ビルマ村
遅くなりました。そして、短くてごめんなさいです。
文字どおり道草を食いながらカンベルと共に翌日のお昼前には次の村に辿り着けた。むしゃむしゃ、ちょい渋い草だね。
「ここがビルマ村だ。予定よりも時間掛かったな……」
カンベルの計算ではとっくに村に辿り着き、旅立っている予定だったみたい。知らないよ。
「取り合えずお昼食べよ」
「今まで草喰っててまだ食べるのかよ!」
「当たり前」
草なんてオヤツにもならないよ。
「それにしても人気がないな」
「みんな家でご飯食べてる?」
畑仕事にでも行ってるにしても、村には子どもやお年寄りだっているはず。なのに、誰一人外にいない。
「家からは人の気配はあるな。エーの言う通りか?」
「でも、なんか嫌な雰囲気」
なんだか暗い雰囲気を感じる。稀に精霊を通して感情というか気配というかよくは解らないけど、感じる事がある。それが村全体から漠然と感じた。
「確かあっちが村長宅だったな」
カンベルも何かを感じたのか、緊張を孕んだ顔で村長の家に向かって歩きだしたので、私も慌てて着いていく。
「取り合えず村長に何かあったか聞いてみる」
「うん」
村の入り口から程近い場所に村長の家があった。たぶんここなのだろう、普通の家だ。
「村長さん、いますか?」
扉を軽く叩きながら、丁寧な口調で話すカンベルに違和感しか感じない。
暫く待つと青年という感じの男性が扉を少し開けて様子を見て尋ねてくる。
「なんの様でしょうか」
「ここ、村長の家でしたよね」
「そうです。父は腰を痛めて寝込んでいます」
口調からも警戒をしているのが解る程に男性の反応は淡々としている。まるで敵を前に感情を抑えているみたい。
「そうか。村長にお大事にと伝えておいて下さい。それと……、手の鎌は仕舞ってください」
私からは見えないけど、男性が鎌なんて持ってるのかな。
すぐに扉を閉められるようにもしているみたいだし、本当に何かあったのかな。
「…………」
「良ければここで何があったか話してくれませんか?」
警戒をし、鎌まで持っているなら何かあったのは予想がつく。
うーん、なんか私の村を出てから色んな事があるなと、他人事のように二人のやり取りを眺める。
暫くお互いに無言だったが、男性が私に気付いてから何かを考えたのかゆっくり話してくれる。決して警戒は解かないけど、仕方がないのかな。
「そうか……。話してくれてありがとうございます」
「いえ」
「エーはどうする」
「やる」
カンベルは男性の話を聞いて、村の現状を知った。それに対して、私の行動を確認してきた。勿論、私は悪い人を殺す事をえらぶ。
「そっか。では、その盗賊に付いてはこちらが調査、可能ならば討伐します」
「……出来るなら」
畑仕事などで村から出ていた女性や子どもが盗賊によって連れ去られ、男性は殺された事件が続いた。それでも食料を得る為に村から出る必要があり、集団で村を出たが襲われ奪われた。
集団は男性だけだったので抵抗もしたが、数人殺され農具なども奪われた。集団という人数だった為に逃げ延びることが出来、相手がどんなモノか知る事が出来た。慣れた手口に殺しにも抵抗がない、盗賊だと解り村の蓄えと村内の小さな畑で食料を調達するようになった。しかし、村からでる人がいなくなると、盗賊は夜中に一軒の家を集中的に襲い略奪をするようになった。
外に助けに行こうとした人物もいたが、翌日死体が村に放置されていた。
「生き残りか、別の盗賊か」
「見たのは十人くらいだっけ。盗賊ってそんなにあちこちにいるの?」
「いない訳じゃないとは思うが……。ハンストでの大討伐から時間経ってないから生き残りと考えるべきか。十人は盗賊にしたら少ないが、襲った実行犯以外も考えると……」
カンベルが途中から私を置いて独り言として考えを漏らしている。私の考えは別にいらないの? 特に考えてないけど。
「村には泊まれそうにないし、エーが討伐する気なら見過ごせないし。どのみち消さなけりゃいけないだろうしな」
私を無視しつ、ぶつくさ言ってるカンベルは置いて村の外を目指す。暗くなる前に討伐はした方が良いよね。でも、お腹減ったな。村で食べられそうじゃないし。
「あれ、そう言えば村に入るまでに私たち襲われなかった」
「ん? ああ、今は夜に行動しているからか? 見張りはいるだろうが……」
前は畑仕事をしている村人を襲っていたから日中も行動しているはず。
「ああ、村の入り口と畑は反対方向だったか。入り口は見張りだけ……でも俺ら二人だったしな」
前は助けを求めに行った村人が殺された。村の入り口は一ヶ所だとカンベルからは聞いたけど……。たまたま私たちは見落としていただけ? それとも何かあるのかな。
「解らない。でも、探す」
「ああ、早く終わらせなきゃな。村人たちも精神的にも疲弊していつ倒れるか解らないしな」
「でも、お腹減った」
「……木の実とかで我慢しろ。エーが討伐するって決めたんだろ」
「うー」
カンベルから幾ばくかの木の実を貰い口に入れながら村から出る。
お腹も減るし、さっさと討伐してこよう。何処にいるかな。グー。
「足りない……」




