医師と助産師確保
「ハルト様。少しお話があります」
創造神様たちが神界に戻った後、屋敷を歩いていたらティナが話しかけてきた。
「どうしたの?」
「先ほど急に身体が輝いて。なんだかものすごく身体の調子が良くなって、なんでもできるような全能感に満たされました。それでステータスを確認してみたら、創造神様から頂いた祝福が……。か、加護になっていたんです!」
そう言いながら俺にステータスボードを開いて見せてくれる。
ステータス
名前:ティナ=エルノール
種族:ハーフエルフ
加護:創造神の加護、勇者の血を引く者
職業:魔法剣士(レベル300)
技能:メイド(極)
「おぉ! ほんとに加護になってる」
「この世界最高の加護と言っていいでしょう。しかも私だけではなく、マイさんとメイさん、それからエルミアさんも加護を受け取っていました」
ちゃんとマイたちも加護にしてもらえたようだ。良かった。
「創造神様から祝福を頂けたことでも恐れ多いのに、加護まで……。いったい何があったのか、ご存じですか?」
「実は、ティナたちの安産祈願をどの神様にすればいいか、海神様に相談したの」
「海神様ですか? 確かに今日は新鮮な魚介類を届けに来てくださっていましたね」
「で、海神様が『俺でいける』って言うからお願いしようとしたら、地神様と空神様が出てきた。『自分たちの加護でも大丈夫だ』って」
ちょっとこの辺りから意味が分からなくなってきたようで、ティナが唖然とし始めた。そりゃそうだよね。この世界最高の神様たちが競い合うようにして自ら進んで加護をくれようとしてくるんだから。
「誰がティナたちに安産祈願の加護を与えるか話し合ってたところに創造神様が現れてですね。『祝福を加護にグレードアップしておいた』って。俺の前に顕現した時には既に実行された後だったらしい」
「そ、そう、だったんですね」
「そんなわけだから、次に創造神様が来られた時に皆でお礼をしよう」
「承知致しました。全力でおもてなし致します」
この世界を創った神様が目の前に現れてくださるってのは本当に凄いことだ。でもこの屋敷には二か月に一度くらい創造神様が遊びに来る。中庭で神獣のシロを撫でながら日向ぼっこして数時間過ごし、ティナの食事を食べて帰っていく。食事の時に、困りごとはないかって、いつも聞いてくださる。それが習慣となっていた。
改めて考えるとヤバいな。
何があっても大丈夫だって思える。
でも神様に頼り切りってのもダメだろう。自分で努力しない人を神様は助けてくれないって言うしな。よし、まず神頼みは終わった。ここからはティナたちが安心して子どもを産めるような環境づくりを始めよう。
──***──
その日の夕方。
「そんな感じで、安産祈願はしておきました」
夕食の席に集まったエルノール家の全員に、ティナたちの祝福が加護に変わったことを報告した。この場にはルークやリューシンたちもいる。
「「ありがとうございます!」」
「わ、私なんかが創造神様の加護をもらって良かったのか? 私より、ずっと創造神様にお祈りしているセイラにも……」
「ご安心ください、エルミア。実は私も今回、祝福を加護にしていただいています」
そうなんだ。それは知らなかった。
創造神様、椀飯振舞すぎませんか?
「とりあえず神頼みは終わったってことです」
「神様が普通にこの屋敷の中を歩いてるし、困ってることはないかっていつも聞いてくれるから普通に感じちゃうけど……。実際、凄いことなんだよな」
「俺もルークに同意する。たまに見るけど、創造神様がこの屋敷の庭で昼寝してるのはヤバいだろ。ただまぁ、それにも慣れてきたが」
ルークやリューシン、それからリエルやヒナタも初めは騒いでいたが、今は順応してきた。
「神頼みが済んだのなら、次はどうするにゃ?」
「安産に効果があるとされる魔具や神具でも収集しますか?」
「元魔王のシトリーさんなら、強力な魔具の在処も知って良そうですね。妾もいくつか心当たりがあります」
「キキョウたちが言うように、お産を補助するアイテムの収集もしたいな。でもそれより先に、医師や助産師を探そうと思う。できればこの屋敷に住み込みで働いてもらえるヒトだと良いな」
「医者ならセイラで良いだろ。私はセイラが良い」
迷いがないエルミア。
「セイラは大丈夫そう?」
「はい。二百年も聖女をやって来たんです。お産の手伝いも何百回とやって来ました。ハルト様とエルミアの子を取り上げるのは私にお任せください」
「わかった。よろしくね」
エルミアの担当医はセイラで決定。
「「私たちはお母さまが来てくれることになっています」」
マイとメイは精霊だ。人化しているとはいえ、人族の出産とは違うらしい。そもそも精霊がお腹に子を宿すことがかなり珍しく、対応できるのが精霊界でも数体の精霊しかいないらしい。
その数少ない精霊の出産に対応可能な精霊がマイとメイの母親だという。
「そうなんだ。もし必要なものがあるって分かったら教えてね。手伝えそうな人も追加で探すから」
「「はい。よろしくお願いします!」」
「私もドラゴノイドですので、お母様に頼もうかと」
リュカもマイたちと同じ理由で同族の女性を何名か呼ぶ予定だという。
「安産に良いって聞く香木をとってくる」
「私も行ってきますね」
リューシンとヒナタは竜人族がお産の時に使うレアな香木を確保しに行ってくれた。リラックス効果があるらしい。
残るはティナか。
本当ならリュカかセイラにお願いしたかった。
死者蘇生すら可能な最高クラスの回復職はこの世界に二つある。『聖女』と『竜の巫女』だ。聖女のセイラがエルミアを担当してくれるなら、竜の巫女であるリュカにティナを見てほしいと思っていた。
リュカも出産予定だから無理はさせられない。
まぁ、俺が回復魔法を使えるしアカリやシトリーもいる。
それにセイラだって同じ屋敷にいるんだ。
懸念があるとすれば──
「優秀な助産師さんがいてくれると心強いんだけどな」
「ハルト様、ご心配なく。サリオンが助産経験のあるエルフたちを何人か連れて来てくれます」
「そうなんだ、良かった」
問題はなさそうだ。
こうして、ほとんど身内だけで医師と助産師の確保が終了した。




