村からの旅立ち
「行くのか?」
「うん」
「村に居て欲しいけど、無理だけはしないでね」
「ごめんね、ミルワお姉ちゃん」
私はコボルトのジジルと、若干十一歳で村長代理であるミルワを見上げる。
先日八歳になった私は村で二番目に若い。本当はこのまま村にいて、貢献しなきゃいけない。
だけど私はお父さんとお母さん、それにお兄ちゃんの仇を討つ事を選んだ。
村を襲ったドラゴンと竜騎士達。私にとってはどちらも家族の仇。ドラゴンは既に討伐されちゃったけど、私は害竜や悪龍を討伐して少しでも村人たちの無念も晴らしたい。死んじゃった皆はどう思うか解らないけど、私は私の復讐を果たす。村人達だってまだ忘れていない。
ううん、私よりもその怨念は濃い。当時六歳にもなってなかった私以上に絆の結び付きが強い大人達だから当然だよね。
「エー、餞別だ」
「ありがとう」
【銅のナイフ】は本来なら安物だけど、この村じゃかなりの物。基本は木や石を素材にした物を使っている。それはコボルト種の彼らも同じ。草原の獣人と言われるコボルトだけど、ジジル達は森を拠点にしているフォレストコボルトと言う種族。
罠や投擲なども駆使する彼らのお陰で、私も戦い方を習う事が出来た。
名前:エー
種族:人間種
年齢:八歳
体力:89(+355) 精力:24(+330)
腕力:28(+175) 脚力:40(+185) 知力:21(+260)
俊敏:43(+175) 抗体:27(+370) 恩恵:11(+165)
技巧:
[武器]
《短剣術》《弓術》《槍術》《斧術》《棒術》《体術》《投擲術》
[精霊]
《土精霊》《樹精霊》《風精霊》《闇精霊》《癒精霊》《疫精霊》
[向上]
《腕力小強化》《脚力中強化》《知力最小強化》《俊敏大強化》《抗体最大強化》《恩恵小強化》《視力大強化》《聴覚小強化》《嗅覚中強化》《味覚最大強化》《触覚中強化》《体力小強化》《精力小強化》《臓腑大強化》《咀嚼大強化》《不屈》
[体調]
《打撃中耐性》《刺突小耐性》《斬撃最小耐性》《毒大耐性》《熱小耐性》《冷小耐性》《飢餓大耐性》《脱水最大耐性》《麻痺小耐性》《溶解小耐性》《睡魔中耐性》《落下負傷緩和》《混乱緩和》《恐怖緩和》《体力回復》《精力回復》《消化加速》《精神安定》《完治》
[工作]
《農作》《伐採》《木工》《石工》《家事》《鑑定》《罠作》
[技術]
《隠密》《追跡》《予測》《闇眼》《解体》《調教》《騎乗》《気配察知》《思考加速》《空間把握》《鳴き真似》《威嚇》《意思疎通》《跳躍》
[特殊]
《毒喰らい》《腐食喰らい》《生物喰らい》《蟲喰らい》《不浄喰らい》《栄養吸収》《生存本能》《帰巣本能》《防衛本能》《呪怨》《怒波動》《野生》《逆境快楽》
[固有]
《身体把握》《精霊遊戯》《森の寵愛》
装備:崖山羊の服、クヌハの葉靴、銅のナイフ、センリの棘棒
街なんかで暮らす人なんかより時給自足の私たち村人の方が、幾多もの技巧を身に付けている。それは、生きる為に必要なのだから当然だと思う。
その中でもここの村人はさらに多いと思う。滅んだ村の復興とコボルトたちの支援のお陰なんだけど、本来ならこんなことになるなんて思わなかったから皆複雑な心境みたいだね。
さらに私は七歳の時に五日程森で迷子になった。その時に数々の技巧を身に付けざる負えなかった。特殊技巧なんて普通に生活してたらほとんど身に付かないしね。
食べる事と帰る事を考えて行動したら耐性も含めてとんでもない事になった。よく死ななかったものだよ。皮肉にも、再開拓当初の耐性やら何やらで死ななかったんだと思う。
まあ、全ての原因はドラゴンと竜騎士が悪い。それがなかったら、もっと平穏に暮らせたのに。
私がこんな風に大人っぽく思考するのだって、生きていく上で必要になったからだしね。でも、ミルワからしたらまだまだらしい。
新たな村長は年長者の男性だけど、頭のいいミルワは村長の補佐と不在時の代理なんてことをやっている。旦那さんであるジジルも十五歳ながら手伝ってくれているし、なんとかなってるみたい。
「まずはハンストの街に行くのか?」
「うん、そうしようと思ってる」
この村は国の最南端に位置する。北に王都があるのに、よく竜騎士が来たと思う。
ここから村を一つ越えればマンジ湖の畔にあるハンストっていう街があるとのこと。まずはそこを目的地にしようと思っている。
「バルム君とレーヨちゃんが悲しむね」
「最後には解って貰えたよ」
コボルトである二人は私と歳が近く、よく遊んだり狩りをしたりした友達。でも、この村の事と私の目的を言ったら泣きながらも理解してくれた。
「バルムはちょい塞ぎ混んでいたけどな」
「エーのこと好きだったみたいだしね」
「え?そんな訳ないよ。レーヨとの方が仲良さそうだったし」
今年で十歳となったバルム。コボルトでは成人と見なされているため、未成年の時のように遊ぶ時間が減った。本人は派遣を望んだみたいだけど、まずは自分達の村で実力を付けないと迷惑だと却下された。ちなみにレーヨは来年成人する。
「コボルトは成人早いし、最近あんまり遊べなかったんだけどね」
私がコボルトの村に遊びに行くことはあっても、成人したバルムは簡単には遊びに来れなくなった。村で罠の作り方をきちんと習っているらしい。手先が不器用だったから、余計に拘束される時間が多いとレーヨに弱音を吐いている。やっぱり二人の方がお似合いだよね。
レーヨよりも年下は何人もいるけど、私は始めにこっちに遊びに来た二人と仲良くなったので、他の子とはあんまり遊んではいない。たまに話したり、ご飯を食べるくらいだね。
「魔物には気を付けろ」
「盗賊も街の近くには出るみたいだし気を付けて」
「食べ過ぎるなよ」
「変なもの拾って食べちゃダメだからね」
「魔物なんて特に生では喰うなよ」
「お金がなくても服とか売って食べ物買わないようにね」
前半の心配はいいよ。でもなんで後半は食べ物に関しての心配ばっかするのかな?
「そんなに食べないよ」
「食べるつもりなのか」
「あんまり食い意地張らないようにね」
食べれる時に食べて何が悪いのかな?
村が滅んでからと、迷子中にそれは嫌と言う程に理解した私からしたら、食べることは生きることに直結することを学んだ。いくら《飢餓耐性》があってもお腹は空くんだし、そこに食べられる物があったら食べる。服なんてお腹の足しになんてならない。
でも、流石に裸は恥ずかしいから最後の手段だね。
「私だって、食べる以外のことするよ」
「それは解ってるがな」
「エーだしね」
私だしってなにかな。あ、眼を反らした。
結局最後はまた拾い喰いしないように言われて別れた。美味しそうな見た目じゃなきゃ、あんまり拾い喰いなんてしないのにな。
「お父さん、お母さん。エルスお兄ちゃん。私、行ってくるよ」
二人と別れて、最後に共同の墓地へとやって来た。
村人全員の死体はない。お母さん以外には、二人の身体も一部しかここには眠っていない。それでも充分。遺体が蒸発などして見付からなかった人もいるのだから。
「強くなって、悪いドラゴン倒して。そして、あの人達を殺すね」
声に出して、最後の覚悟を固める。皆、こんなこと望んでいないのかもしれない。復讐を果たしても家族は戻らない。それでも、私は自分の我儘でそれを行う。自己満足でしかなくても、私の怒りの矛先は収められない。
私はきっと復讐に取り憑かれている。村人達は心に思っても行動には移さないのだから。皆が皆、お互いに助け合って今を生きているのに、私はこの村から離れる。
小さかった私は家族以外には近所の人たちくらいしか記憶にない。その人達も死んだ。
村に未練がないのはそれが理由か。大切な居場所も人も全て喪ったから復讐に取りつ憑かれたのか。それは私にも解らない。ただ、二年経っても鎮まらない憎しみだけが私を突き動かす。
最後に私を裏山の腐葉土に埋めて、両親を助けに行ったお兄ちゃんの顔を思い出した。
泣きそうで、それでいて力強い意思を秘めた瞳は今も覚えている。頭を撫でて、「大丈夫だ」と言ったお兄ちゃんはもういない。
私は忘れない。その勇気と愛情を。
私は忘れない。家族の暖かさと、優しさを。
私は忘れない。全てを奪ったドラゴンと竜騎士達を。
強くなる。私は強くなる。いつか私から奪った者たちを殺す為に。
例え虚しくて、無意味だとしても。哀しくても、それら一切を忘れず、私は強くなる。生きていく。
「まずはハンストの街で美味しい物食べよ」
寄り道で美味しい物食べる位はいいよね?
技巧内容説明
[武器]
《短剣術》《弓術》《槍術》《斧術》《棒術》《体術》対象武器の扱いが巧くなる。腕力・脚力プラス10。
《投擲術》投擲による威力及び精度の向上。飛距離が伸びる。腕力・脚力プラス15。
[精霊]
《樹精霊》《土精霊》《風精霊》《闇精霊》精霊に語りかけ、様々な現象を発現する。攻撃や防御、補助や付与など幅広い。知力プラス10。恩恵プラス15。
《癒精霊》体力回復や怪我の治癒。恩恵が高い程に効果は上がるが、死者蘇生は不可。
《疫精霊》体力や精力を奪う。また、状態異常を与える。恩恵が高い程に効果は上がるが、即死攻撃は不可。
[向上]
《腕力小強化》《脚力中強化》《知力最小強化》《俊敏大強化》《抗体最大強化》《恩恵小強化》それぞれの強化。(最小でプラス5、最大で25)
《視覚大強化》本来の視覚距離を伸ばす。遮蔽物や環境によりその限りではない。距離が離れる程に鮮明ではなくなる。
《聴覚小強化》本来の聴覚領域と距離を伸ばす。環境によりその限りではない。距離が離れる程に鮮明ではなくなる。また、特定の音を聞き分ける。
《嗅覚中強化》本来の嗅覚領域と距離を伸ばす。環境によりその限りではない。また、特定の臭いを嗅ぎ分ける。(視覚聴覚嗅覚の最小強化距離は50で最大で250)
《味覚最大強化》本来の味覚を強め、素材まで解るようになる。(最小でなんとなく、中強化で毒物判明、最大で知っている味なら素材全て解る。料理としての味は損なわれない)
《触覚中強化》本来の触覚より敏感になる。(最小でなんとなく、中で材質理解、最大で気配を形として理解できる)
《体力中強化》《精力小強化》生命力又は精神力の向上。(最小で10、小で30、中で90、大で270、最大で710)
《臓腑大強化》堅いものや毒物なども消化できる。
《咀嚼大強化》堅いものすら噛み砕く。
《不屈》絶望に屈しない精神を得る。体力及び精力プラス100。抗体・恩恵プラス50。
[体調]
《打撃中耐性》打撃に強くなる。
《刺突小耐性》刺突に強くなる。
《斬撃最小耐性》斬撃に強くなる。(打撃、刺突、斬撃の最小で掠り傷くらいなら無効。最大で即死攻撃を重傷くらいには抑えられる。)
《毒大耐性》毒が効きにくくなる。抗体プラス15。(以外耐性同じプラス幅1➡5➡10➡15➡20)
《熱小耐性》暑さだけではなく、火炎から発熱まで熱に関するものの耐性を上げる。
《冷小耐性》寒さだけではなく、冷寒から悪寒まで冷に関するものの耐性を上げる。
《飢餓大耐性》空腹による体力・精力の低下を抑える。
《脱水最大耐性》脱水による体力・精力の低下を抑える。
《麻痺小耐性》麻痺が効きにくくなる。
《溶解小耐性》皮膚が溶けたり爛れたりしにくくなる。
《睡魔中耐性》眠気を耐え、活動しやすくなる。ただし、寝なくてよくなる訳ではない。
《落下衝撃緩和》高所からの転落に対し衝撃を緩和する。脚力プラス5。
《混乱緩和》混乱に陥りにくくなる。知力プラス5
《恐怖緩和》威圧に対して怯みにくくなる。知力プラス5。
《体力回復》《精力回復》体力または精力の自然回復を速める。
《消化加速》消化しにくい物の消化時間を速める。抗体プラス5。
《精神安定》緊張・恐慌を和らげる。精力プラス50。知力・恩恵プラス10。
《完治》どんな怪我も病も治る速度が上がる。抗体プラス50。
[工作]
《農作》栽培から採取まで幅広く器用になる。腕力・脚力プラス20。
《伐採》木を切る精度が上がる。腕力・脚力プラス15。
《木工》木を使う製作が器用になる。腕力・知力プラス10。
《石工》石を使う製作が器用になる。腕力・知力プラス10。
《家事》掃除、洗濯、裁縫、料理が器用になる。体力プラス25。知力・俊敏プラス10。
《鑑定》素材や道具などの詳細を理解できる。知力プラス20。
《罠作》罠を作ったり、発見や解除などの技術が扱える。知力・俊敏プラス10。
[技術]
《隠密》気配を隠しやすくなる。俊敏プラス10。
《追跡》痕跡を探しやすくなる。俊敏プラス10。
《予測》対象の行動を把握し、次の行動を絞れる。知力プラス10。
《闇眼》暗闇でも見透せる。知力プラス5。
《解体》どの部位を切ればいいのか理解できる。腕力・知力プラス10。
《調教》動物や魔獣などを従え易くなる。知力・俊敏プラス15。
《騎乗》姿勢を安定しやすくなり、指示を伝わりやすくなる。知力・俊敏プラス15。
《気配察知》薄い気配や隠密に気付き易く。知力・俊敏プラス5。
《思考加速》思考速度が上昇する。知力・俊敏プラス15
《空間把握》景色を感じとり、地形を含めて配置を理解できる。ただし、視界に入る範囲のみ。知力・恩恵プラス15。
《鳴き真似》一度聞いた音を発する事が出来る。ただし、聴覚領域および発声器官に左右される。知力プラス5。
《威嚇》声に力を乗せて怯ませる。知力プラス5。
《意思疎通》言語を使用せずに意思を通わせられる。知力・恩恵プラス20。
《跳躍》本来よりも高く跳び上がれ、着地時の衝撃を緩和する。脚力・俊敏プラス5。
[特殊]
《毒喰らい》毒物を摂取しても犯されない。抗体プラス20。
《腐食喰らい》腐敗した物を摂取しても腹痛にならず病気にも耐える。抗体プラス25。
《生物喰らい》要加熱などの加工を加えず摂取しても、腹痛にならず病気に耐える。抗体プラス15。
《蟲喰らい》昆虫や寄生虫などを摂取しても、病気にならない。抗体プラス10。
《不浄喰らい》排泄物や分解蟲を摂取しても、腹痛にならず病気に耐える。抗体プラス30。
《栄養吸収》土や草木から栄養素を吸い出せる。抗体プラス25。
《生存本能》生きる為にあらゆる事に罪悪感が緩和される。体力・精力プラス100。
《帰巣本能》自分の拠点への道筋を理解できる。脚力・知力プラス50。
《防衛本能》攻撃に対して反射的に防御・反撃しやすくなる。俊敏・抗体プラス50。
《呪怨》相手に呪いをかける。精力プラス50。
《怒波動》怒りにより身体能力が向上。ただし知力・恩恵は比例して低下。
《野生》動物的行動に抵抗・羞恥が喪われる。体力プラス100。腕力・俊敏プラス25。知力マイナス20。
《逆境快楽》困難・絶望状況になる程身体能力が向上し、感情も反転する。
[固有]
《身体把握》自分の能力や状態を把握できる。
《精霊遊戯》精霊との絆が結び着き易くなり、能力の強化を行う。
《森の寵愛》樹精霊の加護を受け、森林に於いて身体能力が10%上昇する。




