第14話 賭け
俺は風呂場に入り、頭からお湯をかぶった。
「はぁ・・・やっちゃったなぁ・・・」
先程の自分の行動と、それを見ていたラフィやクルーゼの顔を思い出しため息を吐いた。
「さすがに、お湯だけじゃ酒の匂いが取れないな・・・」
俺は石鹸のような物を手に取り泡立てる。
「大丈夫なのかなこれ?」
匂いを嗅ぐが、変な匂いはしなかったので、取り敢えず髪を洗い始めた。
目を瞑りながらしばらく洗っていると、後ろに人の気配を感じた。
(おい・・・風呂場で気配を感じると、幽霊がいるって噂があるけどまさか本当じゃないよな!?)
俺は恐怖で声が出ない。
俺は気付いていない振りをして頭を洗い続けた。
すると、俺の手以外にも髪を触る感触があった・・・。
(ヤベェ!マジもんじゃねーか!!怖いよぉ・・・でも、確認しなきゃな・・・)
俺は素早く桶のお湯で頭を洗い流した。
バシャッ!
「きゃっ!?いきなり何するのよ・・・」
俺が振り返って目を開けると、そこには裸のラフィがいた。
俺のかぶったお湯がかかり、彼女の髪は濡れ、肌に張り付いている。
その姿は艶めかしく、男心をくすぐる光景だった。
「何で君まで入って来てんの・・・?」
俺は彼女を直視しないように目を逸らして聞いた。
「私も汗流したかったし・・・それに、貴方にお礼もしたかったし・・・」
彼女はごにょごにょと口ごもる。
「お礼なら別の形の方が良いかな・・・流石に一緒にお風呂に入るのは、嬉しいけど落ち着かないよ・・・。それに、今の状況じゃ我慢出来なくなっちゃいそうだからさ・・・」
今は1人で考えたかった。
彼女達を心配させてしまい、若干ナーバスになっていたのだ。
そんな心境で魅力的な女性が自分を気遣ってきたら、俺は我慢が出来なくなると思った。
「何か送ろうかとも考えたけど、何が良いかもわからないし・・・。それに、遅くなっちゃうとお礼しにくくなっちゃうし・・・。だから、私じゃ駄目かなって思って・・・」
「気持ちはありがたいけど、それは・・・」
「別に我慢しなくて良いじゃない・・・」
彼女は俯いている。
「そういう訳にいかないよ・・・もし俺が帰る事になったら、絶対に後悔するし未練が残る・・・それは、君もそうだろ?」
「なら、私の今の気持ちはどうすれば良いのよ!?貴方はそれで良いかもしれないけど・・・私はどうすれば良いの・・・?貴方に拒否されて、貴方が帰ってしまえば、私は死ぬ迄ずっと我慢しなきゃいけないの・・・?」
顔を上げた彼女は泣いていた。
俺はそれを見ても何も言えなかった。
彼女が俺を好きである事は聞いている。
俺も彼女を気になっている。
一緒に居て楽しいし、殴られてばかりだが気楽に話が出来る。
彼女は見た目も良くて料理も出来る。
本来なら、こんな子が好きになってくれたなら、誰だって喜ぶだろう。
だが、俺は手放しで喜べない。
俺は異世界人で、いつ帰る事になるか分からないし、何より種族も違う。
仮にこの世界に残り、彼女と結ばれても、いずれは彼女を1人にしてしまう。
彼女が他の人を愛するかもしれない・・・だが、その人が見つかるまで彼女は1人になる。
彼女に辛い思いをさせたくはない。
「何も言ってくれないのね・・・」
俺が言葉に詰まっていると、彼女は諦めた様に呟いた。
俺は自分の不甲斐なさに情け無い気持ちになった。
「良いわ・・・貴方がそういう事なら、私にも考えがあるわ!」
彼女は立ち上がり、俺を指差した。
(あ・・・これは面倒な事になった・・・)
俺は、彼女の表情を見てそう思った。
彼女は笑っていたのだ・・・。
さっきまでの涙は無く、今は何か企んでいるような不敵な笑みだ。
「貴方、私と賭けをしなさい!貴方が帰るまで我慢出来たら貴方の勝ち、我慢出来ずに私を抱いたら私の勝ちよ!!私が勝ったらこの世界に残って貰うわ!!」
(やっぱり・・・ラフィならそうなるよなぁ・・・)
俺は彼女の言葉にため息を吐いた。
「俺が勝ったらどうなるのさ?何も得られないならやる意味は無いよ・・・」
「その時は、最期に私を抱かせてあげるわ!!」
彼女はドヤ顔で言い放った。
「あのさ、それって賭けの意味あるの?結局、君を抱いたら俺は後悔するんじゃないの?」
「我慢出来たらって言ったでしょ?私は遠慮はしないわよ!何としても私を抱かせるわ!!ただ、私からは貴方を抱かない・・・それはフェアじゃないからね!私のアプローチを受け続けて、それでも貴方が我慢出来る意思の強い人なら、最期に私を抱いても後悔しないでしょ!?貴方が帰る時は、私は引き止めないし、我儘も言わない。貴方を笑って見送るわ!!」
俺はため息を呟いた。
彼女の言っている事は滅茶苦茶だと思った。
「結局俺が勝っても君を抱くなら、君の勝ち確定じゃないか・・・出来レースをやるつもりは無いよ」
「違うわよ・・・確かに好きな人に抱かれたら、私はその時は後悔しないし未練も無い。だけど、貴方が帰ったら私は1人で我慢するのよ・・・?その先ずっと・・・。貴方が先に我慢するか、私が後から我慢するかの違いよ・・・」
俺は悩んだ。
確かに彼女の言う通りではある。
俺が勝ったら後腐れなく彼女を抱ける権利を得られる・・・。
だが、俺は抱いてしまったらきっと後悔するだろう。
逆に、もし最期に彼女を抱かなかったら、彼女はずっと未練を残す・・・。
「どうするの!?私は貴方以上に我慢が出来無いわよ!!」
彼女は俺を見下ろして決断を迫った。
「わかったよ・・・受けるよ・・・」
俺は諦めて賭けを受けた。
「ふふふっ・・・これからが楽しみね!なら、早速今から賭けの始まりよ!!」
彼女は不敵な笑みを浮かべてそう言うと、俺に抱きついてきた。
身体に石鹸を付け、自分の身体で俺を洗い出す。
俺は抵抗したが、賭けを理由に黙らされた。
俺は終始内股だった・・・。
(あぁ・・・これってソープだよな・・・。まさか異世界でエルフの美少女にこんな事されるなんて・・・俺、我慢出来るかな・・・)
俺はそう思いながら、彼女に為すすべなく身体を洗われた。




