鮎莉と住吉の計画
土曜日の朝、セットしていた目覚ましによって起床する。
「あ、ねむ!」
時間は午前6時であり、普段ならもう3時間ぐらい遅く起きる。しかし、今日は桜木達と遊ぶ日なので早めに起きなければいけなかった。
時間的なことを言えば、もう1時間寝ていても大丈夫なのだが、昨日の自分が色々考えた末に6時に起きるべきと決めたので、もう一度寝たい気分を抑えて、立ち上がる。
どうして6時なのかは寝ぼけていることもあり、思い出せないが昨日の僕のことを信じよう。
リビングに向かうとそこには朝食を用意していた優香の姿があった。
「珍しいな、駿人兄さんがこんな時間に起きてくるなんて」
「今日は遊びの予定があるからな」
「へー、それはよかったね!ちょっと待って駿人兄さんの朝食も用意する」
「ありがとう」
それを言って、優香は朝食を作りにいく。何か変なことを考えていそうだが、今の僕は頭が回らないので放置しよう。まあ、何かあっても未来の僕がどうにかするだろう。
それに6時に起きる理由がよく分かった。優香はここ最近家事全般を出来る様に努力をしている。その意欲はとても高く、いいことだが、僕が手伝おうとすると「駿人兄さんはいいから」と言って拒絶されてしまうのが悲しいことだ。
なので、今回は優香が朝食を用意している時に起きて、朝食を作ってもらい、どれぐらい腕が上がっているのかなど確認しようとしたのだ。一石二鳥だ。
昨日の僕ナイス!
そんなことを考えていると、優香が僕の分の朝食を持ってきた。朝食は白米に焼き鮭、そして味噌汁と言ったこれぞ、和食といった感じだ。
朝からこれだけのものを料理するのは大変だろうと考えながら、僕はいつも飲んでいる薬を飲んで、朝食が置かれているところは向かう。
「「いただきます」」
そうして、僕達は朝食を食べ始める。優香の料理はとても美味しく、白米は硬すぎず、柔らかすぎないちょうどいい硬さをしており、焼き鮭は表面はパリッとしているが中身はとろける様に甘く美味しい。味噌汁もコクが出ているが、あっさりとしていて美味しい。
「美味しいな」
「ありがとう」
こうして朝食を食べ終わり、僕は自室に戻り数日前に購入した服を着る。それで最後に予定や荷物を確認して僕は家から出る。
集合場所は互いの関係上、今回遊びに行くところの最寄り駅にしてある。取り敢えず集合しやすい住吉とは乗り換えの駅で集合する予定だ。
電車に乗って集合場所に向かっていると、住吉から少し遅れるというメールが飛んでくる。
少し余裕をもって行動しているため、待ってるぞと返事をしたのだが、二人そろって遅れる理由はないと言われて、そこまで待つ理由もなかったので、一足早く僕は集合場所へと到達する。
どうやら、一番だったようで、集合場所には誰もいなかった。まあ、集合時間の20分前ぐらいに着いたので当然だろう。
僕はそこら辺の椅子に座り待つ。
それにしても今日は雲一つない快晴であり、心地よい風も吹くといった最高の天候になっている。
始めて訪れる場所で、落ち着いて休憩するもの穏やかな気持ちになって非常に気分がいい。そんな感じで待っていると聞き覚えのある声が聞こえてた。
「隅風、少し遅れてしまいましたね」
「いやいや、まだ10分まえ・・・・・・」
桜木の姿を見て、僕は言葉を詰まらせる。
桜木は青藍色のカットソー、ブルージーンズといった動きやすさを重視した服装だが、桜木の大和撫子と言った魅力をさらに引き出すと共に、大人しいイメージがあったのだが、今の姿は活発そうなイメージを連想させる。そのギャップもあり、少しドッキとしてしまう。
しかし、それを表情に出すことはしない。ただ、ここでは褒めておくことがいいと聞いた気がするので、落ち着いて褒めることにする。
「すごく似合っているよ」
「あ、、ありがとうございます。隅風も似合っています」
「ありがとう」
慣れないことを互いにしてしまったのか、次に何を話せばわからず、沈黙がその場を支配しようとしていた。しかしながら、それは第三者の声で防がれる。
「おいおい、話が違うぞ鮎莉。桜木の姿を見て見惚れる駿人の姿を見るはずが、澄ました顔をして見事に言い返しているぞ」
「おかしいな、あの葵ちゃんの姿を見れば、誰でもイチコロのはずなんだけどな」
「なんの為に、遅れるとか嘘情報を回したりと色々面倒な事をしたのに」
「いやいや、まだチャンスはあるよ。このまま二人でいれば何か起こるかもしれない!」
「何が起こるの?鮎莉ちゃん」
「そりゃ、ムフフな・・・・・・」
「へえ、ムフフなね。どういった意味があるのかもう少し教えて欲しいな?あ・ゆ・り」
「こ、こ、これには深いり、り、理由があってね?」
「深い理由があったらこんなことしていいんだ?」
「え、、、と、、、その、すいませんでした」
悪事が失敗して動揺したのか、こちらまで聞こえる音量で会話していたため、今までの悪事を全て聞いてしまった。
普段、そういったおふざけをされない桜木は思う所があったのか、ものすごい勢いで鮎莉の方へと向かって、尋問を始めた。
普段は大人しい桜木だが、大企業の娘としての貫禄を纏い、強い圧を感じさせ、鮎莉を一瞬で屈服させた。
つぎから、桜木を怒らすのはやめようと心の中で誓った。
そして、今回の悪事の相方である住吉は僕が特にする訳もなく、お咎めなしになっている。こういったことは日常茶飯事なのでもう慣れてしまった。
「もう、私だけならまだしも隅風とか他人を巻き込んじゃだめだよ!」
「はい、もうしません」
「次から気を付けてね」
「はい、重々気を付けます」
あれから数分間の説教が終わった。
「さて、丁度時間になったし、今までの事はすべて水に流して遊びにいこう」
「お前が水に流すとか言える権利ないからな」
「あははは」
何も関係ないようにいう、住吉に僕は釘を刺す。何もしないからと言いて調子に乗らせるのは非常に良くない。桜木たちからの疑いの視線もあったことから、住吉も苦笑いする。
こうして、ひと悶着あったが僕たちは無事に遊びに行くのであった。




