67.感動は台無しですけど何か?
俺が大型艦やら数隻船が集まっているところやらを狙って攻撃を仕掛け、注意をこちらにひきつけたりしたこともあって基地は味方が完全に破壊したようだ。………………まあ、俺の活躍に関してはほとんど意味がなかったと思うがな。すでに俺がきたときには基地のシールドははがれていたし。
「では、おとなしく逃げるとするか」
「はいっ!」
嬉しそうにフィネークがうなずく。
一仕事終わってうれしいのだろう。だからこの輝くような笑顔は、俺の暴れまわるような運転がきつかったとかそういうことではないはずだ。………………はずだ。
自己暗示をかけながらしばらく逃げていると、次第に追手の数も減ってくる。今の速度では追いつけないし、もし追いつけたとしてもそのころにはこちらの国の領域内に入ると考えたんだろう。
基地を破壊するとなると、相当な計画をこっちが考えてきたと予想しているだろうからな。もしかしたら、どこかに予備兵力を隠しているなんて勘違いされた可能性もある。
まあ、どちらにせよ。
「逃げ切れたか」
「ですねぇ~。どうなることかと思いましたけど、何もなくてよかったですぅ~」
油断はしないが、抜ける緊張は抜いておく。俺とフィネークは、椅子に座り、背もたれに体重を預けた。
ついでにというか、そういえばあまり気にしていなかったと思い一応艦内にいる捕虜や奴隷たちの安否も確認した。激しい運転をしたため数人は気絶したり失禁したり等々しているが、大けがをしたり死亡したりしたものはいなさそうだ。
「ドワーフも生存確認問題なし。隊長の怒りの矛先が小官に向くということもないな」
「心配するのそこですか!?」
俺のつぶやきを聞いたフィネークが驚いている。
ただ、俺としてはセシルと事を構えたくはないんだよな。しかも、こんなくだらないところで。セシルの許せない相手を誤って俺が殺してしまったから関係悪化、なんて間抜けすぎて精神的にきついぞ?
俺何やってんだろ………って気持ちになって3日くらい何もしたくなくなるはずだ。
「さて、ではそろそろ艦隊全体のことも把握していく。通信をつなげるぞ」
「わかりました」
艦隊のほうと連絡を取り合う。
一応副官として、全体の把握をできるのならばしておいた方がいいからな。
まず、今回フィネークを救出するにあたって艦隊には近くの基地で陽動を行ってもらっていた。俺が基地を攻めたら近くから援軍がきた、なんてことになったらさすがに逃げられないからな。
そこで時間を稼いでもらったりいろいろやってたらいつの間にか基地を破壊するところまでいっていたが。
で、そんなことをした結果出たこちらの損害はないなんてことはない。
あたりまえだよな?ずっと無傷で戦い続けられるわけがないんだ。
ということで詳しい損害なのだが、主な損害はダリヤが来るにあたって建造された大型艦だ、あの、攻撃用の武装を一切搭載していないあれだ。
やはりあの船は敵から狙われやすいようで、何度も接舷を仕掛けられたらしい。ほとんどが失敗だったのだが、何度もやられるとさすがにシールドもなくなってしまって最後には3回ほど攻め込まれたそうだ。
ただ、すべて中にいたセシルとダリヤの護衛により撃退されたようだが。
『現在はスキャンを念入りに行なっています。発信機などの類もいくつか確認されておりますので』
『そうか。そちらはしっかりとしておけ。これに関しては何度行なってもいいはずだ』
『わかりました』
発信機とか、本当に怖いからな。それが1つ仕掛けられているだけでいろんなことがばれてしまうし、どれだけ用心しても悪いことはない。
俺たちはそんな風にして事後処理をしたり情報の共有なんかをしたりして、帰国していった。
そして、
「大佐!邪魔ですわ!どいてくださいまし!」
「大佐!どいてください!そいつを殴れません!!」
………おもしろ、じゃなくて、面倒なことになった。
帰国後船を港に泊めたのだが、すぐに先に戻ってきていたセシルとダリヤが乗り込んできたのだ。そして、例のドワーフを発見したところで襲い掛かりそうにあっため、俺が体を張って止めているのである。
まるで、弁慶が義経を守って仁王立ちするように。
「隊長。ダリヤ様、落ち着いてください。まずはご友人との再会を喜ぶのが先なのでは?」
「「うっ!」」
さすがにそう言われると2人もこのままではいられない。
すぐに近くにいたフィネークによっていき、
「よかったですわ!本当に!!」
「ええ。つらかったですね。フィネーク。でも、もう怖くないですから。もう大丈夫ですから………」
「あ、あぁ~。2人とも、ありがとうございます」
フィネークに抱き着く2人。感動の再会といったところだろうか。
だが、
「さて、では殴りますわ」
「ええ。殴りましょう。この恨みを晴らさなくては」
「ちょ、ちょっと待ってくださぁぁぁぁい!!!!!!」
いろいろと台無しになった。
セシルとダリヤにセリフを言わせたかったがためだけに主人公の階級は大佐のままにしていました。




