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凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 【書籍6巻作業進行中、書いてて凄いたのしかったです、読者の皆にはごめんね】  作者: しば犬部隊
凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ、最後の日常

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84話 罪名、1.5部

 



 味山はもうすでに遠い昔の記憶のように思える生ハムメロンのやばい味を懐かしむ。





 そんな味山の表情を勘違いしたのか、ロイドが前髪の隙間からギラギラした目を味山に向けて





「ああ。勘違いするなよ、探索者味山。自分は別にルイズのアニキとの決着にいちゃもんつけたいわけじゃない。知りたいだけなんだ。自分の、黒い森で造った樽。これさあ、こんな簡単に壊れるもんじゃねえんだよ」




 ざり、足元で砕けた樽の破片を弄びながらロイドが呟く。




 頭の中で何かが混ざる感覚。





 腕、腕、腕。




 記憶が、混ざる。




 今のヒントの言葉に味山の全てが乱れる。




「……知らねえよ。物なんだ、壊れる時もあるだろうよ」




 味山が無意識に腰を落とす。膝を抜き、上半身の力を抜く。





「ねえんだよ、んなわけねえ。おい、お前、これがなんかわかってないだろ? 號級遺物だ。自分の號級遺物、"黒い森"で造られたモンなんだ。このままじゃあ、なんだ? お前のその腕力は自分の號級遺物以上のモノってことになるんだ、それは、まずいだろ?」





「言ってる意味が、わかんねえ」





「はっは、いいねえ、探索者味山。とかなんとか言いながらきちんと樽の破片から離れてる。うーん、ルイズのアニキをのめしただけはあるじゃん…… いいか、これはメンツの問題なんだ。自分の遺物が嘗められるってのは、つまりウチの国が嘗められるってことなんだよ」





「おい、その辺にしときな。ロイド」





「え、そりゃないよ、アネゴ。アネゴも指定探索者なら分かるでしょ? これは駄目でしょ? 自分、これでも母国が好きなんですよ。ルイズのアニキがこのザマだ。加えて自分の遺物の力が疑われたとあっちゃあさあ ……まだ自分は指定探索者のままでいたいからね」





「だからっつって、殺そうとしてんじゃねえよ。このヘタレイカレが。アンタは自分より下の人間に対して傲慢すぎんだよ」




 ルーンが鋭い言葉…… かなり内容のおっかないことを口にする。







「アネゴは自分に対して傲慢だけどね」




 殺すという言葉をロイドは否定しない。ナヨナヨした風体、しかしその目に宿す光は間違いなく、指定探索者の、容赦なく為すべきことを為せる人間のものだ。





「私は基本誰に対してもこうなんだよ、それにロイド。残念だが、時間だ。アンタの出番はないよ」








 ルーンがチラリと、目線を外す。




 味山がつられて同じ場所に目を向けた。






 TIPS€ 警告、遺物の発動を確認。





 TIPS€ 所有者、ルイズ・ヴェーバー。遺物"リンデン・バウムの常緑葉"発動





「おいおいおい、……何個持ってんだよ、テメー」





 聞こえて来るTIPS。それはまだ味山が聞いたことのない遺物の名前。




 白目を剥いて天井を仰いでいた男、彼の巨体がびくりと跳ねた、かと思えば、のろのろとそれが起き上がる。




 眼球がぐるぐる回り、白人特有の薄い有彩色の虹彩が現れた。





「……が、は、……ああ、ひどい目覚めだ。本当に、ひどい」




 このやろう、起き上がりやがった。




 背中に、脇に、足の裏に嫌な汗を掻く。耳の能力を使って叩きのめした。にもかかわらず、この男は起き上がったのだ。




「よーう、このクソバカ。よく寝れたようで何よりだ。さぞいい夢を見れたんだろうなあ?」




「……今はお前に何を言われても言い返せないな。お前の罵倒、その全てを受け入れてしまいそうだ」





 ニヤニヤしながら話しかけるルーン、その軽口を受け流しながらルイズ・ヴェーバーが答える。




「ロイド、お前にも要らん心配をかけたな」




「ひ、ひひ。ルイズのアニキ、起きてくれて助かりましたよ、自分は信じていましたとも。ドイツ最強、いやEU最強のあなたがこんな、ねえ……」




「言いたいことはわかる、ロイド。だがこれは俺の問題だ、お前は引け」




「……ええ、怪物狩りに言われたら大人しくしますよ。ルイズ・ヴェーバー。……自分はあなたをアニキとまだ呼びたいんでほんと、お願いしますよ」




 ロイドがそう言って、流し目を味山に送る。



 ワカメみたいな髪型してわけわからんキレ方しやがって。味山はその流し目に舌打ちで返事をして、それから注意するべき男を見つめる。







 TIPS€ 遺物"リンデン・バウムの常緑葉"




 その効果、所有者に"竜の英雄"、"竜の血"特性が存在する場合、擬似的な不死をもたらす。この遺物は所有者の意思では発動しない。




 リンデン・バウムの葉は落ちなかった。竜の血を余すことなく全身で浴びた英雄は、文字通りの不死となる。これほどつまらない展開はないだろう。英雄の物語は死で終わるべきなのだから。





「…………」




 怪物狩りが、首を鳴らしながらこちらを見つめて来る。



 肉食の怪物種に至近距離で見つめられている時と同じ感覚。




 めんどくせえ、なんだその遺物の効果。クソゲーにも程がある。




 味山は"怪物狩り"の反応を予想する、逆上して攻撃してくるか、それとも




「………名誉だ」




「あ?」




 訝しげに見つめる味山を無視して、ルイズがゆっくりと、しかし一歩ごとに力を取り戻していく足取りでホールの観衆に近づく。








「この場にいる全ての目撃者に伝える。今の戦いに不正はない。俺は、油断なく、いつも通りに力を行使した。その結果、真正面から破られた。それだけだ。味山只人は、その実力をもって俺に挑んだ」




 しんと、静まるそのホール。




 満身創痍の大男の言葉が響く。




「名誉だ。俺の名誉にかけて味山只人の正道を証明しよう。彼は、俺に勝った」





「お前……」




 清々しい、言葉だった。



 さっきまでのメンヘラゴリラぶりはどこにいったのか。



 その表情は、まさに森の賢人にふさわしい理知すら感じる顔だ。





 味山は、なんだかんだルイズヴェーバーのことを書籍を通じて知っていた。




 探索者の戦闘技術について書かれた書籍は新人の頃、毎晩食い入るように読んでいたほどに。




 だからこそ、余計に、なかば一方的に知っていた相手だったゆえにあのメンヘラぶりにムカついていたのだ。






 あれ、コイツ、実はほんの少しいい奴なんじゃ。





 味山が絆されかけて。









「そして、名誉にかけて。俺はこれから再び、お前に挑む。恐ろしい怪物よ」





 やっぱりね。そうだよね。終わらないよね。



 味山は眉間をゆっくり揉み解し、返事をする。




「もしかして、怪物って俺のこと言ってるのか?」








「お前以外に誰がいる。この怪物狩りに土をつけるものなど、人間であってたまるものか。そうだ、まだ終わっていない。これで一勝一敗。2本先取だ。ルールはそうだったな。味山只人」





「……やっぱりかよ。この脳筋が」





 TIPS€ 警告。





 嫌な、音声。




「舞台を作り直せ、ロイド・アーダルベルド。怪物狩りにふさわしい舞台を。今度はもう場外はなしだ」





「ひ、ひひ。ええ、ルイズのアニキ。EU圏最強の探索者の舞台、作ってみせましょう」




 ルイズの重い声に、ロイドが畏まる。





「敬意を、お前に。そして謝罪を。見誤っていたのは俺だ。アレタ・アシュフィールドも、ソフィ・M・クラークも何も間違っていない。お前のような男は手元に置いておかないと恐ろしくてならんのだろうな」





「……恐ろしいって言われるの、そんなに悪くないな。そのまま寝てくれてたら良かったのによお」




 TIPS€ 警告、更に複数の遺物の発動を確認。





 TIPS€ 遺物"シグルズ" 遺物"ワイルド・ハント・ファースト" 遺物" 巨人の心筋" 遺物 "ヴォルムスの薔薇" 遺物 "クランプスの錆びた鐘"







「じゅんび万端ってか? 今少し考えたいことあるんだけど?」




「……ふむ、そう言うな。付き合ってくれ。お前が人間かどうか確かめてやる」




「お前が言うなよ。何個遺物使う気だ。このイカレやろーが」





 睨み合う2人をよそに、ロイドが再び遺物を使用する。砕けた樽の破片から、木の芽が生え、本来長い年月を経て成長する過程をすっ飛ばす。




 茶、枝が伸びる。


 緑、葉が生える。




 そしてねじれて、割れて、軋んで、あっという間にちょうどいいサイズのテーブルに変化した。







「おーおー、ロイド。お前、指定探索者やるより家具屋でもした方が幸せなんじゃねーの?」





 ヒューと口笛を吹きながらルーンが茶化す。





「うへえ、勘弁して下さいよ、アネゴ。なんで自分が有象無象の無能どもの為に遺物を使うんですか。際のの無駄遣いってやつです」




 ほんとコイツ素で性格悪そうだな。味山は聞こえて来る舎弟ワカメの話を耳で受け流す。





「お、おいおい、怪物狩りが立ったぞ」




「俺は信じてたぞ! ルイズヴェーバー!」



「抱いてー!! そんなチンケなニホン人捻り潰しちゃえ!」




「「「ルイズ! ルイズ! ルイズ!」」」」





 怪物狩りの復活に大多数の観衆が湧く。誰もが指定探索者の敗北という事実を受け入れたくないようだ。




 一挙にルイズ・ヴェーバーへの声援で湧く周囲。ほんの少しの味山派はオロオロするか、押し黙るか、そして。



「ふっ」



「まあ」




「ふふん」




 余裕の表情で薄ら笑いしながら、腕を組み、後方彼女ヅラしながら事態を見守るかの反応に別れていた。






「待たせたな、味山只人」





「待ってねーよ。まじで。そのまま寝とけばよかったんだ」




「……この遺物。リンデン・バウムの常緑葉がまさか人間とのイザコザで発動するとは思わなかった。発動するにしてももっと後、然るべき舞台で、と思っていたのだがな。フン、手の内がバレてしまったじゃないか」




「手の内? まるで人間が敵みたいな言い方だな」




 テーブルに向き合う。



 ハイになっているのか、ルイズ・ヴェーバーが白い肌を紅潮させ、口数を多くしていた。




「……お前は何もしらない。アレタ・アシュフィールドにそれほど近い場所いることを許されて尚、何も知らないのだな」




 そう言う言い方をされるとムカつく。味山は構えながら言葉を返す。







「あー? そうでもないぜ。色々、知らなくてもいい事結構知ってるけどな。今回は遺物を何個使う気だ?」




「……ふ、なるほど。そう言うことか。ルーンめ。どこまで視ていたのやら」





 何かを納得したように息を吐く。その表情は飼い猫のイタズラを本気で叱れないダメな飼い主みたいだ。






「味山只人。勝負だ、お前の力、見定める。星の片腕にふさわしいか否かを」





「馬鹿が、お前も、どいつもこいつも星、星星星。アイツのことは、アイツが決める筈だ」





 構える。




 見る。




 ルイズ・ヴェーバー。EU圏最強の指定探索者、その男からもう味山に対する嘲りも、油断も見えない。





 あるのは、圧倒的な威圧感と、対峙するだけで分かる冷たい殺意。





「ルーン、カウントを始めろ。業腹だがお前の願い通りに踊ってやる」




「あー? なんのことだか。……悪いが色男、この馬鹿に付き合ってやってよ。大丈夫、アンタなら勝てるかもね」





「はは、やっぱ指定探索者、まともな奴いねえな」





「「お前もな」」





 ルーンとルイズの言葉が同時に響く。




 その声に味山は嗤う。




 分厚い手が重なり合う。互いに、同時に、そのおぞまいしい戦力を理解し合う。





 片や、世界最高峰の実力者、数多の怪物狩りを生業とする他の全ての探索者に先駆けて、"怪物狩り"と呼ばれる男。




 ダンジョンの秘宝、世界の至宝、選ばれし者の証。




 数多の遺物に所持者として選ばれた現代の英雄にして、未来の抑止力。



 指定探索者、ルイズ・ヴェーバー。




 片や、民間出身、血統書なしの凡人。



 ただ、人よりほんの少しの幸せを求めて、己を害す敵を殺し続けてここまで来た男。




 その凡庸な身体は死線を超え、鍛え続けても、ほんの少し進むだけ。選ばれし者よりも遥かに遅い成長と、遥かに低い限界があるだけ。




 それでも、ほんの少し、ただ、ほんの少しだけの幸せを求め、当たり前の善性と人並みの欲を携えここまできた。




 その凡庸さは、彼らの温い拠り所となる。忘れ去られた世界の神秘、その残り滓達は男の当たり前に救われる。




 男の当たり前の怒りは、なんの意味も使命もない心の動きは、奴の耳糞とよく馴染む。



 なんの意味もなく、なんの使命も役割もない。ただ、己の快の為に存在する耳糞とよく、馴染んだ。




 恐ろしき耳の部位、保持者。




 凡人探索者、味山只人。





 2人の男が、同時にニヤリと嗤う。







「行くぞ、味山只人」




「来い…ルイズ・ヴェーバー」






 カウントは、もう、聞こえていない。








「「死いいいねえええええ!!!!」」





 まった同じ叫び、両者が身体ごと互いを捻り潰そうと力をぶつけ合う。





 TIPS€ 更に複数の遺物の起動を確認。




 TIPS€ 遺物"







 ぎっち、




「ぐ、う」



「ぎ、ぎ、い」




 拮抗。



 1戦目も、2戦目も、互いに圧勝で決着がついた。



 しかし、今回は違う。




 ルイズの腕が、味山の肩が、互いに痙攣し、1ミリたりとも傾かない。



 奥歯を噛み締める、削れそうだ。



「クッソ野郎があああああ!! そこまでして勝ちてえか!? 何個遺物使う気だテメエエ!! オラァ!」




 唾を飛ばしながら叫ぶ、味山はもちろん耳の権能、大力を使用している。




「……っ、ふ、ふはははは!! ふざけているのは貴様だ! 味山只人!! 遺物だ、遺物を使っているんだ! 何故お前は抗える?! お前こそなんの冗談だ! この怪物め!!」




 だが、今回は一撃で終わらない。数多く発動した身体を強化する効果の遺物がルイズ・ヴェーバーを押し上げる。




「だああれが怪物だ!? 他人様にいきなり遺物かましてくるテメーこそ怪物だ! 何が名誉だ、謝罪だ、コラ!! テメエまだやる気マンマンじゃねえか!!」





 喚きながら、味山が力を振るう。力瘤が膨らみ、血管が浮き出る。




 ぐ、ぐぐ。わずかに味山がルイズの腕を押し込む。





「お前は何も分かっていない。指定探索者がみくびらられば何が起こるか、何も!」






「俺に関係ねえわ!! 先に手を出してきたのはテメエだ!! 責任取れ!!」





 複数の遺物の同時使用、最低でも指定怪物種級の敵に使うような力、それを味山は真っ向から受け止め、じわり、じわりと押していく。





「……ぐ。う。おおおお!、」




「くたばれ、怪物狩りいいいい!! 2度と俺に絡んでくんな!」




 徐々に、徐々に、万力が鉄をゆっくり押しつぶすように味山がルイズの腕を押し込んでいく。





 TIPS€ 耳の大力、継続使用。経験点消費2倍。





 やかましい、黙ってそのまま力を、貸せ。




 味山はその身に宿る耳の力に命令する。大いなる力、それを振るうことに酔う。目玉が充血し、たらり、さらさらした鼻血が垂れていた。






「ぐ、ううおおおおおお!! 味山、ああああ!!」




 痙攣しながら、ルイズヴェーバーの身体は傾く。味山只人に力負けし、どんどん身体が開いていく。





「うるせえええ!! 気安く名前を呼ぶんじゃあねえよ! ヴェーバー!!」




 勝てる、このまま押し込める。








 味山が、不細工な笑いを隠そうともせずに唇を吊り上げ、太い犬歯を剥き出しにしてーー















「…… なんだ、いまのは? ヴェーバーだと? …… お前。今、俺をなんと呼んだ?」





「あ?」





 あまりにも。その場にそぐわない言葉、その場にそぐわない、





 表情。




 キョトンと、毒気の抜けたその顔、ルイズ・ヴェーバーがそんな顔を味山に向けてーー





 あれ、なんか変だ。




 味山も釣られて思考が鈍る。何故だろう、ふとその顔が被った。



 なんだか、その顔はグレン・ウォーカーや、鮫島竜樹たちに似ている。




 マヌケヅラ。そう、友人同士で見せる特有のマヌケ、ヅラ。

















 TIPS€ "そして、過ぎ去りし日を思え"







 TIPS€ 条件達成。一周目情報解禁。"怪物狩りと探索者"











 TI◯s$ ……脇が甘いな、只人。うるせえよ、誰も彼もてめえみたいに出来が良いわけじゃねえよ、くそ、何食ったらそんな強くなんだよ。……今度の遠征、お前も行くんだろう? ついに奴ら"◯◯◯◯の民"も滅亡寸前というわけだ。作戦としてはお前とロイドによる大破壊攻撃が1番槍と聞いたぞ。ええ、アイツ俺嫌いなんだけどな。隙あらばなんか殺そうとしてくるしよお。ふむ、だがお前ならば問題あるまい。ロイドと言えどもお前と"*"には敵わない。ばっか、お前、それならまだあのワカメの方がマシだ。俺の中にいるコイツは決して味方なんかじゃねえ。たまたま今はまた利害が一致してるだけなんだからよ。去年の夏、俺は結局コイツに最後殺されそうになったんだぜ? 首絞められてよ。ああ、最初の"耳戦''か。ふん、俺がその時居れば結末はまた違ったろうな。お前はあの時、ソフィ・M・クラークに助けられたのだったな。情はうつらないか? あー、まあ思うとこはあるけどよ、仕方ねーだろ? なんせもう今や連中はテロリスト、おまけに俺たち探索者の獲物の怪物とつるんでんだからよー。それはそれ、これはこれ、って奴だな。ふん、現金な奴だ。躊躇うなよ、ソフィ・M・クラークは必ず殺害しなければならない。それが組合からの指示だからな。ああ、分かってるよ。……なあ、おい、アレフの連中ってよ、ソフィ・M・クラークとグレン・ウォーカー、ほんとにこの2人だけだよな? 急にどうした? ああ、そうだ。











 TIPS€ バベルの大穴、深層に逃げ込んだ"指定怪物種"アレフチームは今や2人のみだ。必ずこれを排除するぞ。






 TIPS€ ()()指定探索者、味山只人。





 TIPS€ 翡翠の担い手。耳の討伐者よ。





 TIPS€ ああ、分かってるよ、ヴェーバー。そろそろ行くか。ルーンやらロイド、ホーレンにどやされる。




 TIPS€俺の樹心限界と、お前の正義で



 TIPS€クソエルフ狩りの時間だ。












「「は?」」






 同時に固まる2人。



 ルイズ・ヴェーバーも、味山只人も、互いに顔を見合わせ動けない。




 駆け抜けたヒント、それはまるで、まるで会話だ、会話だった。




 同じものを聞いたのだろうか、ルイズも目を大きく見開き何かを確認するかのように瞬きを繰り返す。







「……は?」




「あ、……あ?」





 のどが、乾く。




 今のヒント、TIPSは何かがおかしい。なんのヒントにも警告にもなっていない。




 どこか誰かの会話をそのまま垂れ流したような。




 だが、その中に無視できない言葉がいくつも現れた。






「今の……」




 味山が無意識に呟く。お前も見たか? あまりにもそぐわない気軽な言葉、まるで友人に向けるかのようなそれが思わず、目の前の男に飛び出してしまいそうな。




 ぐっ。



 腕の筋肉が痺れる。



 ぼんやりとしつつ、しかし両者はまったく力を抜いてはいない。




 勝負は続いている、なにを考えてる、はやくコイツを叩きのめさないと。



 味山はからまる思考を無理矢理に押し込んで、そのまま力を。







「ふ、っふふふ。ああ、考えるのはやめだ。なあ、味山只人」




「何、笑ってんだ、余裕だな」



ぎりぎりと力がぶつかりあう。推しているのは味山だ。なのに、ヴェーバーは笑っている。



「驚いているか? 俺もだよ。これは久しぶりの感覚だ。知っているか、味山只人。遺物の使い方を」





「あ?」




「瞼を閉じるとき、息を吸って吐くとき、人はそれを誰に教わることなくやってのける。知っているんだ、初めからやり方を。人は己の身体の使い方を生まれた時から知っている」




「無駄話、はよ、勝負が終わってからにすんだな……」





「遺物も、それと同じだ。使うべき時に、その用途も、使用方法も分かる。味山只人、貴様に敬意を、そして」





 あともう少し、このまま勝てる。



 だらだら喋っているヴェーバーをそのまま捻り潰すように










 TIPS€ 警告、更に新たな遺物の発動を確認。




 うるさい、今更そんなもん関係ない、捻り潰して






「感謝を。ありがとう、味山只人。お前のおかげでこの遺物の使用方法が理解った、ずっとこれだけはわからなかったんだ」







 TIPS€ 遺物発動を確認、遺物名。






ジャスティス(正義)






 TIPS€ その効果。"罪人"特性を持つ者に対して絶大な特攻補正を得る。この遺物の効果は世界から罪人と認定されたものの"罪の大きさ''によりその効果を更に増す。ただし"罪の大きさ"には限度がある






「罪人? はっはー! なら残念だなあ! 俺ぁ、前科なしの模範的小市民っ……?  ん?」




 あ、れ。




 うそん。




 その遺物の効果を聞き、してやったりと笑った味山、しかしすぐに笑えなくなる。





 急に、腕が動かなくなった。




 徐々に押し込んでいたヴェーバーの腕、それが動かない。それどころか、ゆっくり、ゆっくりと腕が持ち上げられていく。






「て、め。なんで、おい、くそ、クソ耳!! 気合い入れろぉ!!」




 喚く味山、意味がわからない。ジャスティス? 正義? わけわからん遺物の起動警告が伝わった瞬間に、力の拮抗が変わる。






「俺は、前科なんてねえっーー」



 叫ぶ味山、でも次の言葉が紡げない。




 あ、あ、とぽかり、口を開いて、放心した。





 味山の目の前に、何かが。






















『汝、罪人なり』







 ヴェーバーの背後に、突如現れたソレ。



 一目見て、文字通り吐きそうになる不快感。他の連中には見えていないのか?




 誰もその突然現れたソレに反応しない。ヴェーバーですら気付いていないようだ。




 どこかの宗教の女神像やら仏像やらなんやらを適当に集めて、これまた適当に溶かして、適当に混ぜて繋ぎ合わせたような。





 歪な、首が何個もある女神像がヴェーバーの背後に浮いている。




まさか、これが、遺物?




それしか説明がつかない。




『汝の罪を同期した』




 カタカタと、その何個もある首と同じように何個も身体の至る所から生えている天秤みたいな飾りが一斉に揺れる。






「趣味、悪い……」




 思わず、言葉が漏れる。



 女神像、その全ての首が軋みながら味山を見つめ、ドロドロと目から黒い涙を垂らす。





『聞こえる、汝の罪が。見える、汝の犯した罪の重さが』




「なんのことだ、つかマジでてめえなんだ!? おい、ヴェーバー!! お前、何を使った?!」





 味山の叫びは誰にも届かない。ルイズ・ヴェーバーはただゆっくり、確実に万力のような力で味山の腕を押し返してくるのみ。




『ニホン人、アジヤマタダヒト。罪状を述べる』




 機械的な音声、何本もある女神像の首が、中途半端に溶けた顔が味山を見た。



「だから、なんのことだ、この冤罪バケモン仏像モドーー」

















『罪状、私情による世界の破壊』





「は?」






『罪状、大量破壊。大量殺人、*の権能、樹心限界による都市攻撃、国家転覆、多数の政治的指導者の暗殺、世界人口7割の殺害、アメリカ軍基幹基地全破壊、そのうち原子力空母エンタープライズ、空母レキシントン、サラトガ破壊、領土破壊、空中空母"アンクル・サム"の破壊、大陸兵器使用、號級遺物所持者複数殺害、主要7ヵ国指定探索者の全殺害事件への全関与、殺人教唆、探索者法違反、組合勅令の無視、宗教団体"光の腕輪"信者へのテロリズム誘致、探索者免許違法所持、現代ダンジョン不法侵入、バベル島不法占拠、バベル島侵攻戦にて国連軍参加中の米軍所有艦艇多数破壊、探索者街破壊、テロ等準備罪、共謀罪、アメリカ宇宙軍戦略兵器"神の杖"の破壊、アメリカ海軍號級遺物戦略兵器"ストーム・ルーラー"の完全破壊、ロシア月方面軍戦略兵器"冷たい月"の破壊、中華人民共和国中央軍事委員会直轄戦略兵器"兵馬俑"の停止、欧州合同軍號級遺物戦略兵器"黒い森"の強奪、大英博物館への侵入、多数の展覧品の強奪、"ツァラトゥストラはかく語りき"原本の強奪、バチカン地下墓地より"ロンギヌスの槍"、ほか多数の聖遺物の強奪、バチカン市国指定探索者"テンプルナイト"の殲滅。石上布都魂神社異界祭殿より"アメノハバキリ"強奪、鹿島神宮異界宝具殿より"アメノハバキリ同位体トツカツノツルギ"強奪、全世界の"ヤドリギ植生地"の強奪、全世界のホームセンターから"チェーンソー"強奪、故ラドン・M・クラーク所有ラスベガス地下基地"ラスト・ホーム"の強奪、及び同地下基地に収蔵されていたロボット機動兵器"ゴリアテ"1089体の強奪と起動、及び地下基地に存在していたメインAI"ノウ・マン"の起動、及び同AIの人類滅亡プログラム"通称"ノアプログラム"の起動、寄生生物兵器"マルススペア"、"グリゴリスペア"の破壊。アメリカ軍極秘研究基地施設"オアシス"の破壊、職員の全殺害、共生体候補者の全殺害、ラスベガス上層区の全破壊、テロリスト集団"ウイスキー"結成への関与、號級遺物不正使用への関与、人口破壊、號級遺物"壁画"の強奪、怪物種の調教及び生育、日本公安組織への攻撃"アサガヤ"、"ヨヨギ"は壊滅。日本霊的防御機構への侵入、"ミチザネコウ"、"マサカドコウ"、ストクサマ"への拝謁。日本滅亡。バベル島近海海上部隊殲滅、上級探索者貴崎凛の殺害、貴崎家本邸破壊、中華人民共和国秘匿作戦室所属雨桐殺害、アメリカ陸軍第666連隊所属ダンジョン攻略特殊作戦部隊、シエラチーム全メンバーの殺害、同部隊リーダーアリーシャ・ブルームーン殺害、同部隊員アリサ・アシュフィールド殺害、ドイツ指定探索者ルイズ・ヴェーバー殺害、北アイルランド指定探索者スカイ・ルーン殺害、蟋泌藤莨全破壊、はじまりの探索者所有號級遺物の3点のうち2つの破壊、ニホン製薬企業"ユキシロメディカル代表取締役社長、雪代長音殺害、ユキシロメディカル秘書部所属海原善人殺害、基特大学2回生雪代継音殺害、聖真女学園2年生、雪代唯の殺害、雪代本邸破壊、29歳無職山上高人殺害、上級探索者鳩村幸一殺害、バベル島公文書館司書レア・アルトマン殺害、上級探索者鮫島竜樹の殺害、人類軌跡の7つのうちの6つ、慈愛信仰知恵正義堅固節制の殺害、日本陸上自衛軍、ダンジョン方面隊所属田村秀夫の殺害、探索者組合日本支部サポートセンター所属、菊池清吾の殺害、日本国代100代目総理大臣多賀慎二の暗殺、他多数』






 頭が、クラクラする。



 思考に投げつけられた情報の奔流。1つとして意味がわからない。




『結論、罪人、味山只人の生存、それ自体が大罪』





 だが、その女神像は容赦なく告げる。







『故に』




 天秤が、傾いた。




「『正義は勝つ』」







 ヴェーバーと、女神族の言葉が被る。




 次の瞬間には蜃気楼か何かのように、あの気持ち悪い女神像は見えなくなっていて。






「……何が見えた? 味山只人」




「……知る、かよ。所有者に似て趣味の悪い遺物だな、オイ」





「……分かる、このみなぎる力、この遺物の使い方。お前の罪が正義に力を与える」




 腕が、押し込まれる。気づけば腕相撲の均衡はヴェーバーに向いていた。




 味山の身体が開き、押される。耳の大力を使っているにも関わらず。





「ぐ。う、つ、罪? 覚えがねえ、な。冤罪だ、冤罪」




「違う、冤罪ではないことはこの力が証明している。正義だ、お前にたちはだかるのは正義、正しい力だ」





 身体が痙攣する。



 手の甲がどんどん机に近づく。力が通用しない。こちらの力は抜けていく一方、しかし相手の力は増すばかり。




 残念ながら本当に、罪人に特攻効果を発揮する遺物は発動してしまっている。





 罪人、俺が? 只、ほんの少し人より幸せに生きていきたいだけの俺が?




 味山は駆け巡るTIPS、その意味不明な言葉の羅列に混乱する。何一つ覚えなどない。





 だが





「見えたんだろう? 聞いたのだろう? 我が正義は! 罪人の罪を全て明らかにする!! 自覚しろ、味山只人!」




 殺害、殺害、殺害殺害殺害殺害殺害。




 その言葉の前にはやけに聞き覚えのある名前が多く並ぶ。胸くそ悪い。





 嫌な汗が噴き出る。ドロドロしている。





「俺は正義の名の下に、お前を駆逐する。お前を選んだ52番目の星、お前をこの場で打ち負かすことで彼女の目を覚まそう!」





 ヴェーバーが唾を飛ばす。正義の後押しを受けたその膂力はすでに怪物種の枠すら超えているのだろう。耳の大力を再現している味山でも後もう少しで、負ける。




 負ける、負ける?




 負けるとどうなる? こんな、こんな正義正義うるさい奴に、否定されるのか?




 いや、本当にそれで終わるか? 俺は負けるとどうなる?




 味山は足元に頼りなさを感じる。途端に自分が踏みしめている地面すら信じられなくなるような感覚。




「罪人よ、正義の力を思い知れ!」




 あの身に覚えのない罪の数々。何故だ、まったく身に覚えはないのに、知っている。




 そうだ、ラスベガス、あそこは中々に苦労したーー?



 味山はもう、自分の思考を制御できていなかった。





 TIPS€ 警告、敵遺物による精神攻撃を確認。精神対抗ロール…… 技能"凡人の意地" 適用…… 敵遺物"正義の "罪人"特性への特攻のため、十全に適用されず。精神対抗ロール、精神値による抵抗を再試行…… 不発







「俺はーー」




 俺は、罪人? 裁かれなければならないのだろうか。




 俺は生きていていいのだろうか。




 遺物、正義は罪人を許さない。所有者には執行を、罪人にはその裁きの履行を強制させる対人に特化した遺物。




 その効果を味山はモロに受けていた。





「俺は正義の為に彼女を、52番目の星を救う!! それが正しさだ!!」





 ルイズ・ヴェーバーが、高らかに叫ぶ。酔いにも似た高揚を顔一杯に広げる。




 人は、正義の側に立つ時、みんなこんな顔をする。





 正義、それは誰もが認める、正しいもの。絶対のルール、人を人たらしめるもの。



 それから外れた者は容赦なく石を投げられる。投げられても仕方ないのだ、だって、正義に従わないものはすべて悪い罪なのだから。







「正義の、為に? 正しさ?」







 ほんとうに?


 ぽつり。ヴェーバーの言葉、それを味山が繰り返した。




 正義の為に、星の為に、正義、正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義正義。






 ああ、なんて。




「終わりだ! 罪人! 味山只人! さあ、お前の罪を数えろ!」




 なんて、耳障りな言葉なんだろう。正義…本当にうざい。









 TIPS€ 条件達成 "罪人" "大罪" 特性を持つ存在を複数、身体の中に取り込んだ状態で"裁き"を受ける











「うるせえ、沢山あって数えてられねえんだよ、いちいち」






「ぬ、う?!」




 ピタリ、押し込められていた味山の腕。あともう数センチで手の甲が机につくという所で、ピタリと止まった。




 ヴェーバーが身体ごと力を込め、正義の名の下に押し潰そうとする。でも、罪人は虚ろな顔でそれを見つめるだけで、もうピクリとも動かない。









「正義、そうだ、正義だ。それ、おれ嫌いなんだよ。主語がデカくて、ムカつく」






 そうだ。正義はいつも俺たちを殺そうとしてきた。だから敵だ。そうだった。






「邪魔だ、それ」





「なにを、罪人が!」





『薄汚い本性を表した、罪人に滅びを。敗北を、死を』






『味山只人に相応しい裁き()を』





 現れた正義の女神像、残酷な正しさをもたげて天秤を味山に向けた。







「罪には、罰か。違うな、おれを裁くのはお前達じゃない。正義、そうだ、てめえの身勝手で、なんとしょうもないものか」





『何』




「てめえのその安い天秤なんぞに、俺の、俺たちの罪は測れないって言ったんだよ」






 ぴ、き。




 天秤にヒビが入る。




 遺物、"正義"は見誤っていた。




 数え、間違えていた。



 味山只人の中に、棲む彼らのことを。







『天秤、私の(正義の)天秤がっーー」






「もう一度、俺の罪を数えろ。お前の秤に乗るもんならな」











『罪、状ーー』




 遺物、それはシステムだ。所有者の意思、あるいは遺物自身の意思よりも元々備わっているシステムが優先される。




 正義、それは罪人の抱える全ての罪を光の下に暴き出す。





 たとえそれが、自らのキャパシティ、天秤を壊すようなものであっても。









『罪状 加藤清正の小姓の殺害。球磨川の支配。尻子玉の蒐集』




 それは冷たく、心地よい水に生きる彼の罪。




 その罪はその水に愛される力とともに凡人が引き継いだ。




「『は?』」




 ヴェーバーと、正義。両者から戸惑いの声が。




 罪状は、続く。正義は戸惑いつつも、その存在に植え付けられた役割を止めることは出来ない。




 他者に役割の履行を求めるシステムは、自らの役割に逆らうことはできなかった。






『罪状 律令の無視。枕草子、源氏物語原本の強奪(完全なる私情)。 平忠常とともに下総の乱を起こす。尾張国の国司の殺害。多数の陰陽師の呪殺。式神の強奪、多数の呪血式の簒奪。藤原純友の太宰府焼き討ちへの参加。平将門の乱に客将として参加。呪血式による数多の天災の発動。貞観噴火の誘発。応天門の焼却。東大寺大仏の首を落とす。鬼堕ち。あべのはるあきらへ襲撃。あしやどうまんへの襲撃。大江山の大虐殺。源義朝暗殺。平清盛の暗殺。源頼朝の暗殺。鬼の扇動。壇ノ浦の傍観。他数多の時代での大量殺人』





 それは鬼に堕ちた彼の罪。数多の血に酔い、力に酔った男の罪。




 その罪は、その技の冴え、その血に刻まれた怪物狩りの業とともに凡人が引き継いだ。





「まだだ、まだある。数えろよ」




『……不明、不明不明不明不明』




 味山がつぶやく。腕を押し返していく。そのたびに、罪の女神像にヒビが入る。



『罪状、"火葬"』




 それは最も古く、最も優しい彼の罪。悼み、葬る。それは人間と動物の違いを決定づけた大罪。




 その大いなる優しい罪は、暖かい火とももに凡人が引き継いだ。







『あ、あ、ああ、あああ』





「数えろ、俺の罪を。俺たちの罪を数えてみろよ。クソ正義」






 TIPS€ 敵遺物。"正義"のキャパシティの限界を確認。罪人特性、大罪特性により正義への叛逆が可能。





 "ジャスティス(正義)"が、はっきりと震えた。




 目の前の罪人のあまりにもおぞましいソレを、ついに見つけてしまった。




『あ。ああああ、それは、らあああ、あああああえ??!!』





「ほら、数えろって。まだ、あるだろう?」




 腕相撲の最中。空いている方の腕で味山がトントンと指差すのは、人体の器官。




 他者の声を良く聞く為に、脳のすぐ近くにあるソレの名前はーー









『罪、じョう』




 ごぱり。女神像が、黒いヘドロを吐いた。



『み。み、み。み、みみみみみみみみみみみみみみみミミミミミミミミ耳みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみ耳耳耳耳耳ま耳耳耳耳耳耳耳耳。耳耳耳。みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみ



















 耳』






 それは某の大罪。本来の役割を忘れて勝手に動き始めた腑分けされた部位。




 もう止まらない。ただ、聞く為に。自分以外の全てを蹂躙する。




 そのあまりの意味のなさは、純粋な暴力とともに味山只人が己の道具とした。






 みし、みしり。




 女神像に、その天秤の両方に細かい卵のひび割れのような亀裂が走る。もう止まらない。ドロドロとした黒い液体が滲み出す。





『あ、嫌、正義はーー」





「ああ、いい音だ。もっと聞かせろ」




 耳を、澄ます。なんの意味もなく、ただ、敵の滅ぶ心地よい音を愉しむ。



 良い趣味してるな、ホント。



 味山が、ひどい笑いを浮かべた。



『正義は勝ーー」





「今度はもっと高い天秤用意しとくんだな」




『あ』





 ヒビが、全身に広がる。



 黒いヘドロを撒き散らしながら女神像が砕け散って。





「俺の、正義ーー」




「何度だって、俺は同じことを言うだろう。正義、それに対する答えはいつだって、どこだって、同じだ」





 呆然とするヴェーバー。自分の遺物が壊された、もう正義の後押しは、ない。






「迷惑だ。俺を裁くのは正義じゃなく、警察免許を持ったーー」





 容赦は、しない。




 大力は既に正義を破ったことで使い切った。だからこれは味山只人の只の、全力の一撃。



 腕に全ての力を込める。




「う。わ」




 立場は、同じ。ここにいるのは罪深い罪人と正義の執行者ではなく。









「お巡りさんじゃあああああああああおああ!! このクソボケがあああああああああ!!」




 只の、人と人だ。





「が、あああああああ?!!」






 びたん!!



 当たり前の決着。机が砕けるでも、大人の身体がひっくり返るでもなく。




 ただ、当たり前に腕相撲の決着が着いた。




 味山の手のひらが、上。ヴェーバーの手のひらが下。







 つまり。




「そこまで!! 勝者は色男!! アレフチームの味山只人だよ!!」





「おっ、しゃあああああああコラァ!! ザマぁミロ!! クソゴリ、あ、もう無理。頭、痛い」





 ばたり。



 勝利の余韻を感じる暇なく、味山は平衡感覚を失う。視界に最後に映るのは少なめの歓声をあげる一部の人々、




 それと綺麗な顔を驚愕の表情で染め上げて、壇上に駆け登ろうしてきている3人の女達だった。





 あ、やった。ドレスの隙間から胸の、谷、間ーー





 それが誰のものかは、もう味山にはわからなかった。




読んで頂きありがとうございます!よろしければブクマして是非続きをご覧ください!



<苦しいです、評価してください、あと感想も頂けるとマジで体力が回復します。ありがとう> デモンズ感



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谷間が在るからソフィじゃな(ry
お巡りさんは捕まえるだけや 裁くのは裁判官 って言うのは無粋か
凡人ソロの方の味山一周目やったんかワレェ
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