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第11話 出発

  翌朝、俺とラフィは急いで町に行く準備をした。

  向こうの世界で何度か旅行に行った事はあるが、こちらでは初の泊りがけの小旅行の様なものだ。

  何が必要かも分からない俺は、彼女に教わりながら必要な物を準備した。


  「本当にこれだけで良いの?」


  俺は準備した荷物を見て不安になった。

  着替えが2着と、自分が使う物だけだ。

  まぁ、俺はこっちに来てから日が浅いし、向こうの世界の物は目立つので殆ど置いて行く。

  クルーゼの友人に異世界人である事を証明するために、スマホだけは持って行く事にした。


  「それだけあれば十分よ!宿で色々借りられるから、あんまり持って行くとかさ張るし重いわよ?」


  ラフィは自分の服装を姿見で確認しながら答えた。


  「ねぇ、それよりおかしな所ないかしら?」


  「おかしな所って言われても、俺はこっちの世界の流行りは知らないから、助言出来ないんだけど?」


  「別に流行りは関係無いわよ。貴方が見て変な所が無いか聞いてるの!」


  彼女は俺の方を向いて聞いてきた。


  「うーん・・・。ラフィってパンツ系しか持って無いの?俺は、君のスカート姿を見てみたいかな?パンツ系もシルエットが見えて捨てがたいけど、スカート姿の君がどれだけ変わるのか見てみたいよ!!」


  俺が力説すると、彼女は呆れていた。


  「分かったわよ・・・。まぁ、別に動き回る訳じゃないしスカートにするわ・・・。笑わないでよ?」


  「笑う訳無いじゃん・・・。多分、君なら何を着ても似合うよ!」


  彼女は俺の言葉を聞いて赤面して俯いた。


  「もう・・・本当に調子が良いわね・・・!」


  そう言った彼女は、笑顔だった。

  褒められて嬉しかったのだろう。

  やはり彼女には笑顔が似合うと思う。

  照れた仕草も可愛いが、笑顔が一番似合っている。

  彼女は気を取り直し、いそいそと着替え始める・・・。


  「あのさ・・・何で当たり前の様にここで着替えんのさ?」


  「別に良いでしょ?私の裸見たんだから、今更下着くらいでとやかく言わないでよ!」


  俺は諦めて自分の荷物の最終確認をした。


      コン  コン  コン


  「アキラ君、準備は出来たかな?そろそろ行こうと思っているんだが・・・。なんだ、ラフィも居たのか」


  クルーゼが部屋に入りラフィに気付いたが、俺の目の前で着替えている彼女には何も注意しない・・・。


  「あの・・・いくらなんでも、俺の目の前で着替えるのは注意しないと駄目なんじゃ・・・」


  俺は遠慮がちに彼に言った。


  「あぁ、別に良いんじゃないか?姿見はこの部屋にしかないからね」


  「何でですか?」


  「この部屋は、私の妻・・・亡くなったラフィの母親の部屋なんだよ。鏡は高価だからね・・・姿見はこの部屋にしか置いてないんだよ」


  俺は彼の言葉に驚愕した。

  彼は、知り合って数日の俺に亡き妻の部屋を貸し与えたのだ。


  「何でそんな大事な部屋を俺に貸したんですか!?流石に悪いですよ!!」


  「君がいつ迄この世界に居れるか分からないからね・・・。だから、来客用の部屋を貸してしまったら、使えなくなるだろう?君にこの部屋を貸す事はラフィも了承しているし、君ならこの部屋の物を手荒には扱わないと思うから貸したんだよ」


  彼は落ち着いて答えた。

  信用してもらえるのは嬉しいが、流石に気が引ける。


  「我々はずっと使えずに居たんだが、いつ迄もそのままでは勿体無いし、この際だから君に貸したんだよ。だから、気にせず使ってくれると助かるよ」


  「分かりました・・・でしたら・・・」


  「言っとくけど、姿見はこの部屋で使わせて貰うわよ?これは、母様の部屋に置いときたいから!」


  姿見だけをラフィの部屋にと言うつもりだったが、先を越された・・・。


  「了解・・・。ラフィは露出狂だよね・・・」



         ドゴッ!!



  彼女は無言で俺を殴り倒した。


  「何か言ってから殴ってよ・・・いきなりだとダメージハンパないんだよ・・・」


  俺が頭をさすりながら起き上がると、クルーゼは苦笑していた。


  「それよりどう?こんな感じよ!」


  ラフィはスカートを摘んで回ってみせた。

  俺は痛みも忘れて見惚れてしまった。


  (これはあれだ!童貞を殺す服だ!!ヤバい・・・俺の股間を直撃だ!!)


  彼女が着ていたのは、白いブラウスにハイウエストの紺色のスカートだった。

  細く引き締まったウエストと、強調された胸が実にけしからん。


  「その顔を見ると、気に入って貰えたみたいね!」


  彼女はそう言うと、満面の笑みで言ってきた。


  「ラフィがお嬢様に見える・・・」


  「アキラ君、ラフィは一応お嬢様なんだが・・・」


  「それ、結構失礼よ?」


  俺は2人にジト目で睨まれた。


  「さて、冗談はこのくらいにしてそろそろ行こうか?」


  「わかりました。宜しくお願いします!」


  「久しぶりの町だから楽しみだわ!アキラ、貴方は荷物持ちをお願いね!この機会に買い込むわよ!!」


  俺達はルーカスの手配した馬車に乗り込み、村を出発した。





  「町まではどの位掛かるんですか?」


  「そうだな・・・今からだと夕方には着くと思うが・・・。まぁ、順調にいけばの話だがね」


  クルーゼは腕を組んで答えた。


  「途中何かあるんですか?」


  「羊がいるのよ。たまにだけど、集団で道を横切るから、その時は待たないといけないわね」


  俺の質問にラフィが答えた。


  「羊は毛、肉、乳と何かと重宝するからね。大切に扱わないといけないんだよ」


  「羊肉かぁ・・・食べたくなりますね!」


  「美味しいわよね!」


  俺とラフィは笑い合って頷いた。


  「そろそろ山を抜けて街道に入るよ。君の居た世界と違って、何も無くて退屈かもしれないが、景色は良いよ」


  俺はクルーゼの言葉を聞いて、馬車の窓から外を見た。

  そこには長閑な田園風景が広がっていた。

  雲一つない青空、風車と麦の畑、確かにそれ以外は見当たらない。

  だが、都会のビル群を見慣れていた俺には息を飲む様な美しい風景に見えた。

  絵画の中に迷い込んだような気分だ。


  「綺麗ですね・・・」


  「気に入って貰えたようで嬉しいよ!」


  クルーゼとラフィは微笑んでいる。


  「俺は都会育ちなので、こういった風景は新鮮ですよ!」


  「どんな場所だったの?」


  はしゃいでいる俺に、ラフィが聞いてきた。

  俺はスマホのフォルダにある街の写真を見せてあげた。


  「何これ・・・お城!?」


  「ほう・・・これは凄いな」


  2人は写真を食い入る様に見ている。


  「これはビルって言って、かなり背の高い建物なんだけど、中には企業の事務所が入ってたり、お店や飲食店が入ってる物もあるよ」


  「ギルド等の所有している建物と言う事かな?」


  「そうです!そんな感じですよ!」


  「ねぇ、この変な乗り物は何?」


  俺とクルーゼがビルについて語っていると、写真を見ていたラフィが聞いてきた。


  「あぁ、それは車だよ。馬のいない馬車みたいな物だね!ガソリンや軽油って言う燃料を燃やして走るんだけど、色んな種類があるんだ。荷物を運ぶための車とか、家族で乗るための車、速く走るための車とかね!」


  「速く走るってどの位なの?」


  「そうだね・・・速さに特化した車なら、だいたい馬の6倍〜7倍位かな?馬の個体差もあるから、正確な事は分からないんだけどね・・・。俺の居た世界の速い馬と比べるとその位かな?」


  「7倍って・・・想像も出来ないわ・・・」


  「まだ速い乗り物もあるよ?」


  「はぁ?そんなに速さを求めて何になるのよ!?」


  呆れる彼女に戦闘機の画像を見せた。


  「これは空を飛ぶ乗り物なんだけど、戦闘機と言って戦争の道具でもあるんだ・・・速さは音速の2倍以上出るよ」


  「なんだか凄そうではあるけど、音速って何よ?」



         パン!!



  俺は彼女の質問を聞いて、手を叩いた。

  2人は驚いている。


  「何よ、いきなり手なんか叩いて・・・」


  「今音が出ただろ?近くだとすぐに聞こえるけど、離れると遅れて聞こえるんだ。それは経験あるだろ?」


  びっくりしていた2人は、真剣な顔で頷いた。


  「音は空気の振動で伝わるんだけど、その音が1秒間に進む距離があるんだ。簡単に言っちゃえば、音がその距離を1秒間に進む速度が音速だね。この戦闘機は音の2倍以上の速度で飛べるんだよ」


  「凄過ぎて理解の範疇を超えているな・・・」


  「嘘じゃないとは思ってるけど、信じられない話ね・・・」


  2人は唖然としていた。


  「まぁ、科学の進歩した世界だったよ・・・」


  「そうか、貴重な話を聞かせてくれてありがとう。また色々と聞かせてくれ!」


  クルーゼはそう言うと、笑顔で握手を求めてきた。

  俺はその手を取り、頷いた。

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