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第42話 晴耕雨読の生活

  「さて、そろそろ行きましょう!」


  「そうですね!旅の理由を考えると不謹慎ですけど、楽しみです!」


  ラフィとララは笑顔で部屋から出る。

  今日は、最初の祠の近くの村まで行く事になっている。

  ラフィの村とは逆方向、距離も結構離れている。

  今は、世間ではまだ朝食を食べる時間だ。

  だが、今から出なければ夜になってしまう。


  「馬車の手配はしてあるけど、今日も一日中座りっぱなしになりそうだ・・・」


  「歩きより良いじゃない。歩いたら3日は掛かるわよ?」


  俺がボヤくと、ラフィが呆れた様に言って来た。


  「そうなんだけどね・・・あの腰の痛さを思い出すと、辛いものがあるんだよ・・・」


  「アキラさんの居た世界ではどんな乗り物があったんですか?」


  ララは俺とラフィのやり取りを見て、笑いながら後ろを歩いていたが、ふと足を止めて聞いて来た。


  「そう言えばララさんには見せてなかったね?」


  俺は上着のポケットからスマホを取り出して彼女に見せた。


  「なんですかそれ?」


  「これはスマホっていう道具なんだけど、本来の使い道は、離れた場所に居る人と会話するための道具なんだ。でも、この世界では使えないんだよね・・・。まぁ、機能はそれだけじゃないんだけど・・・」


  「おぉ!そんな便利な道具があるんですね!?」


          パシャ!


  俺は、マジマジとスマホを見ているララにスマホのカメラを向けて写真を撮った。


  「きゃっ!何なんですか今光ったの!?」


  彼女はフラッシュに驚き、目を丸くしている。

  彼女の猫耳と尻尾はピーンと真っ直ぐに伸びている。


  「はい、ララさんだよ!」


  「わぁっ!本当だ!?何でこんな事出来るんですか!?」


  ララは目を輝かせてはしゃいでいる。

  俺とラフィはそんな彼女が可愛くて微笑んでしまう。


  「これはカメラって言って、その時々の光景を一枚の写真・・・絵として記憶出来るんだよ。他には動画も撮れるよ!」


  俺は街を歩く人々を撮ってララに見せる。

  すると彼女はさらにテンションが上がり、道行く人々がそれを見て不思議そうにしている。


  「で、この写真に写ってるのが向こうの乗り物だよ」


  俺はスマホの写真フォルダから、車やバイク、電車、飛行機の画像を見せ、ララに説明をした。

  彼女は拳を握りしめ、楽しそうに頷いて話を聞いている。


  「そろそろ行かないと遅れるわよ?話は馬車に乗ってからにしましょう」


  話が盛り上がってしまい、馬車の事を忘れていた俺とララは、呆れて笑っているラフィに謝って急いで馬車に乗り込んだ。







  「アキラさん、さっきのスマホでしたっけ?あれって何で動いてるんですか?まさか、何かを食べるって事は無いですよね?」


  「そう言えば、それは私も聞いてなかったわね・・・どうなってるの?」


  彼女達は、馬車に乗るなり2人揃って聞いて来た。


  「これは、バッテリーって言う電気を蓄めておく物を使って動いてるんだよ。本来なら、この世界ではバッテリーが切れたら使えないんだけど、俺はソーラー式と手巻き式の充電器を持ってるから使えるんだよ」


  俺は持って来ていた荷物から、2つの充電器を取り出して彼女達に見せる。

  実際に使って見せたが、全く知らない彼女達は、スマホを見た時程驚きはしなかった。

  見ていても、ただ太陽の光に当ててるだけか、ハンドルを回しているだけなので、目に見えて違いがわからないのだから仕方のない反応だ。


  「電気ってあれよね・・・雷とかのビリビリするやつよね?」


  「そうだよ。まぁ、雷程強くはないけどね!あれは人が死んじゃうからね・・・」


  俺が苦笑して言うと、ラフィとララもその光景を想像して肩を落とした。


  「電気を使うって言ってましたけど、その道具でどうやって電気を作ったんです?魔法か何かで雷を出した訳じゃないみたいですけど・・・」


  ララが顎に人差し指を当て、首を傾げて聞いて来た。

  美人がやると様になる仕草だ。


  「これは、この板に光を当てる事で、電気を作れるんだよ。太陽の光を電気に変換する道具なんだ。それとこっちはハンドルを回す力を電気に変換させる道具だね」


  「そんな事で電気が作れるなんて・・・」


  「もしそんな技術がこの世界に入って来たら、生活が一気に変わりますね・・・。まぁ、そもそも電気を使う道具が無いですけどね!」


  ララの最後の一言を聞いてラフィが苦笑して頷く。


  「向こうの世界の燃料は、化石燃料・天然ガス・石炭を燃やすか、原子力・太陽光・水力・火力・風力によって電気を作るのが主だったよ。それらによって、乗り物や家庭にある道具を動かしてたんだ・・・まぁ、それのせいで自然が破壊される事もあったけどね・・・。便利ではあったけど、無くなると経済や生活に影響を及ぼすほど依存してたよ・・・」

  

  「便利なのも考えものね・・・。アキラはこっちの生活はどうなの?やっぱり不便かしら?」


  肩を落として語った俺に、ラフィが問い掛ける。


  「いや、十分満足してるよ!なにせ、老後の夢は晴耕雨読の生活だったからね!」


  「セイコウウドクってなんですか?」


  ララが不思議そうに聞いてくる。


  「晴れた日には畑を耕し、雨の日には家に引きこもって読書をする。世間から離れて心穏やかに暮らすって意味の言葉だよ!」


  「あら、まさにこの世界の生活ね!貴方にはうってつけじゃない!?」


  彼女達は、俺の説明を聞いて笑っている。

  俺も力強く頷いて一緒に笑った。

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