表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対恋愛しない拗らせ男子の青春  作者: 野良うさぎ(うさこ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/25

恋愛? 人生で1番大切じゃない?


 ドアをノックする音が聞こえる。


「お兄ちゃん入るよ! 起きてる……」


 妹の栞が部屋に入ってきた。


 僕は制服に着替えながら栞に挨拶をした。


「おはよう。今日から同じ学園だね。栞も頑張ったね」


 僕は栞の頭を撫でてあげた。


「へへ……だってお兄ちゃんと一緒の学園に通いたかったんだもん」


「そっか……」


 栞はあのあと学園の編入試験を受けた。


 7名家のトップである黒井家が滅びたと同時に、新堂家が名家を牛耳る事になった。


 あの試験の時に退学者が大量に出た。

 その穴埋めで、大量の編入者を募集することになったらしい。



「ご飯たべよ!」


 僕は栞に促され、リビングに向かう事にした。


 リビングには父さんと母さんと……美心が座っていた。


「あら、一緒に来たのね、おはよう」


「おう」


「……栞さん、ちょっと慶太と距離が近いの」


 栞が僕の腕に抱きついてきた。


「へへ、だってまだ結婚してないからいいじゃん! 結婚したら美心さんが独り占めするんだからさ!」


「ひ、独り占め……なの……」


 美心が妄想して赤くなる。


 僕は美心の頭をポンポンした。


「美心、大丈夫だよ。僕は美心だけの物だよ」


「う、うん……嬉しいの」


 母さんと父さんが生暖かい目で見てくる。


「……初々しいな」


「あら、私達もあんな感じだったわよ? ……ただね……父さんはちょっと女の子とフラグ立てすぎでしたね……」


 喧嘩は止めて!




 僕らはリミット試験のせいでパグポメ家が壊された。

 だから一度実家に帰る事にした。

 もちろん美心は僕らの新しい家族だ。

 美心も僕らの家に住むことになった。


 学園を卒業したら僕らは結婚をする。

 二人とポメ子とパグ太と一緒にのんびり住もうと思っている。


 今から楽しみに準備をしている最中だ。



「わふんわふん!」

「ばうばう!」


 ポメ子とパグ太が僕と美心の周りを駆け回る。

 頭を撫でたりお腹をさすってあげた。


 この2匹も晴れて恋人同士になったみたいだ。


 ポメ子がパグ太のそばを離れない。


 パグ太はそんなポメ子をペロペロしてあげる。


 ポメ子のお腹が少し大きい。


 美心はポメ子のお腹を触った。


「……おっきくなってるの。ここから新しい命が生まれるってすごいの」


「そうだね……きっと可愛い子が生まれるよ」


 ポメ子は当たり前だって言うように吠えた。


「わふんわふん!!」







 栞は編入手続きがあるから先に登校をした。


 僕らは二人っきりで登校する。


 美心と一緒に歩くと、いつも見ている町並みが特別に見える。


 初めて散歩道であった時はお互い無視しようとしていたね。


 懐かしいな。




 地味男と地味子。




 手を繋いでいる美心が僕に問いかけた。


「……慶太。私は幸せすぎて怖いの……この幸せが幻だったらと思うと……」


 美心は傷つき過ぎた。

 黒井家での美心の扱いは酷すぎた。


 だから美心はもう一度やり直せばいい。

 美心が笑って居られる場所を作る。


 僕はそう決めた。


「大丈夫。僕がいるから……どんな事があっても美心を幸せにするよ」


「慶太……」





 学園に近づくとどんどん生徒が増えてくる。


 ミチルが遠くから駆け寄って来た。


「せんぱーい! おはよーございます! 今日のミチルは一味違います! なんと、制服の下はノーブラです! 新しい戦術です! どうですか? 触りますか!」


 美心がミチルの頭を押さえた。


「ミチル。女子はもっとおしとやかになるの」


「……は、はい」


 意外と仲良くやってるよね。

 ……ノーブラなんて気にならないよ!


 僕はなるべくミチルの胸元を見ない様に3人で一緒に登校した。




 ミチルは家を出た。

 そして父さんの会社? に入った。ようは新堂家の一員のようなものだ。

 存外優秀らしく、父さんのお気に入りとなっている。


 ……流石に父さんでも女子高生はハーレムの対象外みたいだ。







 ミチルとは途中で分かれて、自分の教室に入ると、クラスメイトが声をかけてくれた。


「おはーー!」

「む、新堂氏、おはようでござる」

「おっす、今日も一緒に登校か! このリア充め!」



 あの時、僕の敵にならなかったクラスメイトだ。

 だけど、家の命令で仕方なく敵対したクラスメイトもここにいる。

 お金に惑わされた生徒だけが退学となった。


 僕はクラスメイトに挨拶をかわすと、京子と神埼さんが近づいてきた。


 神埼さんはあの時の戦いで一皮剥けたようで、自分の意見をはっきり言えるようになった。


「新堂くんおはよーー! 今日もかっこいいね! ねえねえ、今日だよね? 妹さんが編入してくるの? ミチルちゃんと同じクラスになれば面白いね!」



 京子は呆れた表情をしていた。

 でも、毒気が無くて、友愛を感じさせる。


「あんたね……いきなりかっこいいだなんて、こいつが調子に乗っちゃうよ! ま、まあ、かっこいいのは元から知ってるけどね」


 昔の僕だったら冷たい言葉をかけていたかも知れない。

 うるさい。知らない。興味ない。


 冷たい言葉は人の心を傷つける。

 そんな言葉はもう二度と使わないと心に誓った。


「はは、二人ともありがとね……でも、美心が一番可愛いよ!」


 二人は同時にため息を吐いた。



「「はぁ……」」


「無理やり美心ちゃんの話しにもってかないでね!」


「全くだわ。でも新堂は昔から一途だったからしょうがないわね……」


「あ、それ惚気だ! ムカつく!」


「うるさいわね! あんただって今は新堂と仲良くしてるでしょ!」


 二人は仲良く言い争いをしているので、僕と美心は自分の席に着いた。





 三枝先生が現れる。


「おはよう! 来週は月中間試験だよ! みんな勉強した? その後は定期ランク試験! 誰が一位になるかな! 先生は今夜は合コンだからウキウキだよ!」


 三枝家は新堂家の傘下に入った。

 先生は現当主で、父さんラブだから仕方ないよね。


 うちの周辺でよく先生を見かける……

 師匠と鉢合わせしなければいいけど……


 ちなみに、会長は三枝先生の元で修行をしているらしい。






 僕と美心は屋上でいつも通りご飯を食べる。


 やっぱりここが1番落ち着く……


 美心は僕にはお弁当を食べさせてくれる。


「け、慶太、卵焼きなの……」


「あ、ありがと……」


 カチカチに固まった僕らの昼食の時間がゆっくりと過ぎていく。


 昼食を食べたあとはいつもの日向ぼっこの時間だ。


 美心が僕の胸に顔を埋めながらうつらうつらしている。


 僕は優しく美心を撫でる。




 地味子って呼んでいた時が懐かしいな。


 意外と呼びやすくて良かったよね。


 僕は拗らせていたんだな。


 孤高を貫く地味子が特別に見えたんだろうな。




 僕は地味子のおかげで素直になれたんだよな。


 ――ありがとう。


 恋ってすごいね。


 人を変えてしまうんだね。


 僕は地味子の顔を見つめる。


 ――ポメ子よりも可愛いよ。



 僕はいつもポメ子の額をキスするように、地味子の額を軽くキスをした。


「はう!?」


「え、起きてたの!」


 とんだ狸寝入りだ!


 地味子は真っ赤な顔して僕に抗議してきた。


「……せっかく唇にキスをしてくれるかと思ったのに……額なの……ヘタレなの……」


 言葉とは裏腹に僕にしなだれかかる地味子。


 ――僕たちはこの速度でいい。







 地味子が僕の不意をついてほっぺたにキスをしてきた。

 僕は驚きで固まってしまった。


 地味子は照れながら笑いかけた。





「へへ、ずっと一緒なの。地味男の新堂慶太!」





 僕はお返しに唇にキスをした。


 ヘタレなんかじゃない。大切過ぎて、どうしていいかわからないだけだ!




「!?」



 地味子は一瞬驚いた顔をしたけど、目が潤んで泣きそうな顔になっていた。


 僕らは唇を離す。



「いつまでも一緒だよ。世界一可愛い地味子の新堂美心!」



 僕の拗れた青春が徐々に溶けていくのが分かった。







 絶対恋愛しない拗らせ男子の青春 (完)




完結まで読んで下さってありがとうございます。


数話目からランキングとptを見ないようにしていたので、自分の状況が全くわかりません……

応援ありがとうございます。


少し邪道な恋愛でしたので、賛否がわかれそうですね……

バトルいらないよ!って方も多いと思いますし(推測)


今回も色々勉強になりました。


次回に繋げるために、作品の評価をつけて頂けたら今後の参考になります。

よろしくお願いします。


ここまで読んで下さって本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ