52.魔法じゃないですけど何か?
ダリヤが魔力を感知し。それに影響されたのか1時間もしない間にセシルが。それから数分遅れでフィネークが感知してきた。
俺は感知するだけで1か月近くかかったから、それと比べればかなり優秀だな。
……………俺より才能あるんじゃないかという意見は無視だ。そんなことは俺が認めない。
「ということで次のステップに入る」
「分かりましたわ。といっても、何をするんですの?」
「魔力は感じられるようになったわけですし、もう魔法を使うんですか?」
「もう魔法使えるようになるの!?楽しみ!」
全員期待したような眼で俺を見てくる。
もう魔法を使い始めることができると考えたようだ。今までも使えてこなかったわけではないが、やはり俺が使う魔法と一般的な魔法では次元が違うからな。俺の言う魔法は自分たちが一切扱えないと認識しているのだろう。
では魔力も感じられるようになったことだし、3人が言うように魔法を使う練習を、
「しないな。まだまだ魔法を使うには無理がある」
「「「えぇ~」」」
3人から不満の声が上がる。
まあ、派手なことができるようにあると言われていざ練習を始めてみたら地味なことばかりってなったらそんな反応にもなるよな。
「じゃあ、いったい何をするんですの?魔力を感じられるようになったから、魔力の操作とかの練習でもしますの?」
「とりあえずそうなる、といいたいのだが、それと並行して他にもやってもらいたいことがある」
「ほかにも、ですか?」
「ああ。今回魔法を3人に教える1番の目的は護身だからな。護身用の技術を身に着けてもらう」
「なるほど?」
よく分からないようで、セシルが首をかしげる。
他の2人は何となくの予想をしているようだな。それぞれの属性に合わせた防御系の魔法を教わるんじゃないかとか、結界の張り方を教わるんじゃないかとか。
良い線を言っているものから完全に的外れなものまで様々。
「今回教えるのは、魔力の消費が激しい代わりに確実性の高い防衛手段だ」
「ん?そんなものがありますの?」
「ああ。一応な」
俺でも1時間持たせられるか怪しいくらいの技術だ、
3人も数十分保たせることができればいいくらいの技術だな。
ただ、フィネークは兎も角セシルやダリヤの立場であれば数十分あればどうにかなる。
「やり方は単純だ」
「ということは、練習は必要ないんですの?」
「その通りだ。なにせ、全ての魔力を出せるだけ出すというものだからな」
「「「……………は?」」」
全ての魔力を出せるだけ出す。
この言い方がそのまま正しい物かといわれると少し難しい部分はあるが、基本的に間違ってはいないと思う。
「え?出せるだけって、そのままですの?」
「何か出し方にコツがある、とかですか?」
「魔力をそのまま、ってこと?」
3人は意図がわからないようで首をかしげている。何か言葉通りではなく、その裏に隠れている技術などが聞きたいといった感じだな。
だが、
「そのままだ。ただ自分の体の中にある魔力を、出せるだけありったけの力で放出する。これで、相手の魔法なんかは大概防げるぞ」
「「「えぇ?」」」
俺の言葉に、今日何度目か分からない3人の困惑した表情が。
まあ、魔法に対して魔法の防御をというのは考えたことがあっても、魔力をそのままなんていう何とも効率の悪そうなことは聞いたこともないだろう。
ただ、
「下手に使えない魔法を覚えるより、魔法から身を守るにはこれが1番だ。数段格上の相手でもこの技術さえうまく使えれば30分以上無傷で生き残ることができるだろう」
「そ、そんなに凄い物なんですの?」
「そうだな。魔力の出し方にもよるが、基本的にこの技術は体の全体から魔力を放出する。そのためどこにも穴ができるということもないし、細かい穴をあけようにも全体的に圧が強い。それこそ俺の魔法も防げるだろう」
素人に覚えさせるには1番大切な技術だと思われる。
俺もこれがなければ死んでいたという場面があったからな……………ちなみにその死にかかった理由が、この技術を練習するうえで強い魔法に対抗する必要があったからとかとかいうことだったとかいう記憶はない。そんな本末転倒な記憶、ないったらない。
「それじゃあやっていくぞ?魔力操作の技術も一緒に習得していくことになるから、甘く見ずにやれよ?」
「「「は~い」」」
3人に魔力を開放させる。
それぞれ体から薄っすらとだが魔力が漏れてくるが、まだまだ防御に使うには足りないな。まずまともに魔力を操ることができないから、放出させることも難しいのだ。
水道の使い方が分からず、叩いたり引っ張っていたりしたらちょっと水滴が垂れてきたみたいな状況だと考えてもらいたい、
「で?どうだ?魔力を操っている感覚は出てきたか?」
「いや。まだちょっとそこまでの感覚はないですわ」
「そうか。まあ、実際特にうまく操れているのは誰もいないから感覚通りだと思うぞ」
「なんですかそれは!?身もふたもないですね」




