46.自爆されましたけど何か?
色々と試してみたのだが、三半規管を刺激するというのは効果があるようだった。
直接的にキメラへダメージが与えられるわけではないのだが、振り回したりしてキメラも反応できないくらい激しく動かしているとキメラがしばらく動きを遅くするのだ。
気持ち悪くなっているのか目が回っているのかは分からないが、どちらにしても非常にこちらにとってはメリットがある。
「振り回して弱らせてから、弱そうなところへ強い攻撃!!」
こういうこともできるのだ。
キメラも動きを遅くすると同時に微妙に力が抜けた、ぐったりしたような状態になるので、そこで固くない部位に強い攻撃を仕掛けるのである。
これはなかなかダメージを出せて、キメラの体へ数多の穴をあけることに成功している。
そして三半規管への攻撃に加えて、
「窒息だぞ。せいぜいもがき苦しめ」
周囲の空気を薄くすると、これでもキメラは動きを遅くする。
真空にして気圧なども利用できればよりよかったのだが、残念ながらそれをしてると魔力が足りなくなりそうだったからやめた。今はただ酸素が少なくなってるだけだな。
これでも生物としてそういうものを必要としている部分があるようで、いくつかの部位が力を失っていってるんだよなぁ。
「この2つの組み合わせで、キメラの弱体化は図れた。後はいかにしてとどめを刺すのかが大事になるな」
とどめの刺し方に関しては、最悪戦闘艦からの攻撃に任せてしまっても良いかとは考えている。動かなくなった部位が多いから切り取ったりもできるようになっていて、もう少し時間をかければキメラの体の多くを切り離してしまえそうなのだ。
切り離せたらサンプルがいくつも手に入るということになるから、正直それ以上残す形にこだわる必要がなくなるんだよな。
残った小さな部位にこだわって時間をかけるなんてもったいないにもほどがあるだろう。
「貴重なサンプルではあるが、さすがに全く弱ることのない部位にまでこだわる必要もないんだよな」
そんなことをつぶやく俺の前には、いくつものキメラの部位が切り離されて運ばれてくる。
この切り離された状態でも動くなんて言うことはなく、ただのサンプルへとなり下がっていた。
「さて、あと10分くらいやれるところまでやって、最後は味方に片づけてもらうか」
単純作業に近い状態になったので、俺は適当に近場のがれきへ腰かけつつ10分が過ぎるのを待つ。
そうして完全に油断した瞬間、
「っ!?」
俺の下へ魔力が伸びてくる。
練り込まれた魔力が闇へと変化しながら俺の元まで伸びてきて、
直後、キィィンッ!とっ耳に響くような音を立てて爆発が起こった。地面には数滴の血が垂れており、
「……………予想通り、隠れていたか」
「くっ!分かっていたのか!!」
俺の耳に入ってくる、悔しげな声。
どうやらまだ敵が残っていて、俺を狙撃しようとしてきたようだった。何となく予想はしていたから、
「しかし、電磁砲を受けてもまだ生きているとは。すさまじい生命力だな」
俺は味方に電磁砲で攻撃をさせた。俺のことを射程にとらえられそうな場所を狙わせて、な。
結局ギリギリのタイミングとなってしまったが、間に合ったからいいだろう。
「たとえ命があろうと、貴様に傷を負わせられないのであれば、貴様の命を奪えないのであれば意味はない!」
「そうか?お前の命があれば、こちらとしては情報を引き出せるしありがたいのだがな」
敵としてはここで生き残ったとしても俺には勝てないことが分かっているようで、こちらをにらみつけてくる。ただ、こちらとしては尋問なんかをして情報を引き出せるし生き残ってくれて万々歳、
そんな気持ちを込めてニヤッと笑って見せれば、
「誰が貴様らなんぞに話をするものかぁぁぁ!!!!!」
魔法を使う上で、1番強烈な威力を出す技。
それが何かといえば、やはり自爆だろう。自身の命を代償に引き起こす自称は制御こそできないものの非常に強力な効果を出してくれる。
俺たちに尋問などされまいと、そしてあわよくば俺を巻き込みたいと自爆する敵に、
「あぁ。自分から消えてくれて助かる」
俺は小さく礼を述べ、瞬時に後方へと退避する。それと共に、キメラを敵のいる場所へ放り投げた。
直後、黒いドーム状の何かが形成され、ドーム内とその周囲にあった俺の魔法を完全に消し飛ばす。
まあ、正直に言えばこの行動は非常に助かった。
俺も魔力がかつかつだったし、はっきり言ってまともにあいつと戦えた気がしない。どうにか自爆でもしてくれないかと思って口車に乗せてみたのだが、うまくいったようだ。
ちなみに、キメラに関してはこの自爆に巻き込んで消滅させてやるつもりだ。
少し前にもいったが、サンプルはすでに奪い取れたからな、
「さて。自爆した敵兵は確実に息絶えてるだろうが、キメラの方は……………」
流石にあの高威力の自爆を受けて生きているはずがない。
俺はそう思ってやっと迎えられる終わりに笑みを浮かべ、
「ガアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!」
「………まだ生きてやがるのかよ」
げんなりと肩を落とすことになるのだった。




