俺の心が折れるから!!トラウマになって勃たなくなったらどうすんの!?」
「それは困るわ!」
ラフィは慌てている。
本気で夜の心配をしているようだ。
「アキラさんは、メンタルが強いのか弱いのかわかりませんね・・・」
ララは呆れたように呟いた。
通りを歩く村人達の視線が痛い。
「取り敢えず宿に行こうよ・・・他の人達の視線が痛くて心が折れそうだよ・・・」
「わかったわ・・・なんかごめんね・・・」
俺が涙目で言うと、ラフィは反省したように項垂れて返事をした。
「ここが宿ね・・・今からで部屋が空いてるかしら?」
「聞いてみないとわかりませんね・・・。すみませーん!まだ部屋は空いてますか!?」
俺達は宿を見つけて中に入ると、ララが大声で店員を呼んだ。
肩を借りていた俺は、鼓膜が破れるかと思った。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
少し待っていると、小太りのハゲたおっさんが現れた。
恐らくこの男が店主だろう。
「3人なんですけど、部屋は空いてますか?」
「すみません、あいにく今はシングルが2部屋のみでございます・・・」
俺は彼女達の肩から離れて店主に聞くと、彼は申し訳無さそうに答える。
「どうしよう・・・ラフィとララさんが一緒の部屋にする?でも、それだと片方の部屋に俺が行く事になるか・・・」
俺は悩みながら彼女達に聞いた。
「この際3人で1部屋でも良いわよ?また3人で寝れば良いしね!」
「私も構いません!アキラさんは抱き心地が良かったので、昨夜はよく眠れましたから!」
「そうよね!アキラは抱き心地良いのよ!ぐっすり眠れるから、最高の抱き枕よ!!」
「勝手に抱き枕にしてんじゃねーよ!?俺がゆっくり眠れねーよ!!」
俺が叫ぶと、店主が困ったような顔をしていた。
「あの・・・どうされますか?あまり騒がれては、他のお客様の迷惑になりますので・・・」
「あっ、すみません!その部屋ってソファかなんか有りますか?」
俺は慌てて謝り、店主にソファの有無を聞いた。
「ソファは有りませんが、木製の長椅子は御座います」
「そうですか!なら、3人分払いますので、1部屋お願い出来ますか?それと、布団を1組長椅子に敷いて貰えると助かります!」
俺が提案すると、店主は少し考えてから頷いた。
「かしこまりました・・・では、ご用意いたします。狭い部屋になりますので、少しだけお値引きさせていただきます!では、準備をして参りますので、しばらくこちらでお待ち下さい」
彼は笑顔で言い、部屋の準備をしに行った。
「何よ、また椅子で寝るの?」
「仕方ないじゃん・・・シングルだとベッドも狭いし、3人は無理だろ?女の子に椅子で寝させる訳にもいかないしさ・・・」
「あぁ、これはまた落ちますね・・・」
「えぇ、落ちるわね!」
彼女達は口を揃えで言ってきた。
「え、落ちるの前提!?」
「当然じゃない!落ちても起きない方に賭けても良いわよ!」
「ラフィさん、それじゃ賭けが成立しませんよ?」
彼女達の中では、俺が椅子から落ちる事は既に決定事項らしい。
「お待たせしました!お部屋へ案内いたします!」
俺がジト目で彼女達を睨んでいると、店主が部屋の準備を終えて戻ってきた。
「ありがとうございます・・・。ところで、この近くに夕飯を食べられるお店ってありますか?」
「宿を出て左に進んだ先の角に御座いますよ。ただ、ガラの悪い輩も居りますので、行かれるなら気をつけて下さい・・・」
彼は不安そうな表情で答える。
心配をしてくれてるのだろう。
「ありがとうございます!まぁ、お腹も空いてますし、気をつけて行ってきますよ!」
俺が礼を言うと、彼は苦笑して頷き部屋に案内してくれた。




