残党と遊ぼ
カンベルと共に村を出る。早く終わらせてご飯を食べたいので、気合いをいれる。
「規模が解らないから慎重にいくぞ」
カンベルに忠告されるけど、私は早くご飯がたべたいのだ。
こんな所で無駄な時間は掛けられない。それに、悪者は絶対に殺す。
「エー、無理して一人で殺ろうとするなよ」
「うん」
だけど私はもっと殺しに慣れなきゃいけない。少しでも隙ができたら、こっちが殺られるのだから。心が動かない程に慣れないと。
「エー、無理すんなよ」
「……うん」
どうしてカンベルは私の考えに忠告するように言うのかな。
「あ」
「見張りか? 二人……いや、三人か」
「一人、逃げた?」
「報告じゃないのか? にしたら、方向が街道に向かったな」
「カンベル」
「はあ。わーたよ、俺が行けばいいんだろ」
「私は大丈夫だから」
「信じるからな」
「ん、ありがと」
見張りと思う一人が逃げて、二人が戸惑ってる。いま、二人も逃げたね。
私たちが村に入った時は居なかったけど……、まあ気にしても意味ないかな。
「それよりも早く拠点を探さなきゃ」
カンベルを尻目に拠点を置きそうな、近くの森を目指す。
「何処にいるかな」
小腹を満たしながら、獣道を歩いて行く。
何人も往復していたなら、枝は折られ下草は踏み締められている。例え、複数の通り道を作っていたとしても拠点は一つ。
人間が作った道か、獣が作った道かは痕跡を見れば解る。
村の近くまでは巨体の動物は余り降りて来ないので、私よりも高い場所の枝が折れていたり、道幅が広かったりしたら人間の通り道だ。その他には、爪や牙の磨いだ痕跡や糞があるかないかでも解る。
ただ、凶作や魔物による場合は巨体の動物や魔物も森から出てくるので人間が残す痕跡に近くなる。それでも、抜け毛などは落ちていたりもするので区別は着きやすい。伊達に山で狩りをしたり遭難してきたんだ。
「これは人間が作ったものだね」
森が変に色褪せたりもしていないから、凶作出もなさそう。それに今の時期は、繁殖の時期から子育ての時期だと思うから大型の肉食動物は餌に困らないはず。岩蛇もこの間まで繁殖の時期だったしね。
道もそれほど荒れていないし、獣の足跡もない。魔物の可能性も低いだろう。まあ、魔物だったら村が既に滅んでいた可能性もある。
「拠点に食料あるよね」
悪者を殺したら食料を探そう。畑から盗んだ作物もあるかもしれない。少し食べる位ならいいよね。
「ごっはん、ごっはんー」
暫く歩いていると、道が曲がり他の道に繋がった。きっとこの先に拠点があるよね。
「おにくもたべよー」
ご飯ばかり考えていたらいつの間にか拠点らしき物が見えてきた。
木を乱雑に組み立てた小屋から笑い声や小さいながら泣き声が聞こえてくる。どうやら、拐われた人がいるみたいだね。
「周りに見張りはいない?」
気配は小屋からのみ。たんに交代時間なのか、置く必要もないと思っているのか。
「まあ、いいや」
グズグズしていたらカンベルもやって来る。数は其ほど大したことがないので、私だけでも殺れるはず。カンベルが来たら、慣れる為の数が減ってしまう。
「でも中に村人いるんだよね」
さて、どうしようか。精霊術で小屋を潰すのは簡単だけど、村人に被害が出るし、なにより慣れることが出来ない。
ならばと、辺りを見渡して幾つか石を拾い投げ放つ。
「敵か!」
「なんだなんだ!?」
ゾロゾロと男たちが出てくるね。何人かは下半身が剥き出しだけど、手には剣や斧を持っている。
「ガキ?」
「え、こいつ……」
数人が私を見て困惑しているけど、そんなことは関係ない。私が言うのは一つ。
「バイバイ」
瞬時に接近してナイフを振り切ると同時に、周囲を精霊術で攻撃する。
弱い。前に戦った盗賊ならば反撃もしてきたのに、この人たちは成す統べなく死んでいく。
「ひっ、殺さないでくれ」
下半身剥き出しの男が尻餅を付いたまま懇願してくる。
それを見下ろしながら風刃で切り刻む。
「ふう。お腹減った」
抵抗が殆どなかったからあっさりと終わってしまった。それだけ早くご飯に戻れるから、いいのだけど。戦闘訓練にすらならなかった。
「少しだけ」
村に戻るまでに空腹になるはずなので、ここで何かを食べないと。少しだけならいいよね。
そう思って小腹を満たしていると、小屋から離れた場所から音がした。
拐われた人は小屋の中だと思う。動物かな。
「あ……」
動物なら美味しく頂くので慎重に近付くと、身体を震わせている大人の男が立っていた。
村人……じゃないよね。大降りのナイフを提げているから狩人かな。でも、盗賊の拠点の近くに偶々やって来るかな。やって来るにしても、こんなに震えているし、なによりさっきの人たちと同じ臭いがする。殺した男の臭い。下半身剥き出しの男と同じ変な臭い。男とは違う、恐らく女の臭い。
なら、この震えている男は盗賊の仲間。それならば。
「バイバイ」
震えているだけで、無抵抗で死んだ男から使えそうなナイフや小銭などを回収して戻る。
食べるのに夢中で装備の回収を忘れていたのでそれを行っていると、カンベルがやって来た。
「もう終わってたか」
「うん」
その後二人で小屋から若い男女三人を救出。私と同じくらいの子ども数人はすでに死んでいた。
救出した男女も全員裸だったので、小屋にあった粗末な服を着て貰った。男一人に、女二人。女の一人は泣いているけど、残り二人は虚ろな顔で何も話さない。
「俺は三人を村に送るから、エーは小屋の物資を運んで貰えるか」
「いいよ」
カンベルは私が大容量収納出来る袋を持っている事を知っているので、先に三人を村に帰すことを優先するみたい。
カンベルたちを見送り、小屋から食料や武器、お金や数点の美術品を回収して私も村に戻る。
死体は動物が食べるだろうから放置。頑張ったから、美味しいご飯くれるよね。




