第31話 箱の中
「アキラお兄ちゃん、ラフィお姉ちゃん!今日は隠れんぼしよ!」
俺とラフィは昼食を食べ終え、今は村の広場で子供達に囲まれている。
昨日より人数が増え、今日は20人だ。
「隠れんぼか・・・走り回らなくて済む分楽が出来るな!!」
「アキラ・・・少しは身体を動かしなさいな・・・」
ラフィは俺に呆れている。
「仕方ないじゃん・・・筋肉痛でまだ身体中が痛いんだよ・・・。それより、隠れんぼするには人数が多いよね?鬼が1人だと大変じゃない?」
俺が気を取り直して言うと、皆んながどうしようかと話し始めた。
「鬼は2人にすれば?そうすれば負担も減るし2回か3回は遊べるんじゃないかしら?」
「そうだね、じゃあそうしようか!鬼はまず俺とラフィで良いかな?」
俺は彼女の提案に乗った。
まずは俺とラフィで鬼をする。
隠れる側も楽しいが、見つかった時の子供達の反応を楽しみたい。
ラフィも同じ考えのようだ。
顔がニヤケている。
「やったー!じゃあお兄ちゃん達100数えるまで目を閉じててね!」
「了解!あまり遠くには行くなよ!広場周辺だからな!!」
俺は逃げ始めた子供達に注意をし、目を閉じて数え始めた。
「・・・99・・・100!さて、そろそろ行こうかラフィさん・・・」
「えぇ・・・手分けして探すわよ!貴方は広場の入り口方面、私は奥を調べるわ!!」
俺とラフィはそれぞれ決めた方面を捜し回り、30分程で子供達全員を見つけた。
「お兄ちゃん達見つけるの早すぎだよ!」
クルツとセシルの子供達が頬を膨らませて言ってきた。
「ふふふ・・・君達が未熟な証拠だ!これから、大人の本気の隠れんぼをお見せしよう・・・」
「ふふふ・・・腕がなるわ・・・」
意気込む俺とラフィを見て子供達がドン引きしている。
「じゃあ始めよう!鬼は100数えてね!!」
クルツの子供達を残し、他の皆んなは隠れる場所を探しに広場のあちこちに散らばった。
「さて・・・ここならバレないだろう・・・」
俺は逃げ始めてすぐに広場の近くにある倉庫の中に入った。
そこは、鬼をしている時に、隠れる場所として最適だと思い目を付けていた場所だ。
倉庫の中にはいくつもの箱が並んでいる。
「まずは箱の中を確認だな・・・。この箱は布類だな・・・これが良さそうだ」
俺は中の布を出し、靴を脱いで中には入った。
靴を別の所に隠し、出した布を自分の上に乗せて、最後に蓋を閉めて布を整えた。
(ふふふ・・・完璧だ!これなら見つかるまい!!)
俺は箱の中で勝ち誇った。
まだ時間はある。
カチャッ・・・
(あれ?誰か入って来たぞ・・・まだ捜し回るまでは時間があるはずだから、他の人か?)
「この倉庫が良さそうね・・・」
ラフィの声だ。
彼女もこの倉庫に隠れる気らしい。
(あと30秒程だ・・・頼むから別の箱にしてくれよ・・・)
「時間が無いわね・・・急いで隠れないと・・・」
彼女は箱を物色し始める。
カポッ!
俺の入っている箱の蓋が開く音がした。
「これが良さそうね!急いで箱の中を出さなきゃ!」
(おい!待て待て!ダメですって!!)
俺は心の中で叫んだが、布を箱の外に出していく彼女と目があった・・・。
「やあ・・・」
「貴方もここに居たのね・・・」
俺達の間に気不味い空気が流れる。
「もう良いかーい!?」
外から声が聞こえる。
「やばい!悪いけど、私も入るわよ!?」
「いやいやいや!ダメでしょ!?」
「仕方ないじゃない!早くしないと見つかっちゃうのよ!?」
彼女は俺を箱の隅に追いやり、中に入って布を中に戻して蓋を閉めた。
『窮屈だな・・・』
『仕方ないじゃない・・・』
『まぁ良いけどさ・・・』
俺達は箱の中で小さな声で会話をする。
カチャッ・・・!
「ここに居るかな?」
扉を開けて子供が入って来た。
この声はクルツの子供の兄の方だ。
『来たね・・・』
『えぇ・・・』
俺達は息を潜めて外の様子を伺う。
(やばい・・・めっちゃ良い匂いがする・・・)
今、俺達は箱の中で密着している。
中は真っ暗だが、彼女の吐息を近くに感じる。
彼女の身体は暖かく、女性特有の柔らかさが俺を刺激する。
(おおお・・・俺のムスコがエレクチオンして来やがった!?)
俺は密着している腰を引いて彼女から離した。
『ちょっと!動いて音がしたらバレるわよ!?・・・何考えてるのよ?』
彼女は俺を抱き寄せ、俺の下腹部の異変に気付いた。
『男の性なんだ・・・ごめん・・・』
彼女は黙っている。
居た堪れない気持ちになったのだろう。
「お兄ちゃん、誰か居たー?」
「誰も居ないよー!」
俺達が気不味い空気に沈黙していると、子供は諦めて倉庫から出て行った。
『ふう・・・取り敢えず一安心だね・・・。ちょっと離れて良いかな?このままだと・・・』
俺は言葉を途中で遮られ、口を塞がれた。
柔らかな感触と微かな吐息を感じる。
(まさかキスされてる!?)
箱の中なので真っ暗で見えないが、恐らく間違いないだろう。
俺は慌てて口を離した。
『何で逃げるのよ・・・嫌なの?』
彼女の残念そうな声が聞こえる。
『だって・・・こんな状況で見つかったらどうすんのさ?』
『子供達は行ったでしょ?それに、私は見られても構わないわよ・・・』
暗くて見えないが、彼女が照れているのがわかる。
『そうかもしれないけどさ・・・いきなりどうしたの?』
『何というか・・・したくなっちゃったのよ・・・。だって、最近あまりこんな状況無かったでしょ?それに貴方の件もあって我慢してたし・・・』
彼女は俺の本心を語った日以来、積極的なアプローチはして来なくなった。
賭けを持ち出す事も無い。
我慢することが苦手な彼女が、自分の気持ちを抑えてくれている。
俺の事を気遣ってくれているのが痛い程よく分かる。
『ごめんね・・・』
俺は他に言葉が見つからず、取り敢えず謝った。
『別に良いわよ・・・でも、今だけはこうさせていて欲しいわ・・・』
『うん・・・』
俺は彼女を抱き寄せた。
『ふふっ・・・ありがとう、大好きよアキラ・・・』
『俺もラフィの事好きだよ・・・』
俺とラフィは唇を重ねた。
(ラフィの為にも後悔しない答えを必ず見つけよう・・・)
俺はそう思いながら彼女とキスをした。




