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公共浴場

「ふぅ」


 ゆっくりと私はお湯に浸かる。

 今日一日は湖の変異を調査する依頼をこなして疲れた。だけど、美味しい魚が沢山食べられて満足です。

 《水精霊》とも家族になれて嬉しかったけど、残念ながら目的の魚なり魔物は見つからなかった。

 うん、明日も魚祭りだよ。やったね。

 

「はあー、やっぱ風呂はいいな」


 湖から帰って来て、夕食前にカンベルと何時も通りに公共浴場と言う場所にやって来た。

 ここは街で経営しており、余りある水資源を《火精霊》と家族になっている精霊使いが一団となって温めてお風呂として提供している。当然有料だけど、安いので住民の殆どは利用しているらしい。お金がなければ、湖で水浴びするとの事。

 私の村にはこんな設備も《火精霊》と家族になった人も居なかったので、初めて入った時は感動してはしゃいだらカンベルに怒られた。他の子供は遊んでいたのに理不尽だよ。

 今までは村の人たちと一緒になって、近場の川で水浴びをしていたから新鮮。湯中りなんてのもした。長く入っていると、ボーとなって逆上せるみたい。それに、こんな大勢で入るのも新鮮だった。

 不思議なのは、服を脱ぐ脱衣所が男女で分かれていたこと。なんでも、脱ぐ時に見られたら恥ずかしいからだって聞いたけど、広い露天風呂の中で結局一緒になるから見られるのに。変なの。

 脱ぐ時は恥ずかしくて、裸になったら恥ずかしくないとか意味が解らないよ。だけど、自然と男女で分かれて入っているから、やっぱり恥ずかしいのかな。


「エー、今日はお疲れさん」

「うん」


 私はカンベルと共に男性の脱衣所で脱いでいるし、湯船も男性寄りにいる。

 他にも父親か兄なのか男性とやって来た女の子もそうしているから普通だよね。

 ……お父さんやお兄ちゃんか。カンベルは皆から私のお父さんに見えるのかな。私のお父さんは一人だけだけど。お父さんたちの為に早くあいつらにも同じ事しないといけないのに、私はまだ此処にいる。

 解っている。早くこの街から出て行かないといけないこと。

 でも……、今の私じゃまだ力が足りないことも理解しているんだ。人間相手ならまだ頑張れるけども、竜相手だと私は負ける。それくらいに竜は強い。それを従える人間も、やはり油断は出来ない。だからまだ、色々と経験を積まないといけないんだ。


「エー、身体洗いにいくぞ」

「ん」


 お風呂に入る前にお湯で汗は流したけど、洗い場が塞がっていた。洗い場といっても、お湯が高い壁の溝から流れてきて、それをここの桶で溜めて使用する簡単な場所。男女に分かれた洗い場にそれぞれ小さな腰掛け椅子が十個程ずつ。

 夕方過ぎの仕事終わりの時間は混むので、空いたら順次入れ替わって身体を洗っている。


「んじゃ、頭濡らすぞ」

「わかった」


 そのまま洗浄花と言う水と一緒に擦ると泡がでる花を使用して頭や身体を洗っていく。

 村では自生数に限りがあったので、たまにしか使ってなかったけど、この先の村で洗浄花の栽培をしているらしい。なので、安く購入出来て毎回泡々に洗われる。

 うん。水浴びの時はそんなにごしごしと洗わなかったからね。あと、ミルワお姉ちゃんや他の女性に洗って貰っていたから自分で洗ったことない。何よりも、泡が目に入って痛かったから頭を撫でて洗っている時は目を瞑らなきゃいけない。そうしたら、桶が見えない流せない。自然とカンベルに洗って貰うようになった。


「髪伸びてきてるな」

「後でナイフで切ろうかな」


 頭を洗い、泡を流して貰ってから口を開く。この洗浄花、かなり苦くて渋い。食べられない程じゃなくても、口に入ったら暫くは水を飲まないといけない程なので泡を流すまでは目と口は絶対に閉じておく。


「この前、綺麗に揃えたんだからな。勝手にナイフで切るなよ。あと、もったいなくないか」

「別に」


 お風呂初日に土や血で汚れてゴワゴワだった髪も、今ではカンベルの丁寧な洗浄で指通りがよくなった。

 また、ナイフで適当に切って長さがバラバラだったのも揃えてくれたのもカンベル。なにか、髪に執着があるのかってくらいに私以上に私の髪を気に掛けてくれる。カンベルがいいなら、伸ばしても良いけど戦闘には邪魔に感じるんだよね。邪魔になった時に勝手に切ればいいか。女性兵士でも髪が長い人は沢山いたから、それほど支障はないのかもしれないし。でも、訓練中は皆結い上げたりして纏めていたな。


「戦闘になる時は俺が纏めてやるから」

「任せるよ」


 考えていたのが口に出た訳じゃないのに、察知したのかそう提案してくれたので任せることにしよう。


「んじゃ、身体洗っていくぞ」

「お願い」


 首から順にカンベルによって綺麗になっていく。

 これも水綿草という水草に洗浄花を擦り合わせて身体を洗う。

 布だと泡を切るまでお湯で洗わないといけないけど、ここの湖に自生している水草を使えばそんな面倒をしなくて済むらしく、この近辺は布より水綿草を使用するのが普通みたい。使い終われば乾燥させて、燃料として格安で販売しているとか。

 これも村じゃ、素手か葉っぱで身体を洗っていたそれまでの常識を崩すものだった。綿のように優しい肌触りに泡が溢れるように出てくるのだ。素手で洗うのも良いけど、これには及ばない。ただ、王都や湖のない場所では固い布で洗うらしいので今後が心配だよ。旅に出る時は出来るだけ持って行きたい。


「背中は終わったから次は前と下半身だな」

「ん」


 よく見ると、私より小さい子どもが自分で洗っているのも稀に見る。でも、それと同時に洗って貰っているのも見るから別に良いよね。


「くすぐったい」

「ヘソ周りは相変わらず弱いな」

「うるさい」


 順繰りに足先まで洗って貰い流して貰う。うん、楽で良いね。水浴びだと立ってやるので、座って洗われるのが楽すぎる。


「よしと。んじゃ、先に入っててくれ。俺も洗ったら行くから」

「わかった」


 何時ものように、私は先にお湯に入る。カンベルはこの後、自分で身体を洗うから立って椅子を譲る。前に洗うことを手伝うと言ったら断られた。むー。洗いっこミルワお姉ちゃんで少しは上手いと思っているのに。自分の身体は洗ったことないのに、家族やミルワお姉ちゃんの身体は洗った洗った事があるのだ。えっへん。


「ふにゅー」


 顔だけを出して、たまに男の人に話掛けられたり頭を撫でられたりしてカンベルを待つ。お湯が流れてくる中央よりも端の方がやや温めなので、長時間入らないと逆上せないので初日の失態はしない。

 あの時は湯船から出されて、そのまま床に寝かされたからね。水を含んだ水綿草が額に乗せられ皆に看病されたからね。今は《水精霊》もいるから大丈夫。お湯は《水精霊》と《火精霊》の領分だけど、勢力的には《水精霊》の方が強いみたい。だから、なかなか《火精霊》と家族になれないんだよね。


「おう、お待たせ。風呂出たら、何食べに行きたい?」

「肉」


 カンベルが来たから、胡座の上に移動してカンベルに凭れ掛かる。湯船の特等席。うん、決して私がはしゃいだら事が原因じゃないはず。あの時は、子どもらしい一面も有るんだなと笑われたので股間を蹴りあげたんだっけ。そっちが原因かな? お腹の前に腕を回されて固定されているんだよね。楽で良いけど、たまに他の人が不審な目で見てくるんだよね。


「魚は昼に沢山食べてたしな」

「明日も食べる」

「はいはい」


 カンベルの方が美味しいお店を知っているから、今日のお店も楽しみだな。明日も魚祭りのはずだから、肉が食べたい。生でも煮たり焼いたりでもいいから、美味しい肉をたっくさん。


「今の仕事終わるまでは、あんまり金使わんぞ」

「うー。いいよ、自分で払う」


 盗賊団のお陰でお金は増えたからね。でも毎回一万も使ったら直ぐに無くなるよね。でも、美味しいものは食べたいし、無くなるまではいっか。美味しいもの食べよう。


「温まったか」

「うん」


 腋に手を入れられ、そのままカンベルが立ち上がり私を湯船から出るまで持って運ばれる。楽しい。


「着替えたら行くか」

「今日は何処のお店?」

「まだ決めてねえよ」


 カンベルと雑談しながら服を着て、お店で厚切りの肉を焼いて食べる。やや血が固まらない状態が美味しい。結局一万以上も使ってしまった。魚や野菜よりも高いんだよね。勿論、カンベルは自腹。

 そのあとは屋台で買い食いしながら宿に戻って就寝。

 今日から宿は替わりました。部屋が狭くなった。お金ないのかな? 宿にいる時間短いから良いけど。一つの布団を共用して眠った。途中、イビキが煩くてカンベルを追い出した。

一人称で書きたくても、三人称も混じる力不足。

地の文で説明的なのは、三人称になりやすいです。入り乱れてる。

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