第38話 頼もしい仲間
「ララさん遅いね・・・」
「そうね・・・料理も冷めてしまったわね・・・」
俺達は、ララが席を離れてから30分程待っているが、彼女はまだ戻ってこない。
彼女に頼んでくれた料理はすでに冷めてしまっている。
「せっかくだしいただこうか?」
「いつ戻るかわからないものね・・・仕方ないし食べときましょ。もし手を付けてなかったら彼女がきにしそうだしね・・・」
俺達はララを待ちつつゆっくりと料理を食べ始めた。
この店の料理はかなり美味しい。
冷めてしまっていても、ほとんど味が落ちていない。
話を楽しみ、酒を飲みながら食べる事を考えて、冷めても大丈夫なように工夫しているようだ。
「ふふっ・・・相変わらず美味しいわね!この料理ともしばらくお別れだと思うと、少し残念ね・・・」
「そうだね・・・この旅が終わって、余裕があればまた来たいな・・・」
「その時は、また父様やララさん達と一緒に来ましょ!きっと楽しいわ!」
彼女は優しく微笑んで言ってくれた。
俺も彼女に笑顔で頷き、料理を楽しんだ。
「すみません、今戻りました・・・」
俺達が話しながら料理を食べていると、ララが衝立をずらして戻って来た。
その後ろには、この店の店主のレスターの姿もある。
「アキラさん、ラフィさん、ようこそいらっしゃいました。また来て頂いて嬉しく思いますよ!」
レスターは深々とお辞儀をして、俺達を歓迎してくれた。
「俺も、このお店の美味しい料理を食べられて嬉しいです!」
「そう言っていただけると、一生懸命作った甲斐があると言うものです!それはそうと、旅に出られるとララ君から聞きました・・・。もしかすると、もう戻ってこられないかも知れないと聞きましたが・・・」
彼は寂しそうに聞いて来た。
「そうですね・・・長い旅になるかも知れませんし、何より・・・向こうに帰ったら、こちらには戻れないと思います・・・」
「その事で、先程ララ君から相談を受けまして・・・彼女もその旅に同行したいと言ってきたのです・・・」
俺は彼の言葉を聞いて驚き、彼の背後に居るララを見た。
ラフィも驚いて彼女を見つめている。
「ララ君が、いつになく真剣な表情で長期の休暇を願い出て来まして・・・私も驚いたのですが、彼女の話を聞いてみて納得しました・・・」
彼は少し困ったように微笑んでいる。
先日も同じ様な事があった。
だが、あの時は酔った勢いだった事もあり、彼も話半分で聞いていたようだが、今回は違う。
彼の背後に居るララは、真剣な表情で俺とラフィを見ている。
「アキラさん・・・良かったら彼女も連れて行ってあげてくれませんか?彼女は結構我が儘ですし、ノリで行動してしまう節がありますが、腕は立ちますから、必ず貴方方の力になるはずです・・・危険な旅になるかも知れないのであれば、尚更仲間は必要になると思います・・・」
「そんな・・・お店の方は大丈夫なんですか!?繁盛して来てるんですよね?なら、ララさんが居なくなったら困るんじゃ・・・」
俺は慌てて彼に問い掛けた。
彼等の申し出は本当にありがたい。
だが、店に迷惑を掛けてしまうのは申し訳ない。
「その事なら心配いりません。最近2人新しく雇いましたので、まだ慣れてはいませんが、人出は足りていますから・・・ただ、ララ君目当てのお客さんが残念がりそうではありますが・・・」
彼は苦笑しながら言っている。
だが、彼はすぐに優しく微笑み、俺達を見た。
「私にとって、貴方方はこの店の恩人です・・・そんな貴方方の力になれるなら、人出が足りなくなる事など些細な問題です。アキラさん・・・もし可能なら、是非またこの店にいらして下さい・・・。それこそが、私にとって一番喜ばしい事ですから・・・」
俺は言葉に詰まった。
彼等の気遣いに感動し、涙が出そうになった。
「アキラさん、ラフィさん・・・私は、せっかくお2人と仲良くなれたのに、お別れになるなんて嫌です!この前は約束を守れなかったですが・・・今回は必ずお2人の力になると誓います!だから、私も連れて行って下さい!」
ララは俺達に深々と頭を下げて頼んできた。
俺はラフィを見て彼女の反応を伺った。
彼女は笑顔で頷いた。
「ララさん、もしかしたら危険な旅になるかも知れない・・・それでも良いですか?」
「構いません!私もはこう見えても、兄と一緒に戦ってましたからね!王を決める戦いの時にも参加してましたから、腕っ節には自信ありますよ!少なくとも、槍を使えば猫人族の中でも兄以外には負け無しでしたから、そこらの賊に遅れをとる事は無いと思うので安心して下さい!」
彼女は力強く頷いた。
俺は彼女が槍を持って戦っている姿を想像したが、胸が揺れている姿しか思いつかなかった。
「アキラ・・・また顔に出てるわよ・・・」
ギュッ!!
ラフィはそう言うと、俺の脇腹を思い切りつねってきた。
「痛い痛い痛い!ラフィ、つねらないで!!ごめんなさい!肉が千切れる!!」
俺が叫ぶと、ララとレスターはそれを見て笑っている。
「2人共笑ってないで助けてよ!?マジで千切れる!!」
「ふん!自業自得よ!!・・・さて、話も終わったし料理を食べましょう!!頼もしい仲間も出来た事だし、今日はいっぱい食べていっぱい飲むわよ!!」
「そうですね!私もお腹ぺこぺこだったんですよ!今日は思い切り楽しみましょう!!」
ラフィの言葉に、ララが笑顔で答えた。
「では、私は料理を作って来ます。腕によりを掛けて作るので、楽しんでいって下さい!」
レスターは笑顔でお辞儀をして厨房へ戻って行った。
俺はラフィにつねられた脇腹をさすりながら、心の底から彼等に感謝した。
俺達は店が閉まる直前まで3人で会話をしながら料理と酒を楽しんだ。
閉店後には、急遽ララの送別会を行う事になり、ララ以外の給仕やレスターと一緒にさらに飲んだ。
結局終わって宿に戻ったのは明け方だった。
ララもかなり酔っていたが、今日は帰って旅の準備をすると言っていた。
「うっぷ・・・ヤバい、飲み過ぎた・・・」
「私もよ・・・どうする?今日はこのまま寝る?」
俺達はかなりグロッキーだ。
何杯飲んだか覚えていないが、浴びるように飲んだ。
全身が酒臭い・・・。
今は、2人してベッドに突っ伏している。
「お風呂は沸いてるのかな?沸いてるなら入ってから寝たいよ・・・」
「そうね・・・このままだと、起きた時にお酒の匂いでまた酔いそうだものね・・・」
彼女はヨロヨロと立ち上がり、風呂を確認しに行く。
「沸いてるわ・・・。アキラ・・・時間も勿体無いし、一緒に入りましょう・・・」
「え、マジで・・・?あまり気が進まないんだけど・・・」
「こんな状態で何かしようとは思わないわよ・・・今日は起きたらダリウスさんの所に挨拶に行くんでしょ?なら早く寝ないと、起きれなくなるわよ・・・?」
俺は彼女の言葉を聞いて少しだけ思案した。
今から1人ずつ風呂に入っていては完全に陽が昇ってしまう。
そこから寝ていては、ダリウスに会いに行く時間が無くなるだろう。
「了解・・・じゃあ、素早くお風呂に入って寝ようか・・・」
「えぇ・・・流石に私も眠いわ・・・」
俺達はのそのそと服を脱いで一緒に風呂場に入る。
「私は髪長いから時間掛かるし、貴方から先に頭を洗いなさいな・・・」
「ありがと・・・じゃあ、そうするよ」
俺は彼女にお礼を言って頭を洗い始めた。
彼女は桶でお湯をすくって頭からかぶっている。
「ふふふ・・・時間も無いし手伝ってあげるわ・・・」
俺が頭を洗っていると、背後で彼女の声が聞こえ、背中に暖かく柔らかい感触が伝わって来た。
控えめだが、柔らかい双丘が背中に当たっているのがわかる。
双丘の先端には少しだけ弾力のある2つの突起物を感じる。
「ラ、ラフィ!?約束が違うじゃん!」
「でも、こうした方が早く終わるでしょ?それに、貴方が村を出る前に言ってたじゃない?私の胸は魅力的だって・・・それを確認しなきゃいけないと思うのよ!」
「確かに言ったけど、それとこれとは話が・・・って、何してんの!?前は自分でやるよ!!待って!今は下はダメだって!!」
彼女の手が俺の下腹部に伸びて行くのを感じて焦った。
俺は頭を洗っているので、目を瞑ったままで見えないが、今のムスコはしっかりと起きている。
今触られるのは非常にまずい。
「ダメよ!それじゃ確認出来ないじゃない!?貴方が終わったら私の身体も同じ様に洗わせてあげるから見せなさいよ!!」
「ラフィ、酔い過ぎてテンションおかしくなってるよ!?これ以上はダメだよ!」
俺は身悶えて逃げようとするが、彼女は背後から抱き付いて離そうとしない。
彼女の胸が押し付けられ、ムスコはさらに元気になっていく・・・。
「あら・・・本当に私の胸でも大丈夫みたいね・・・。まぁ、前に嬉しそうに私の胸にかぶりついてたけど、改めて確認出来て良かったわ!」
彼女は満足そうに頷きながら言っている。
「うぅ・・・酷いよラフィ・・・」
俺は冗談抜きで涙が出た。
流石に元気になったムスコを鷲掴みにされたらショックだ・・・。
「もう、良い大人が泣かないでよ・・・本当なら喜ぶべきじゃないの?流石に私も傷付くわよ?」
「確かに嬉しいけど・・・身動き取れない状態で、辞めてって言ってるのに一方的にあんな事されたら傷付くよ・・・」
俺は頭を洗い終え、項垂れて彼女に抗議した。
「なんかごめんね・・・飲み過ぎて判断力が鈍ってたわ・・・」
彼女は冷静になったのか、申し訳無さそうに謝った。
「もう良いよ・・・ラフィもそのままだと風邪ひいちゃうし、早く頭を洗いなよ・・・」
俺は項垂れたまま彼女に場所を譲る。
「アキラ・・・本当にごめんね・・・」
「大丈夫だよ・・・おかげで酔いが覚めたよ!」
俯いて謝る彼女に笑顔で答えると、彼女は安堵して微笑んだ。
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ありがとうアキラ・・・」
彼女は抱き付いてキスをして来た。
俺は正直どうしようか迷ったが、取り敢えず彼女の細く綺麗な背中を優しく撫でた。




