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観察記録。目標1日1ページ   作者: 青パンダ
~1章~
2/9

何故かペア組んでる

やっとの二話目。

進んでるようで進んでない内容。

 木々に芽吹く緑を眺めていると、視界の隅には楽しそうにに野原を駆け回る同級生たちが入ってくる。一体その元気の源はなんなのか・・・謎に思うも解き明かす気は全くないし興味もない。


 ハァ、と溜め息を一つ。


 見渡す限りの豊かな緑に囲まれた自然公園。

 地面にひかれた色とりどりのレジャーシートに座っているのは極僅かで、多くは広大な緑のグラウンドを駆け回ったり見慣れぬ遊具に群がっている。

 そして座ってるのはシロツメグサで冠を作っている子達なので事前に言われた目的である「自然と触れ合う」にふさわしい行動なのであろう、多分。



 ポカポカと暖かい日射しに見守られた本日は学校行事である遠足に実に絶好の天気である。

 ワイワイ喋りながら歩くこと約3時間。途中で挟んだ休憩をいれて計4時間ほど。始終無言で空気と化してたのは気のせいではなくただ騒ぐ気が湧かなかっただけだ。


 自然公園に到着してすぐ昼御飯になったので木陰を確保して早々に食べた。祖母作の弁当は彩り鮮やかで栄養バランスも良く、しかも冷凍食品は一切ない素晴らしいものだった。有難や有難や。

 ちなみに今はフリータイム。周りは前述の通りで元気が余りまくっているようで賑やかである。


 おやつの醤油煎餅を食べつつ、引率の教師達を巻き込んで遊んでいる彼・彼女らを眺めてお茶を一口。

 うん、美味しい。それにしても・・・




 「あー・・・眠い。帰りたい」


 「喋ったと思ったらそれかよ」


 「だって暇だし」


 「まぁ暇だけど。あっちで遊んでこればいいじゃん」


 「それ、君には言われたくないんだけど。君が遊んでこれば?」


 「やだし面倒臭い」


 「私だって面倒臭い」


 「「・・・・・・」」




 沈黙。


 テンポよく会話しているが、実は隣にいるのは例の“葛城翔”である。何故この状況になっているのかは、まぁそれとない理由がある訳だが・・・






 観察し始め早1ヶ月。

 わかったことはこの一言に尽きる。 


 私がいる。


 である。なにこれ辛い。

 もとより自分の性格は理解しているつもりなのだが、目の前でそれを行動されるのはなかなかにダメージがある。


 そもそも(葛城翔)のモデルになった“わたし”が自分()なので容姿はともかく似てないところが殆どないのだ。

 性格、行動、得意、不得意、好きなモノ、嫌いなモノ、と。ほぼ(・・)同じなのだ。



 つまりは、だ。


 クラスメイト達が私と葛城翔が“似た者同士”という認識を持ってしまい(しかもあながち間違いではない)、気付いたらペアを(皆早々にそれぞれ組む為所謂残り者同士)組むことになったのだ。

 子供って、変なところで鋭いよね・・・


 そんな訳で、仕方なく、行動を共にしているのだ。


 まぁお陰様で観察しやすくなったので結果オーライということに・・・する。

 色々と解せないけどな。



 そんなこんなでペアを組むことになったわけだ。まぁ何も言わずとも行動が重なる為、楽っちゃあ楽である。

 精神的にはどうかはノーコメントで。


 さて、この遠足には一応「自然と触れ合う」という目的があるのだが・・・




 「そっちのどう?」


 「あー・・・うん、いい感じ」


 「そ。こっちもいけそうだからとっとと作ろうか」


 「おう」




 細々と、地味に、作業する。

 授業の一貫なので感想文的な物を提出したければならないのであるが、感想とか何それムリゲーと意見が一致したため適当に何か作ってレポートにしてしまえとなったのだ。


 ちなみに作っているのは押し花の栞。


 材料はそこら辺に生えてる花や草、紙、ラミネートシールだ。

 ラミネートシールは百均で買ったもので、機械に通して密封するのでなく粘着シールで閉じるだけという簡単な品物。

 遠足中でも完成させれるし、何より嵩張らないので楽である。



 チラリ、と隣を観察。荷物で押し固めた花や草を紙に品良く配置し、閉じる。

 なかなかに見事な仕上がりだ。




 「・・・んだよ」


 「いやぁ、なかなかセンスいいじゃんって思ってね」


 「・・・・・」


 「ん?どうかした?」


 「・・・別に」




 まるで不貞腐れたような反応・・・さて、何が気に入らなかったのか。

 まぁいいか、さっさと作ろう。


 台紙として用意した和紙に細身の草を中心に白や水色の花弁を置く。上は左隅、下は右隅にシンプルに、小さく。

 まるごと花を使わないのは摘んだときに崩れたからで、毟ったおかげか水分を抜くのが早く終わったのでよしとする。




 「んー・・・まぁこんなもん、かな」


 「へぇ、綺麗じゃん」


 「どーも。あー・・・おばぁ喜んでくれるかなぁ」


 「・・・婆さんに渡すのか」


 「うん。本読むのおばぁだけだし」


 「ふーん・・・」




 今度は何か考えてるようだ。

 顎に手をやりつつ花の栞を片手に悩む美少年。絵になるのがなんか無性に腹が立つ。ナンデカナー。


 意識を戻し、同じように栞を作って持ってきたシール全部を消費する。最終的に互いに5枚作成したが、これまた同じデザインがない不思議。

 同じ草と花を使ってるハズなのにね。


 ちなみに台紙の裏、花を置いてない面には今日の日付と名前の代わりにイニシャルを記入。レポートと一緒に提出するのだ。



 あー・・・それにしてもさ、




 「眠い」


 「・・・いっそ寝ればいんじゃね」


 「あー・・・じゃ集合かかる前に起こして」


 「・・・面倒」


 「よろしく」


 「おい」




 そのまま寝っ転がって目を閉じる。

 日陰ながらも暖かい気温が心地いい。これならすぐ寝れそうだ。


 そして面倒臭いだのいいつつ面倒見がいいのは知ってるので、まぁ文句いいつつ起こしてくれるハズだ。


 そんな訳で、おやすみ。




 「・・・・・本当に寝やがった」




 ポツリとそんなことを呟いたなんて、既に夢の世界の私は知りもしない。

 もちろん、その時の表情も、知るわけがないのだった。







ーーーーーーーーーーーーーーー



 5月○日、晴れ


 遠足中は始終無言。隣のクラスの子達がチラチラ見てたのには気付いてない模様。

 結構歩いたけど疲れてない様子。休憩中も余裕そうだった。

 自然公園にてはしゃぐ同級生に冷めた視線を送っていた。ほんと子供らしくないよなこいつ。モットアツクナレヨー。


 弁当はサンドイッチだった。デザートは桃の寒天ゼリー。女子力高いな、をい 。

 曰くお姉さんの手作りだとか。そーいやそんな家族設定だったなー。確かお母さんが殺戮料理製造機なんだっけ。今度全設定書き出そうかな。


 そーいえば押し花の栞を交換した。何でもデザインを気に入ってくれたらしく、貰うだけなのは嫌だから交換という形になった。

 私より律儀なのかもしれない。


 起こしてくれたお礼に煎餅あげたら胡麻が良かったと言ってた。私は醤油派だがこいつは胡麻派のようだ。


 帰り、相変わらず無言。

 やっぱり体力はあるようで余裕そうだった。けど視線には気付いてない。いい加減気付けよ。

 行きより視線増えてんだろ。


 衝撃の真実。

 なんと女子数名から花冠を押し付けられていた。視線が増えたのはこれが理由かな?にしても似合わない!

 断るのも面倒なのか3つほど頭に乗ってた。ワロス。

 笑ったのがバレたのか睨まれた。解せぬ。


 早々に帰宅したのでその後どうなったのか明日聞こう。


 以上。




ちなみに日記の内容はブーメランで主人公に返ってる。

なにがとは言わないけど。

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