プロローグ1
日曜日の朝、僕は桜木達と遊んだ昨日同様朝早く起きる。
今日もやることがあって早起きだ。ただ今日は優香は部活がないので朝食を作っていない。
なので僕は下に降りると、家族全員分の朝食を作っておく。それから自分の分を食べ終わり、部屋へと戻る。
部屋に戻った僕は、次に作業の準備をしていく、出来るだけ長時間集中できるよう、飲み物や簡単にエネルギー補給できるものまで用意する。
次に戸棚にしまっていた大量の資料などを取りやすいように身近なところへと置いておく。
今日するのは明日以降にする桜木の成績上げ対策の最終チェックだ。
本当は桜木達と考えながらすることがベストだが、前回の活動の疲れや、作戦の成功という成果を出来るだけ実感してもらい今後のモチベーションの向上といった理由から、それは避けて、一人で対策を考えていた。
それに、人生相談部での対策方法を考えるのは僕の役割であり、住吉や鮎莉はそれを実践するのが、ベストな割り振りだ。
そのほかにも一人影で動くからこそ出来ることが存在する。
僕は準備なしに物事を解決できるような人物ではない。その逆で物凄く緻密に計画を建て、効率的に地道な努力をしなければ、何もできない人物である。
だからこそ、こうやった裏作業をする。そうして僕は作業へ没頭する。
それから数時間だった後のことだった。
「駿人兄さん!」
突然大声と共に肩を引っ張られる。
「びっくりしたな」
「真顔で言っても信用ないよ?」
「作業に没頭していたから仕方ない」
「作業に没頭て、その時の駿人兄さんの顔、とても冷たいからやめて欲しいんだけど」
優香からは呆れられて表情をされる。一度作業に没頭するとそのこと以外の情報が入ってこないので、今回のように触られなければ気がつくこともない。
それに、没頭している最中はそれ以外のことに関して、関心などと言ったものが著しく下がり、感情の起伏が皆無に近い状態になってしまう。
なので僕的にもあまりしたくないのだが、今回は失敗できないものだ。
「それで何のようで来たんだ?」
「もう昼だよ?」
「なるほど、ご飯ということか、なら僕の分は残しておいてくれあとで食べる。」
普段はそんなことをしないが、今回はやるべきことがある為、極力時間を無駄にしたくない。それに現在続いている集中力を途切れさせたくないのもある。
「せっかく私が作った料理だったのに」
「さて、今すぐに食べに行こうか!我が妹よ!」
光の方速度で今ある作業を中断して、ダイニングへと向かう準備をする。
「駿人兄さんのそういう所好きだよ!」
僕の素早い対応に上機嫌な優香。
妹が手作りした料理を食べない兄など存在するはずがない。例えどんなことがあったとしても必ず食べにいくに決まってる。
「それにしても、部屋が散らかってるね」
僕の部屋と至る所に資料などが置かれている。今回は扱う情報量が多くて、置き場などは割と適当である為、完全にゴミ箱部屋一歩手前だ。
だが、今はそんなことは関係ない。そのようなことを考えている余裕があるならば、早く優香の手作り料理を食べに行かなくてはならない。
そうして、意気揚々と下に降りていくと、そこには倒れる両親と腹を抱え、顔が青白くなった綾人が今にも死にそうな感じでこちらに向かってくる。
「にい、さん、、、にげ、、ろ」
そうして僕に最後の言葉を残して綾人は力尽きる。それを見た優香は苦笑いしている。
「おい、これはどうゆうことだ?」
「わ、わ、私知らないー。みんなが食べる前に呼びに行ったしー」
「妹が毒物で家族を抹殺しようなんて、、、僕は、僕はなんと言う妹を育ててしまったんだ!」
「そんなことをしてないし、考えてもないからね!!」
優香は必死に否定する。朝食はあんなに美味しかったのに昼食ではあの惨劇を生み出すなんて、どういうことだ。
テーブルの上にはハンバーグが置かれてある。これが今回家族を毒殺したものだろう。
兄として毒だと分かっていても、食べる義務があるので食べないといけないが、その前にこの状況をどうにかしないといけない。
僕は倒れた家族を、ソファーなどに移動させる。そして、水を置いてそっとする。
その次に、代わりとなるハンバーグを作る。ついでに優香にも作り方を教える。
「駿人兄さん、ありがとう」
「どういたしまして、それでどうして今回は失敗したんだ?
」
「別に今回が失敗したわけじゃないんだ。あの朝食も一度お母さんが食べてくれて、その時も今と同じように倒れて、今回もお母さんだけが試すはずだったが、お母さんが私だけではいやと」
「なる、、、ほど」
つまり、お母さんが先に食べてくれなければ、昨日倒れていたのは僕だったと、母さん、ありがとう。そして、母さん、弟と父を巻き込まないでくれ。
「次からは僕が教えるから、このような事態はもうやめてくれよ」
「駿人兄さんには習いたくない!」
「おい、それはどういうこと、というか我儘を言うんじゃありません」
僕が教えると伝えた瞬間、優香は強く否定する。
どうしてなんだ。僕は出来るだけ優しく教えているはず、何がダメなのか今考えてもわからん。
「なら、綾人に教えてもらえ、少なくとも一人でやるな。犠牲者が出る」
「綾人兄さんは今回で毒殺してしまいました。引き受けてくれても、最低限しか教えてくれません」
「あ・・・・・・」
ソファーに倒れる綾人を見る。あれは結構根に持つタイプだ、頼めば教えてくれるかもだが、それなりの仕返しが返ってくるのは間違いない。
「なら、どうしようか」
「駿人兄さんのお友達にお願いしてくださいよ」
「おいおい、そんな存在がいると思うか?」
「いるでしょ?」
「え、」
優香は何を言っているのかみたいな顔でこちらを見てくる。
妹に料理を教えてくれと頼めるほどの親しい友達は住吉ぐらいなものだが、あいつが料理を教えれるとは思わないし、そもそも住吉の存在は知らないはずだ。
「あれ、私の勘違い?このまえ駿人兄さんのお見舞いしに来た人がいるでしょ?」
「ゴホ、ゴホ」
予想外の人物が挙げられて、少し咳き込む。
「桜木のことか」
「そうそう、美人で性格も良さそうだったし、優しそう!駿人兄さんもまだ関係が続いているんでしょ!」
確かに関係が続いているといえば、続いているのだが、純粋な関係性というと少々疑問が湧く。
まあ、頼めば教えてくれるかもだが、今は解決しないといけない問題がある。頼むにしてもその後だな。
「まあ、今は忙しいから暇になったら頼んでみるよ」
「やったー!一人だけだと行き詰まっている所もあるから他の人に見てもらいたかったんだよね!」
「まだ確定したわけでもないし、当分先のことだからな」
「分かってる、分かってる」
本当に分かっているのだろうか、疑問になるが、こんなに喜んでいるので今は何も言わないでおこう。
その後、料理を作り、僕は妹の手料理を食べた。今までに経験したことがないもので、苦痛耐性が高いと考えていたが、それを貫通してきて、気が失いそうになった。
なんとか食べ終わった後、手すりを使いながらなんとか自分の部屋に戻る。
部屋に戻り、椅子に座る。
桜木の関係については、今はまだ複雑だ。人生相談部としての方向性は決まっているが、個人としては何も考えていなかった。
まあ、今考えても仕方ないことか、僕はその問題を後回しにする。
その後も数時間、今後について考える。
そうして、最後に振り返る。
今回の件で、必要なのは成績を上げること。
ただ上げるだけなら、いくらでもやりようがある。例えば、超高度な予測問題を作り出し、解かせておけばいい。
しかし、それでは問題の先送りでしかなく、また同じようなことが起きるのは確定。それでは意味がない。
だからこそ、桜木にはしっかりと実力をつけてもらう必要がある。
その上でやるべきことは成績を上げることだけではない、今後も僕達なしで出来て、やっていけるものにしないといけない。
つまり、成績を上げた後のことまで考えて動かないといけない。
よって、今回は桜木だけを見ているわけにはいけないのだ。
今回は暗躍することが多そうだな、と考えながら明日に向けて準備をするのであった。




