表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/73

第33話 夢の中

  「さて、そろそろ寝ようかな・・・」


  俺はラフィとクルーゼと一緒に夕飯を食べ、部屋に戻ってきた。

  昨日に引き続き、今日も子供達と遊んでいたせいでかなり疲れている。

  爆睡出来そうな気はするが、正直不安もある。


  「またあいつが話し掛けてきそうなんだよな・・・大丈夫かな・・・」


  昨夜クルーゼと話をした後、寝ている時に、この世界を変えようとしている奴・・・そして、俺を転移させた張本人と思われる何者かの声が聞こえたのだ。

  正直、あの声を聞いた時は生きた心地がしなかった。

  明らかに人ならざる存在だと思った。


  

      コン  コン  コン



  俺が不安になり頭を抱えていると、部屋の扉をノックされた。


  「ん?ラフィかい?」


  「・・・よくわかったわね」


  俺が扉の向こうの人物に問いかけると、予想通りにラフィが入ってきた。


  「たまたまだよ・・・君は来てくれそうな気がしてたんだ・・・」


  「読まれてたのね・・・まぁ良いわ!貴方が1人は心細いと思って来てあげたわよ!感謝しなさい!?」


  「抱き枕が欲しかっただけじゃないの?」


  胸を張っていた彼女は、俺の言葉を聞いて不機嫌になった。


  「じゃあ別に良いわよ!1人であいつに怯えながら泣くといいわ!!」


  「ごめんごめん、来てくれて嬉しいよ!実はかなり不安だったんだ・・・だから、一緒に寝てくれるかな?」


  俺が謝ると、部屋から出ようとしていた彼女は立ち止まり、勝ち誇った目で俺を見てきた。


  「最初から素直になりなさいよね!?仕方がないから一緒に寝てあげるわ!!」


  偉そうに言いつつも、彼女の表情は嬉しそうだった。


  「では、よろしくお願いします・・・」


  「何畏ってんのよ・・・」


  「いや、実際かなり不安なんだよね・・・またあんな風になったら、君にも申し訳ないしさ・・・」


  「その時は支えてあげるわよ・・・あの時みたいに取り乱したりはしないわ・・・。絶対にね・・・!」


  彼女は決意の表情で言った。


  「ありがとう・・・。おやすみラフィ・・・」


  俺は心底頼もしく感じ、彼女の温もりを感じて安堵したからかすぐに眠ってしまった。






  『あんな思いをしたのに寝るなんて・・・君、なかなかメンタル強いね・・・。君に対する評価を改めないといけないかな・・・?』


  俺が寝ていると、また奴の声が聞こえた。

  だが、今のところ昨日の様な恐怖心と頭痛は襲ってこない。


  『誰だよお前・・・』


  俺は頭の中で声の主に話し掛ける。


  『へぇ・・・話し掛けてくるんだ・・・。恐怖で震えるかと思ってたんだけどなぁ・・・』


  奴は馬鹿にした様に言っている。

  相変わらず性別のわからない不安定な声だ。


  『昨日はいきなりだったからな・・・来るかもって思ってたら我慢出来るよ』


  『ははは!良いね君!面白いよ!!今迄呼んだ人間の中でも一番面白いよ君!?』


  可笑しそうに笑っている。


  『あっそ・・・せっかくの睡眠時間を削ってやってるんだから、用があるならさっさとしてくれない?昨日も寝不足だから、とにかく寝たいんだけど?』


  『あぁ、ごめん・・・。じゃあ本題だけど・・・君、俺を止めるとか言ってたよね?』


  『それがどうした?』


  『無駄な努力はしない方が良いんじゃないかな?君には何の力も無いよ・・・。君の前の転移者達は、俺の恩恵を受け、ある程度の力を持ってこの世界にやって来たけど、君には何の力も無いんだ・・・何故か君には拒否されたんだよね・・・。生意気だよね君・・・』


  奴は感情の篭っていない声で言った。

  俺は恐怖心に襲われるが、なんとか耐えた。


  『あっそ・・・お前みたいなイカれた奴の力なんか貰わなくて清々するわ!人を勝手に呼び出して生意気だ?それはこっちの台詞だ馬鹿野郎!その上世界を変えるとかキ◯ガイかお前!?自分に都合の良いように世界の理変えてんじゃ無えよ!思い通りにならない事があるから面白いんじゃねーか!!」


  俺は奴に怒鳴った。

  自分以外の全てを見下した様な態度が許せなかったからだ。


  『君、なかなか言うねぇ・・・。思い通りにならないから面白いだったかな?君は今思い通りにならずにこの世界にいるだろう?それも面白いのかな・・・?」


  奴は皮肉っぽく言う。

  小馬鹿にした様なムカつく態度だ。


  『馬鹿かお前?原因はお前だろうが!?意図的に飛ばされて面白い訳無えだろ上が!!ちっとは頭使えよ!!』


  『ははは!ごめんごめん!からかっただけだよ!!まぁ、そんなに怒るなよ・・・ハゲるよ?』


  俺が怒鳴ると、奴は爆笑した。


  『笑い事じゃ無えよ馬鹿!・・・まぁ、なんだ・・・飛ばされた事自体はそんなに怒って無えよ・・・。こっちで良い人達とも出会えたし、色んな経験が出来た・・・それは感謝してる。飛ばされなければ彼等に出会えなかったからな・・・。だが、そんな彼等の世界を、お前は変えようとしている・・・壊そうとしている!それが許せねえ!!覚悟しとけよこの野郎!?俺は絶対に諦めねぇ!必ずお前を見つけ出して土下座させてやる!!』

  

  『はぁ・・・一応忠告はしたからね?無駄になったからって俺を恨まないでくれよ?まぁ、頑張りたまえ!俺は高みの見物をさせてもらうよ・・・じゃあ、清々楽しませてくれよ?』


  奴はそう言うと、俺の頭の中からそのまま消えるように居なくなった。

  俺はベッドの上で起き上がる。


  「あの野郎・・・ふざけやがって!マジで捜し出してぶん殴る・・・!」


  「ん・・・アキラ・・・どうかした?」


  隣で寝ていたラフィが目を覚ます。


  「あぁ・・・なんでも無いよ!夢を見ただけだから、心配しなくて良いよ・・・おやすみラフィ」


  俺が髪を撫でると、彼女はくすぐったそうにしながら、再度眠りについた。


  「俺ももう一眠りするか・・・なんか怒り疲れた・・・」


  俺はラフィに布団をかぶせ、もう一度眠りについた。


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ