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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第2章 自由を獲得するために
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対策会議

「それで、目標が決まったのはいいが、これからどうするつもりだ?」


 住吉が今後の方針を聞いてくる。


「逆に聞くが、みんなはどうしたらいいと思う?」

「まずは、時間の問題をどうにかしないといけない」

「私もそう思う」

「俺もだ」


 僕の質問に桜木が答え、佐多利と住吉も同意する。


「そう、まずは急いで時間制限をどうにかしないといけない。何かするにしても僕たちがこうやって集合することは必要だ。」

「しかし、どうやるの?葵ちゃんの話だと交渉の余地がないように思えたよ?」

「それはどうかと思うぞ」

「どういうこと?」


 佐多利の意見に僕は反論する。


「別に部活を続けようとしなくてもいいんだよ」

「それはどういう意味?」

「部活を続けるという理由はあくまで、自由な時間を確保するための手段に過ぎない。目的は自由な時間を確保する事であり、手段は何でもいいんだ。なら、部活を続けるという、やりにくい手段を使う必要は一切ない。もっと都合のいい理由を考えて交渉すればいい。」

「確かに!」


 僕の説明に、佐多利は盲点だった言わんばかりに驚く。


 目的と手段はよく一緒になりがちだ。だが、何事もしっかりと細分化することは大切だ。


 大きいことから出来ないなら、小さいことから、そのスタンスはとても大切だ。だからこそ、物事の構成要素をしっかりと区別して考える。そうすれば、見えてくるものがある。


「問題はその理由をどうするかだな?」


 住吉はしっかりと物事の核心をついてくる。


「確かに、部活動を続けるといった。少し無理のある理由からは変えられるからいいかも知れないが、根本的に相手が納得する理由が用意出来ないと意味がないぞ?」

「住吉の言いたいことはよく分かる。しっかりと納得できる理由を用意しないといけない。」

「何か当てがあるのか?」


 住吉は矢継ぎ早に聞いてくる。少しぐらいは自分で考えろよと思うが、自分の考えもまだ憶測の域を出ていないので、保険として考えてもらおう。


「当てはあるが、今は言えない」

「どうしてだ?」

「まだ、憶測の段階で確信に至れていない。だから、もしダメだったようで保険を掛けておく必要がある。だから、僕の意見で変な固定概念が生まれてほしくないんだ。幅広い考え方で取り組みたい」

「はあ、駿人のその慎重なところ。役には立つがめんどくさいよな」


 僕の意見に頭では理解できたが、納得はいかないようで少々複雑な表情をする。


 たまには考えることもしたほうがいいと、僕は思う。毎回、こんな役回りするのも大変だしな。


「私たちはなにをすればいいですか?」

「現在は情報が不足している。だから、桜木にはいくつかの質問をしたい。いいか?」

「はい、よろしくお願いします。」

「佐多利さんは、住吉と一緒に理由を考えてくれ。案はいくらあってもいいからな」

「了解しまし。あと佐多利さんでは堅苦しいから鮎莉でいいよ」

「分かった」


 僕はテキパキと指示を出す。こういったことをするのも久しぶりだ。


「それでいくつか質問していいかな?」

「全然いいよ」

「まず最初に、来週にはと言っていたが、そうなる根拠を教えてほしい。」

「私の家は、仕事の関係上家族みんなで集まることはないの。だから、お父さんは週一で必ず家族みんなが集まるように決めてるの、基本的には、家族で食事を食べながら、最近何があったか話して、解散になるんだけど、習い事などの重要な話については別に時間が用意するの。」

「食事の時にそう言ったことについては話し合わないのか?そうすれば、別で時間を用意する必要はないだろう。」

「別に時間を用意するのは、家族そろっての食事をする時ぐらい、気楽に話したいからとお父さんが決めたから」

「なるほど、随分と厳格と言ったらいいのか、しっかりとしているね」


 桜木の家庭は、かなり厳しいらしい。プライベートと仕事の時をはっきりと分けている。こういうことをすると言うことは、日常生活から人の上に立つ立場にいる可能性が高いな。それも相当上の方だ。


 食事の話といい、ここは父としているべき所を作って、父としての姿と、社会人としての立場を子でもわかりやすく使い分けているのだろう。


「お父さんは社長だから。こういったことには厳しいんだよ」

「社長か、大変そうだな」


 こちらの予想通り、桜木の父は社長という立場だった。それも凄腕の人だろう。桜木から聞いた父の行動は、しっかりと物事を見据えて動いている印象を受ける。


 そこから考えるに、適当な理由を並べては弾かれるのが目に見えている。しっかりと、利益もしくは可能性を提示しなければ話にもならないだろう。


「それじゃ、部活関係の話については今週にある家族会議で行われると言うことでいいのかな?」

「それでいいと思う。」


 桜木が戦うべき戦場は判明した。では次にそこの情報を明らかにしていこう。


「その家族会議では、誰が参加する?」

「私、母、父、お兄さんの4人と、父と母の秘書が一人づつの計6人だと思う」

「秘書も参加するのか、というか母も秘書がいるのか」


 桜木の話を聞いて驚く。これはもうガチの会議ではないか。


「そうだよ、習い事のお金は父が払っているから、厳密に決めないといけないの。それにお母さんも現役で働いているか秘書がついてるの」

「なるほどね」


 会議に参加するメンバーは分かった。次に必要なのは各メンバーの性格や思考を知る必要がある。


「桜木からみた、その5人の印象を教えて欲しい。」

「お父さんは、厳しく、そして優しい人だと思います。社長としてのいる時は、家族であっても一人の社会人として対応し、個人的な感情を優先せず、全体を考えて決断をします。父としている時は些細な事でも喜んだりと、私たち家族の事をしっかり見てくれます。」


 聞いた感じだと、立派な人だと思う。


「お母さんは、真っ直ぐでちょっと不器用な人だと思います。約束したことは必ず果たそうとしてくれます。一度決めたら、それに何処までそれに一直線、ただ、一直線すぎて他が見えなくなることが多々ありますが、そう言った時は秘書さんをはじめ、周囲の人がしっかり言えべ、それをしっかりと聞いてくれます」


 桜木の感じから、母を恨んではいないと言うことが分かる。母の行動理由を分かるからこそ止めにくいといった感じだと思う。そして、桜木母の秘書は暴走したところを止めに入ることができる人物なのだろう。


「兄さんについては分かることは少ないです。兄さんは、私と比べものにならないほど優秀で、性格や態度はお父さんに似ています。周囲からは次期社長として期待されます。兄さんはあまりこちらに関わろとしてきませんので、これ以上の事は分かりません。後は父の秘書についてもあまり関わりがないのでよく分かりません。」

「分かった、ありがとう」


 僕は現在の得ることができた情報を頭の中で整理する。そして、どのように交渉するかその算段を頭の中で急速に構築していく。


 そして僕は思う。これならいけると。


「住吉、鮎莉。何かいい案は出たか?」

「こっちはお手上げだ」

「こう言ったこと苦手なんだよね」


 特にいい案を出すことは出来なかったらしい。まあ、それは仕方ない。交渉事なんて相手も真剣にならない限り早々しないものだ。


「わかった。ある程度行ける算段が付いたから、それを話すからこちらに来てくれ」


 住吉と鮎莉はこちらに来る。


 僕は、そこで考えてい事をみんなに伝える。


「なるほど、これならいけるかもしれません」

「そこまでする必要はあるのか?」

「葵ちゃんの家はかなり厳しいからね、それぐらいしないと無理だよ」

「そういうものなのか」


 僕の考えを聞いたみんなはそれぞれの意見を言う。その後、いくつかの質問を受け答えして概ね僕の意見にみんなが納得した。


「よし、みんなの納得も得たことだし、残り数日は詰めの作業にする。また明日もよろしく」

「分かりました」

「了解ー」

「分かった」


 気が付けば、外も大分暗くなっていた。久しぶりに時間を忘れて何かに取り組んだ気がする。


 みんなを見れば、これからどうするかなどを話し合っている。怠惰な日々のいいが、こうやってみんなで取り組んでいくのも悪くないと思いながら、今日の会議も終わりにするのであった。



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