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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第4章 必要なのは広い視野と冒険させられること
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引き寄せた喜び

「次は葵ちゃんの番だね!」


 非常に機嫌がいい鮎莉はワクワクしたような表情をして言う。


「うん、そうだね」


 桜木も緊張した面持ちで答える。


「ぱっぱと言ってくれ、待つの嫌いなんだ」


 さっきのことを引き摺っている住吉は、ぶっきらぼうに答える。


「ダメだよ!こう言うのは楽しまなきゃ!」


 それに対して、鮎莉はこの緊張を楽しみたいのか、住吉の意見を却下する。


「そんなこと言ってもな、桜木や鮎莉の様子から察しはつくだろう?」


 そう言って、鮎莉と桜木を見る住吉。


 2人には、絶望といった感じはない。


 もしもダメだったら、絶望といった様子が少しは2人から見られるはずだ。


 それが見られないからこそ、住吉はああいったのだろう。


「私は葵ちゃんの順位も点数も知らないよ?」


「私も各教科の点数までは知っているのですが、合計点数と順位に関してはまだ確認したません。」


「すると、結果はまだ誰も分かっていないということか」


「そういうことになります」


 なんとも粋な計らいをしてくれる。


「そういうことなので、みんなで一緒に見よう!」


「そうだね」


「早くしてくれー」


 住吉はもう一度あの絶望を味わうかもしれないという恐怖が耐えきれないのが、心底疲れた表情をしている。


 そうして、桜木は成績表を裏返しで僕達の前に出す。


「それじゃ、確認しますよ」


 桜木は緊張した面持ちで、成績表を表に向ける。


 そして、全員でその成績を確認する。

教科    点数   順位

現代文 100点   1位

古典    98点 2位

数学Ⅱ 100点   1位

数学B 100点   1位

世界史A 100点   1位

日本史A  100点   1位

英語Ⅰ 98点   2位

OC    99点   2位

理科A 100点   1位

理科B 100点   1位

保健    98点   3位

美術    98点   3位


合計   1191点   1位


「葵ちゃん!おめでとうー!」


 桜木は見事1位を奪還することに成功した。


 鮎莉はそれを見た瞬間、桜木の方へと駆け寄って抱きつく。


「おめでとう」


「やるじゃん」


「みんなありがとう!本当にありがとう」


 桜木は涙を流しながら、僕達に感謝を伝える。


「私、みんなの努力に応えることができたよ」


 嬉しさのあまり声が震えながら喋る桜木。


「うん、凄いよ!凄いよ!流石葵ちゃん!」


「ありがとう、ありがとう」


 鮎莉の方も気がつけば涙を流している。


「一位をとってこんなに嬉しかったの初めて!」


 桜木はこれ以上にないと言っていいほどの笑みを浮かべる。


 桜木は、今までは完璧少女という出来ることが当たり前と見られてしまう呪いによって、本当の意味で嬉しさなどを他の人と共有することはなかった。


 しかし、今回は違う。


 完璧少女でもなく、優等生でもなく、ごく普通の人として友達として向き合い、共に努力し、辛い時でも一緒に頑張ってくれる友達がいた。


 出来て当たり前の目標ではなかった。


 友と一生懸命に頑張って達成しようとした目標だった。


 だからこそ、今まで取ってきた一位なんかとは比べ物にならないほど喜びが感動が桜木に押し寄せてきているのだろう。


 桜木の中にある喜びや感動、嬉し涙や誰でも魅了されてしまいそうな本当に素敵な笑顔は中々無くなることは無さそうだ。


 鮎莉と抱きしめながら、喜び合っているところを、僕は少し離れたところから見守る。


 すると、桜木はこちらに見てくる。


「隅風。私、やり遂げたよ」


 そういう桜木の姿は、初めて会った不安と恐怖と絶望で押し潰されそうになっていた、暗く冷たいものではなく、全てを照らさんとするほどの希望の光と決して負けることのなかった強き信念を宿す、明るくて強い姿だった。


 その成長を見て、僕は心の底から思ったことを口にする。


「本当に凄いよ。よく頑張ったね」


「うん」


 こうして、一ヶ月以上をかけた一位奪還作戦は無事に成功するのであった。

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