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24.落ちましたけど何か?

戦争中、よくハイになってしまい怪我などをしても気づかないものがいる。いわゆるアドレナリンドバドバという状態だ。

俺はあまりそうなったことはなかったし、常に戦闘中は落ち着くように心がけているのだが、今日初めてと言って良いほどその「最高にハイってやつだぜ!」というのが実在をするのを実感した。


え?何があったのかって?

それは、



『落ちろ!落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!』


『………キンキンしますわ』

『もう私たちの声も聞こえてないですね。相当自分の世界に入り込んでそうです』


狙撃用であるはずのレーザー砲が狙撃とは思えないペースで連射される。それとともに発せられる声からは、荒れ狂う激しい感情が読み取れた。

しかしその荒れ狂う感情とは裏腹に、その狙撃は確実に相手のブリッジを破壊し指揮系統をつぶしていっている。

結果と読み取れる情報の違いから受ける印象は、狂戦士(バーサーカー)。正気を保てているとは思えない言動の数々に対して確実に出てくる結果は、まさにそれだった。


『フィネーク、疲れてるんですね』

『かわいそうに。あそこまで行くと少将に慰められるだけでは足りないんですのね』


現在フィネークが専用機に乗って戦っているのだが、彼女が、というか彼女の口調と戦い方かなり荒れているのだ。

普段のおとなしそうな主人公らしい口調や。落ち着いて1発1発丁寧に使っていく戦い方は今ここから消え去っている。


「長く軍に身を置くものとしてはどうかと思うよな姿ですが、結果は出してますからね………」

「フィネーク。それくらい疲れているのが分かってれば少将ももっと激しく慰めてあげたはずなのに」

「だよね。きっとあんなところからあんなところまで一晩中少将が」


「お前たち、仕事中だぞ」


心配する声が部下からも上がっていたのだが、途中で変な方向性に行ったので思わずにらんでしまった。

フィネークが荒れてこそいるものの結果を出しているので、部下たちも気が抜けてしまっているのだろう。

ただ言わせてもらえば、それは油断、


「っ!敵防衛部隊に動きが見られます!」


「さすがに今の防衛体制じゃ対処できないと考えたか」


俺としては予想通りに、敵が対応してきた。防御能力の高い船だけでは俺たちを対処しきれないと考えたようで、速度のある船を送り込んできたようだ。


「隊長とダリヤ様に連絡を。訓練生には警戒するよう伝えろ」


「「「「イェッ、サー!!」」」」


速度で勝てるわけではないが、多少速いくらいならセシルやダリヤでどうにでもなる。防御力特化の今相手をしている船ほどではないが、こちらも問題なく対応できるだろう。

ただ、フィネークの方に向かわれると危うい可能性がある。フィネークはダリヤにジェット・スト〇ーム・アタックされてやられたように数で押されると対応しきれないからな。


「少将」


「どうした?」


「そのぉ~………おそらく自分の世界に入っちゃっててフィネちゃん(フィネークの愛称)分かってないかも」


「なるほど………」


頭の痛い話だ。

ストレス発散も兼ねているだろうから放置していたのだが、まさかここでそれがあだとなる可能性が出てきてしまうとはな、

まあでも、フィネークの方に敵が教え寄せることなんてないだろ。




………もちろんそんな考えはフラグだったぞ。


「完全にフィネークちゃんを狙ってますね」

「フィネフィネロックオンされてるねぇ~」

「しかも、当の本人はそれに気が付いていないという………」


あちゃ~と、部下の数人が手を額に当てた。

部下たちが言うように、敵は完全にフィネークを狙っている。というか、フィネークしか狙っていないとすら言っていいだろう。

何故狙われているのかという理由は不明だが、


「「「「不幸だね~」」」」


可愛そうなほどに彼女は不幸だった。

王子に、攻略対象に付きまとわれ。それによってたまったストレスが爆発すれば敵から狙われていることに気が付けず。


「………………はぁ。仕方ない。動くぞ」


「「「「イェッ、サー!!」」」」




《sideフィネーク》

あんなに少将に、ゴトー君に慰めてもらったというのに。みんなに気を使ってもらったというのに。それでも私はこの気持ちを抑えられなかった。自分が、抑えられなかった。

その結果が、


「あ~。何やってんだろうなぁ私」


私の専用機から打ち出されるレーザー。それが、近づいてくる小型艦の一部を削るけど、そんなの氷山の一角。

どうしてかは知らないけど私を仕留めるためにやってくる敵艦は、数隻沈めるくらいじゃ終わらないほどに多い。


あんなに訓練したのに。あんなに数で攻められたら私は弱いとわかっていたはずなのに。

それなのに私は、見えてなくて。


「死ぬ、のかな」


これは他の誰の所為でもない。間違いなく、私の責任による死。

………いや、ちょっと殿下とか公爵家の人たちのせいかもしれないけどね。


でも、どちらにせよ私は痛感させられる。これは私の不注意により、私の未熟さにより引き起こされる。私の人生の幕引きだって。

スローモーションみたいにゆっくりと時間が流れて、いくつもの光が私に届く。

次の瞬間にはもう私は、完全に落とされていた。









『………随分と今回はミスが目立つな。訓練生」


「っ!少将!!」


ゴトー君に。

今まで最終的には諦める予定だった気持ちは、もう止められない。

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