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お祝い会

「作戦の成功を祝って」

「「「「乾杯」」」」


 鮎莉の掛け声と共に僕達は手にとっていた飲み物を飲む。


 作戦の成功を桜木から聞いた僕達は、現在部室で作戦成功祝いをしていた。


「いや、本当にうまくいってよかったよー!」

「うん、本当に嬉しい。」


 桜木と鮎莉は今回の結果が本当に嬉しいらしく、いつもはあざとがったり、おとなしいはずの2人が笑い合ってとても楽しそうに喋っている。


 その様子は普段から2人を知っているものからしたら、そのギャップのインパクトはすごいらしく、2人がいつもとは違い楽しそうにしているという情報が一瞬で学校中に広まり。


 その姿を一目見ようと桜木のクラスに人が集まり凄いことになっていた。その熱は部活の時間になっても冷めることを知らず、僕が急遽、人を撒くための作戦を考えさせられる羽目にまでなっている。


 当人たちはそんなことは何も気にしていないらしく、いきなり僕に作戦を考えてと連絡した上、買いたいものがあるからこの場所を通るようにしてとか条件をつけてくるぐらい、この状況を楽しんでいる。


 それに対して僕達は、桜木の変化について推理する奴らから、人生相談部という答えに辿り着かないように手を回したりと色々大変であった。


 ここ、人生相談部は元々隠し事が多い上に、僕や住吉といった癖のある人の居心地のいい休憩所という役割もあり、何しろ現在は桜木の件も抱えている。


 なので、人が増えたり注目されると言ったことは非常に不都合であり、全力で隠蔽する必要があった。それも僕1人である。


 みんなが楽しんでいる中、1人今後のことを考えて後処理をする。部長という上の立場からこその闇を見たような気がする。


 ちなみに、この件については僕達は4人とこの部活の担当先生しか知らない。


 そんな感じで、月曜日の朝からいろいろあって大変である。


 ちなみに、住吉は漫画を見ながら鮎莉と住吉が何処からか出してきたお菓子を食べている。


 ここ最近は自分が把握していないものがどんどん増え続けている。住吉のお菓子もそうだが、特に鮎莉の私物がだんだん多くなってきている。


 保管場所なども勝手に用意しているし、この部活の私物化が確実に進んでいる。そのうち勝手に自分のスペースなどを作り出そうな勢いである。


 そんな感じで、みんなが楽しんでいる中、部活の行く末がどうなるのか考えていると、桜木が立って僕達を見てくる。


「みんな、今回は私を助けてくれてありがとう。私だけだったら決して出来なかった。本当にありがとう」

「当たり前のことをしただけだよ」

「やると約束したからな」

「・・・・・・」


 桜木のありがとうの言葉に鮎莉や住吉はすぐに返事を返すが、僕はなんて答えればいいのか分からず、黙ってしまう。


 お礼をされる時、いつもこうなってしまう。僕にとってはお礼をされるほどの事はしていないと考えている。だからこそ、返す言葉に困る。まあ、今回は鮎莉や住吉がいるので返事をしなくとも流れで何とかなるだろと思っていた。


 しかし、桜木がこちらに視線を向けて続けている。どうしてか、それは僕が何も反応しなかったことが原因だとすぐに察する。


 このまま、返事をしないでおいても特に問題はない。僕はお礼された側であった、何か言葉を返す必要はない。桜木も何も返事をしないからといってどうこうするわけがない。


 しかし、本当にそれでいいのだろか?少なからず、僕は桜木について人よりも少し詳しく知っている。


 桜木が家族とは上手く言っていない事。それ理由は社長の娘という重圧に押しつぶされようとなっていること。誰よりも認められたいと思っていること。なにより桜木は孤独であった。


 桜木は孤独に慣れてしまっている。桜木は見てくれない悲しみを知っている。些細な事かも知れないが、ようやく、孤独では無くなろうとしているならば、その後押しをしないといけないな。


 僕は少しだけ言葉を考える。適当の返事では不誠実だ。僕なりにしっかりと返さないと。


「お疲れさま。だが、まだゴールではないからこれからも一緒に頑張ろう」

「はい!これからもよろしくお願いします」


 僕の返事に桜木は嬉しそうに答える。どうやら、上手く言ったようだ。こういった真面目な意見はダメだと、以前住吉から言われていて心配だったが杞憂だったようだ。


「真面目だね、隅風君は」

「それがあいつのいい所でもあるしな」


 その様子を見ていた二人は何か納得したような表情になっている。


 取り敢えずはひと段落と言った感じだ。その後はみんなで他愛のない雑談をしていた。


 お菓子などが無くなろうとした時、僕は思い出したように言った。


「そう言えば、上手く言ったら遊びに行くと約束していたけど、どうする?」


 その言葉を聞いた三人はそう言えばと言った感じの表情をする。もしかしなくとも、忘れていたのだろう。


「私ともあろう人間がこんな大切なことを忘れているなんて」


 鮎莉は膝から崩れ落ちる。


「わたし、うれしすぎて忘れてたよ」

「普通に忘れてた」

「普通に忘れてたのかよ!」


 テーブルに捨てられているゴミなどを片付けながら僕は呆れたように言う。


「こうしてはいられません!今すぐ決めますよ!」

「桜木の事になると鮎莉はキャラ崩壊するよな」


 鮎莉はすぐにホワイトボートなどの用意をする。その様子を見ていた住吉は呆れたように言う。それに対して、僕と桜木は苦笑いしかできなかった。


 こうして、遊び会議は始まるのであった。




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