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第24話 旅の決意

  「はぁ・・・クルーゼさんには、これからラフィと2人で考えて行くって言ったけど、実際どうするかな・・・」


  俺は風呂から上がり、自室に戻って呟いた。

  俺はクルーゼに、ラフィとのこれからについて話をしたが、正直どうすれば良いのか分からない。

  旅に出る為に文字の勉強はしている。

  すでに日常的な言葉なら読み書きが出来るくらいには覚えた。

  だが、それ以外については全くの手付かずだ・・・。

  

  「今からでも少しずつ準備しないとな・・・」


      コン  コン  コン


  俺がベッドの上で頭を抱えていると、部屋の扉がノックされた。


  「アキラ・・・いる?」


  俺の返事も待たずに、ラフィが部屋に入ってきた。


  「あぁ、ラフィいらっしゃい・・・どうかした?取り敢えず座りなよ」


  俺は特に気にする事もなく、彼女を招いて椅子に座らせた。


  「さっき、父様とお風呂で何を話したのかなって・・・なんか気になってしまって眠れないのよ・・・」


  彼女は恥ずかしそうに聞いてきた。

  俺が無理矢理風呂に連行される前に、彼女には聞かれたく無い話も聞いてくれると、クルーゼに言われたのだ。

  その事が気になったのだろう。


  「別にこれと言って恥ずかしい話しはしてないよ・・・特に、君に聞かれたく無い様な事はね!ただ、この前の事を話したんだ・・・これからラフィと2人で考えて行くって言ったら、頑張りなさいって応援してくれたよ・・・」


  「そう・・・良かったわね・・・」


  彼女は微笑みながら頷いている。


  「ねぇラフィ・・・俺さ、もう少ししたら旅に出ようと思うんだ・・・。10日後位を目処に考えてるんだけど、君はどうかな?一緒に来てくれる・・・?」


  「当たり前じゃない、ついて行くわよ!これから2人で考えて行くんでしょう?貴方と一緒なら、楽しい旅が出来そうだしね!」


  「ありがとう・・・。クルーゼさんとルーカスさん、村の皆んなにも伝えないといけないし、準備も今からだから、明日から忙しくなるよ!」


  「えぇ、必要な物の準備はルーカスに手伝って貰えばすぐでしょうから、明日は皆んなに話しに行きましょう!」


  彼女は力強く頷いてくれた。


  「俺に付き合わせてごめんね、ラフィ・・・折角皆んなとも仲良くなれたのに・・・」


  俺は彼女に頭を下げた。

  彼女はやっと村の皆んなと仲良くなれてきたばかりなのに、一緒に来て貰うのは正直気がひける。


  「気にしないで!別に村の皆んなと一生会えなくなる訳じゃないわ!それに、私が貴方と一緒に居たいのよ!」


  彼女は笑顔で答えてくれた。

  

  「そうだね・・・俺も、君が一緒に居てくれたら心強いよ!」


  俺達は笑顔で頷いて、彼女は部屋を出て行った。

  俺はベッドに寝転がり、明日村の皆んなにどう言って説明するかで悩んだ。





  「はは・・・朝になってしまった・・・」


  俺は、徹夜明けで眠たい目をこすりながら、乾いた笑いを漏らし、呟いた。

  クルーゼとルーカスは旅の理由を知っているので、問題は無いと思っている。

  だが、村の皆んなはどうだろうか・・・。

  村の皆んなは、俺の事を仲間として見てくれている。

  子供達も、かなり懐いてくれた。

  折角仲良くなれたのに、帰るために旅に出ると言ったら、どういう反応をするだろうか・・・。

  そう考えると、なかなか気が進まない・・・。


  「まずはクルーゼさん達に報告するか・・・」


  俺は気持ちを切り替え、徹夜明けでやつれた顔を洗ってリビングに向かった。


  「おはようございます・・・」


  「アキラ君、おはよう!昨夜は楽しかったよ!」


  「おはようございます・・・アキラ様、顔色が優れない様ですが、体調が良くないのですか?」


  俺がリビングに入ると、クルーゼとルーカスがそれぞれ挨拶をしてきた。


  「いえ・・・寝付けなかったもので・・・。あの・・・ラフィが起きて来たら、お2人に話したい事があるんですけど、良いですか・・・?」


  「私は構わないよ?」


  「はい、構いませんよ?」


  改まって聞いた俺を不思議そうに彼等は見ている。

  

  「ありがとうございます・・・」


  俺は2人にお礼を言って、ラフィが起きてくるのを待った。






  「皆んなおはよう・・・」


  俺がリビングに来て30分ほど経った頃、ラフィがまだ眠たそうな顔をして起きてきた。


  「おはようラフィ!おまえは相変わらず朝は弱いな!」


  「お嬢様、おはようございます」


  「おはようラフィ・・・」


  俺達は、口々に彼女に挨拶をした。


  「ラフィ・・・起きて早々悪いんだけどさ・・・。昨夜の事を2人に話したいんだけど・・・」


  「昨夜の事・・・あぁ、あれね!」


  俺が遠慮がちに言うと、彼女は最初は寝ぼけていたが、言葉を理解して目が覚めた。


  「何だい、2人共改まって・・・」


  クルーゼとルーカスは首を傾げている。


  「あの・・・昨夜ラフィと話したんですが、俺・・・旅に出ようと思います・・・。クルーゼさんのご友人からの返事や、村の皆んなへの挨拶、旅の準備なんかもあるので、10日後位を目処に考えています・・・」


  「そうか・・・急な話しに少し驚いたが、旅の話は前から出ていたし、それが良いかもしれないな・・・。寂しくなってしまうが、仕方のない事だ・・・。ラフィも一緒に行くんだろう?」


  クルーゼは心から寂しそうな顔をしている。

  ルーカスは黙って話を聞いている。


  「はい・・・私も彼と一緒に行きたいです・・・。彼が答えを見つけるまで、一緒に居たいと思います・・・」


  彼女は申し訳無さそうに答えた。


  「昨夜アキラ君から聞いたよ・・・。2人共頑張りなさい。2人の出した答えなら、私も受け入れるよ・・・。だから、後悔の無いように頑張りなさい」


  彼は優しい顔で許してくれた。


  「では、私はアキラ様とお嬢様が出発するまでに、旅に必要な物の準備をさせていただきます・・・。まだ時間はありますが、早めに準備しておいた方がよろしいでしょう」


  今まで話を最後まで黙って聞いていたルーカスは、少し寂しそうな顔をして言ってきた。

  

  「私もお2人には後悔の無い選択をしていただきたいと思っております・・・。出発までまだ時間はありますから、それまでゆっくりとされてください」


  「ありがとうございます・・・ご迷惑をおかけします」


  俺がお礼を言うと、彼は優しく頷いてくれた。


  「さて、少し遅れたが、朝食にしよう!何をするにしても、腹が減っていては力が出ないからな!」


  俺達は、クルーゼの言葉に頷いて、朝食を食べ始めた。

  皆んなで食べる朝食も、あと10日だけだ。

  俺はその時間を惜しむ様に、ゆっくりと時間をかけて朝食を食べた。


  

  

  




  

  


  

  


  

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