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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第七章 聖都と聖女と創造神

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悪魔の目的

【前回のあらすじ】

・聖女と聖女候補、女騎士が監禁される

・エルミアだけ立った状態で拘束

・イフェル公爵は悪魔グシオンだった

 

「どうなっている……なぜ悪魔がこの聖都にいられるんだ? ほ、本物のイフェル公爵をどこにやった!?」


 エルミアは現在、魔法の使用はできなかったが、自身の周りを満たす聖なる結界の存在は感じることができた。


 聖都サンクタムで生まれて十八年間、ずっと身近に感じていた聖都を覆う聖結界の魔力──つまり、彼女が囚われているここは、聖都の内部だということだ。


 魔人を消滅させる聖結界内部に、魔人より上位の存在である悪魔がいたのだ。


 彼女は目の前のこの状況を信じられなかった。


「ほう、ここが聖都内部だということには気付いたのか。なかなかやるではないか、褒美に貴様の質問に答えてやろう。まず、公爵の件だが……私が本物のイフェルだ」


「なに?」


 そんなことあっていいわけがない。

 ここは創造神の御膝元──聖都サンクタムだ。


 この世界で最も悪魔と縁遠い場所なのだ。

 そこの統治者であるイフェル公爵が、悪魔だったなどと信じられるわけがない。


「千年だ」

「──は?」


「この聖都に入り込み、この座につくまで、千年かかった。悪魔である私にとって、千年など瞬きの時間ほどでしかないが、かなり苦労した」


 千年前、邪神から聖都を堕とせと指示を受けたグシオンは悩んだ。配下の魔人をいくら差し向けても、聖都の聖結界はその魔人たちの侵入を許しはしなかったからだ。


 そこで彼はまず、聖結界の維持を担う聖女を手中に収めることにした。聖女を捕らえて洗脳し、結界の維持をさせなければ、聖都など簡単に陥落させられると考えた。


 しかし、聖女が聖都から出たタイミングで配下の魔人に何度か襲わせたが、創造神の加護を一身に受ける聖女は、毎回なんらかの幸運でその難を逃れていた。


 ある時は突然勇者が現れ、魔人を倒した。


 ある時はどこからか飛んできた光の槍に貫かれ、聖女を襲っていた魔人が消滅した。


 またある時は突然聖女が聖都に転移して、その身体に触れていた魔人も聖結界内部に連れ込まれ、一瞬で浄化された。



 幸運など生ぬるい。


 創造神が常に聖女を見守っていて、グシオン配下の魔人を排除しているのではないかと思えるほど、彼の計画は進まなかった。


 グシオンは聖女を直接狙うことを諦めた。


 もっと時間をかけて、手間をかけて、搦め手で聖都を堕とす計画を立てた。



 その計画とは──


 グシオン自らが聖都内部に入り込むというものだった。


 彼は人族の女を犯し、子を孕ませるとその子に己自身を転生させた。そして身体が成長すると、同じように人族の女を犯してその子供に転生した。


 それを五百年繰り返した。


 人族への転生を繰り返すうち、彼の肉体や魂からは次第に魔の因子が薄れていった。


 魔の因子がいくら薄れようとも、彼は邪神の配下であり続けた。常に聖都を堕とすことを考え続けたのだ。


 そしてついに、聖結界に弾かれない肉体を手に入れた。しかし、グシオンはそこで満足しなかった。彼の計画を進めるためには、聖都に入るだけでは意味がない。


 聖都に入り込んだ悪魔は、同じように転生を繰り返した。今度は女の身体で生まれ、その身体が成長すると身分の高い家の男に取り入った。


 悪魔として長く生きてきたグシオンにとって、魔力操作は呼吸ほど容易く、自身の容姿を弄ることも可能だった。


 そうして少しずつ身分の高い家に入り込んでいき、五十年ほど前、ついにこのサンクタムを統治するイフェル公爵家の当主の妻になった。


 当主との間に男の子を成すと、これまでと同じようにその子に転生した。


 それが今のイフェル公爵だ。

 彼は生まれながらにして悪魔グシオンであった。


「ばかな、そんなこと──」

「できるわけない──か? だが、私は実際にここにいる」


 グシオンは確かに、この聖都に存在した。


 魔力操作の技術や魔力量は悪魔のままに、聖結界から拒絶されない肉体と魂、そしてサンクタムの統治者という地位を手に入れていたのだ。


 聖結界に弾かれないので創造神ですら、グシオンの存在に気付くことができない。


「明日、私の計画がついに完成する」

「あ、明日? ──っ、まさか!?」


 エルミアはグシオンの言った言葉の意味を理解した。


 セイラが聖女候補として相応しいと判断したのはイーシャだけだが、今週十六歳の誕生日を迎える聖女候補はもうひとりいた。


 それが、イフェル公爵の娘だ。

 その娘は明日、十六歳の誕生日を迎える。


 彼女は聖女になる上で必要な能力は全て兼ね備えていた──いや、能力だけで言えばイーシャを上回っていた。


 しかし創造神への忠誠心という点で、他のどの聖女候補たちより劣っていたため、セイラはイフェル公爵の娘を洗礼しようとはしなかった。


 創造神への忠誠心がなくて当然だ。

 悪魔であるグシオンの魂が半分入り込んでいたのだから。


 グシオンは己の半身でもある娘を、新たな聖女の座につけようとしている。


 それが意味すること、それは──


「聖都は明日、壊滅する」


「──なっ!?」


「聖結界を解除されたここに十の魔人、そして千の魔物が押し寄せるのだ。防ぐ術などない」


 サンクタムは魔人すら拒む聖結界によって守護されているので、防衛戦力はそこまで多くはない。


 五十人ほどの聖騎士がいるとはいえ、十人の聖騎士で魔人一体を足止めできるかどうか。


 それほどまでに、魔人という存在は脅威であった。


 絶望と恐怖でエルミアの顔が引き攣る。

 それを見て、グシオンは笑った。


「素晴らしい。実に良い絶望の顔だ。千年も耐えてきた甲斐があった。明日はこのサンクタムにいる全てのものたちが皆、そんな表情をしてくれるのだろうな。きっと邪神様もお喜びになるだろう」


 グシオンはそう言ってエルミアに背を向け、扉から外に出た。彼と入れ替わりで、目が虚ろな神官がふたり入ってきた。


 いくら魔の因子が薄れても、グシオンは聖女に触れられなかった。この聖都を覆う聖結界より、聖女を護る結界の方が高度なものであった。


 聖女に対してわずかでも邪念を持つ者は、聖女に触れることはできない。


 そこで神官を洗脳し、彼らにセイラを誘拐させたのだ。聖都の神事を取り纏める五人の神官は全員、グシオンに洗脳されていた。


 神官がそれぞれセイラとイーシャを抱き上げ、部屋から出ていこうとする。


「まて! セイラ様をどうするつもりだ!?」


「安心しろ、殺したりはしない。コイツを無理やり殺しても、創造神に俺の存在がバレるだけだからな」


 聖女を殺しても聖結界が解除されるわけではない。グシオンは一度だけ聖女の暗殺に成功したことがあるが、その時は次の聖女が決まるまでの数日間、聖結界が消えることはなかった。


 聖女が突然死んだ場合、大神殿のクリスタルに貯められている魔力が自動で消費され、次の聖女が決まるまでの間、聖結界を維持するようになっている。


 聖女を殺したところで、聖結界が消えるわけではないのだ。また、聖結界を発動しているクリスタルは、さらに強力な力で護られており、グシオンが悪魔本来の力を出したとしても破壊は不可能であった。


 だからこそ、グシオンは自分の娘を聖女にして、彼女に聖結界を解除させるという非常に面倒な手段を取らざるを得なかった。


 グシオンがイフェル公爵として、この聖都の統治者になったのも、聖女候補のひとりとして己の半身を潜り込ませるために都合がよかったからだ。


「聖女は洗脳して、私の娘の洗礼をしてもらう。こちらの聖女候補の娘には足りない聖力を補うための生贄になってもらう。私は聖域に行けないからな」


「や、やめろ!」


 セイラとイーシャを連れていこうとする神官たちを止めるため、エルミアが拘束を強引に破壊しようとするが、彼女の手足に付けられた魔鋼鉄製の拘束具はビクともしなかった。


「大人しくしておけ、そうすれば殺しはしない。今はまだ、な──」


 ニタリと、グシオンの顔がいやらしく歪む。


「毎回毎回、俺の配下を殺しやがって……貴様はこの手で、最大の絶望と恐怖を与えながら殺してやる」


 グシオンから放たれた殺気が、聖鎧を剥ぎ取られ、魔力の放出もできない無防備なエルミアに突き刺さった。


 身体が震えて足に力が入らず、全体重が脱臼している両肩にかかって痛みが走る。恐怖と痛みで顔を歪めるエルミアを、グシオンは笑って見ていた。


「貴様を殺るのは聖都を堕とした後の楽しみにしておこう。用済みになった聖女と共に、たっぷり遊んでやる」


 そう言い残し、悪魔は部屋から出ていった。



 全て順調だ。

 なにせ千年かけてここまできたのだ。


 邪神にとって目障りな聖都を陥落させ、魔人を倒せる戦力である聖女も殺す。


 さらに聖都を魔物に襲わせることで、住人の恐怖や絶望といった負のエネルギーを邪神に捧げることができる。


 聖結界に護られていると油断している人々が、結界が消えたと気付いた時の様子を想像して、グシオンは笑みを浮かべた。



 ただ、グシオンにはひとつ、計画を進めるうえで気になることがあった。


 昨日、聖女を襲わせた配下の魔人二体が、何者かに倒されたのだ。その魔人を倒したヤツらが今、この聖都に滞在している。


 配下の魔人が倒されたということは、魂の繋がりから感じ取れた。そして、その倒したのが誰なのかは()()()()聞いた。


「あの賢者、ハルトとかいったか……アイツだけは私が相手せねばならんかもしれんな」


 少なくない犠牲を払いながらここまできたのだ。今更計画を先延ばしにする気はない。己の半身を聖女にできるタイミングは今しかないのだ。


 彼の配下の魔人が残り十体になったとはいえ、ひとつの都市を蹂躙するのにそれだけの魔人がいれば戦力として十分すぎる。


 問題の賢者は魔人を倒すほど強いが、所詮ただの人族だ。悪魔である己が相手をすれば問題ない──そう、グシオンは考えていた。



 悪魔の計画は完璧だった。

 事実、創造神すらグシオンの存在に気づいていなかったのだから。


 もしかしたら、聖都は悪魔の手に落ちていたかもしれない。



 邪神の呪いを受けた賢者とその家族が、たまたま聖都を訪れていなければ──


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