表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/73

第14話 賭け

  俺は風呂場に入り、頭からお湯をかぶった。


  「はぁ・・・やっちゃったなぁ・・・」


  先程の自分の行動と、それを見ていたラフィやクルーゼの顔を思い出しため息を吐いた。


  「さすがに、お湯だけじゃ酒の匂いが取れないな・・・」


  俺は石鹸のような物を手に取り泡立てる。


  「大丈夫なのかなこれ?」


  匂いを嗅ぐが、変な匂いはしなかったので、取り敢えず髪を洗い始めた。

  目を瞑りながらしばらく洗っていると、後ろに人の気配を感じた。


  (おい・・・風呂場で気配を感じると、幽霊がいるって噂があるけどまさか本当じゃないよな!?)


  俺は恐怖で声が出ない。

  俺は気付いていない振りをして頭を洗い続けた。

  すると、俺の手以外にも髪を触る感触があった・・・。


  (ヤベェ!マジもんじゃねーか!!怖いよぉ・・・でも、確認しなきゃな・・・)


  俺は素早く桶のお湯で頭を洗い流した。



        バシャッ!



  「きゃっ!?いきなり何するのよ・・・」


  俺が振り返って目を開けると、そこには裸のラフィがいた。

  俺のかぶったお湯がかかり、彼女の髪は濡れ、肌に張り付いている。

  その姿は艶めかしく、男心をくすぐる光景だった。


  「何で君まで入って来てんの・・・?」


  俺は彼女を直視しないように目を逸らして聞いた。


  「私も汗流したかったし・・・それに、貴方にお礼もしたかったし・・・」


  彼女はごにょごにょと口ごもる。


  「お礼なら別の形の方が良いかな・・・流石に一緒にお風呂に入るのは、嬉しいけど落ち着かないよ・・・。それに、今の状況じゃ我慢出来なくなっちゃいそうだからさ・・・」


  今は1人で考えたかった。

  彼女達を心配させてしまい、若干ナーバスになっていたのだ。

  そんな心境で魅力的な女性が自分を気遣ってきたら、俺は我慢が出来なくなると思った。


  「何か送ろうかとも考えたけど、何が良いかもわからないし・・・。それに、遅くなっちゃうとお礼しにくくなっちゃうし・・・。だから、私じゃ駄目かなって思って・・・」


  「気持ちはありがたいけど、それは・・・」


  「別に我慢しなくて良いじゃない・・・」


  彼女は俯いている。


  「そういう訳にいかないよ・・・もし俺が帰る事になったら、絶対に後悔するし未練が残る・・・それは、君もそうだろ?」


  「なら、私の今の気持ちはどうすれば良いのよ!?貴方はそれで良いかもしれないけど・・・私はどうすれば良いの・・・?貴方に拒否されて、貴方が帰ってしまえば、私は死ぬ迄ずっと我慢しなきゃいけないの・・・?」


  顔を上げた彼女は泣いていた。

  俺はそれを見ても何も言えなかった。

  彼女が俺を好きである事は聞いている。

  俺も彼女を気になっている。

  一緒に居て楽しいし、殴られてばかりだが気楽に話が出来る。

  彼女は見た目も良くて料理も出来る。

  本来なら、こんな子が好きになってくれたなら、誰だって喜ぶだろう。

  だが、俺は手放しで喜べない。

  俺は異世界人で、いつ帰る事になるか分からないし、何より種族も違う。

  仮にこの世界に残り、彼女と結ばれても、いずれは彼女を1人にしてしまう。

  彼女が他の人を愛するかもしれない・・・だが、その人が見つかるまで彼女は1人になる。

  彼女に辛い思いをさせたくはない。


  「何も言ってくれないのね・・・」


  俺が言葉に詰まっていると、彼女は諦めた様に呟いた。

  俺は自分の不甲斐なさに情け無い気持ちになった。


  「良いわ・・・貴方がそういう事なら、私にも考えがあるわ!」


  彼女は立ち上がり、俺を指差した。

  

  (あ・・・これは面倒な事になった・・・)


  俺は、彼女の表情を見てそう思った。

  彼女は笑っていたのだ・・・。

  さっきまでの涙は無く、今は何か企んでいるような不敵な笑みだ。


  「貴方、私と賭けをしなさい!貴方が帰るまで我慢出来たら貴方の勝ち、我慢出来ずに私を抱いたら私の勝ちよ!!私が勝ったらこの世界に残って貰うわ!!」


  (やっぱり・・・ラフィならそうなるよなぁ・・・)


  俺は彼女の言葉にため息を吐いた。


  「俺が勝ったらどうなるのさ?何も得られないならやる意味は無いよ・・・」


  「その時は、最期に私を抱かせてあげるわ!!」


  彼女はドヤ顔で言い放った。


  「あのさ、それって賭けの意味あるの?結局、君を抱いたら俺は後悔するんじゃないの?」


  「我慢出来たらって言ったでしょ?私は遠慮はしないわよ!何としても私を抱かせるわ!!ただ、私からは貴方を抱かない・・・それはフェアじゃないからね!私のアプローチを受け続けて、それでも貴方が我慢出来る意思の強い人なら、最期に私を抱いても後悔しないでしょ!?貴方が帰る時は、私は引き止めないし、我儘も言わない。貴方を笑って見送るわ!!」


  俺はため息を呟いた。

  彼女の言っている事は滅茶苦茶だと思った。


  「結局俺が勝っても君を抱くなら、君の勝ち確定じゃないか・・・出来レースをやるつもりは無いよ」


  「違うわよ・・・確かに好きな人に抱かれたら、私はその時は後悔しないし未練も無い。だけど、貴方が帰ったら私は1人で我慢するのよ・・・?その先ずっと・・・。貴方が先に我慢するか、私が後から我慢するかの違いよ・・・」


  俺は悩んだ。

  確かに彼女の言う通りではある。

  俺が勝ったら後腐れなく彼女を抱ける権利を得られる・・・。

  だが、俺は抱いてしまったらきっと後悔するだろう。

  逆に、もし最期に彼女を抱かなかったら、彼女はずっと未練を残す・・・。


  「どうするの!?私は貴方以上に我慢が出来無いわよ!!」


  彼女は俺を見下ろして決断を迫った。


  「わかったよ・・・受けるよ・・・」


  俺は諦めて賭けを受けた。


  「ふふふっ・・・これからが楽しみね!なら、早速今から賭けの始まりよ!!」


  彼女は不敵な笑みを浮かべてそう言うと、俺に抱きついてきた。

  身体に石鹸を付け、自分の身体で俺を洗い出す。

  俺は抵抗したが、賭けを理由に黙らされた。

  俺は終始内股だった・・・。


  (あぁ・・・これってソープだよな・・・。まさか異世界でエルフの美少女にこんな事されるなんて・・・俺、我慢出来るかな・・・)


  俺はそう思いながら、彼女に為すすべなく身体を洗われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ