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聖なる飲み物だと気がつかない聖女フィレーネのカフェ経営 〜聖女を追放させた姉妹は破滅へと真っしぐらです〜  作者: よどら文鳥


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21話

「簡単なことだ。私もフィレーネ殿に会ってみたくてな」

「あ、ありがとうございます。改めまして、フィレーネと申します。カフェチェルビーを始められたのも、陛下のおかげです」

「ん。まぁほとんど息子のレリックがキミを推してくれたからだがな。ところで、カフェラテやラテアートの技術も真似てみるのか?」

「はい。許可をいただけるのであればぜひ!」


 美味しいなぁと思っていたお菓子も飲み物も、その手のベテランさんが作っていたらしい。

 王宮に来るたびに用意してもらっていたのだ。報告だけなら私以外にも出入りしている人はいる。私だけやたらと待遇良くないか?


「ところで、カフェチェルビーの業績はどうなっているのかね? レリックからは大方聞いているが、今回はぜひフィレーネ殿から聞かせてほしい」

「は、はい。今週は――」

「それでは、私は一度失礼します。フィレーネ様、また改め、責任を持ってご教授させていただきます」

「ありがとうございます!」


 応接室から使用人さんは退室した。

 あれ? 使用人だし応接室に滞在しているのが普通だと思っていたのだが……。

 まぁいいか。使用人さんとはまた後で話すことにして、本来の目的である今週の売り上げの報告をする。


「ほう、先週の報告に比べても急激に上がったのだな」

「はい。みなさまが口コミで広げてくださったようで、おかげさまでお客さんがいない時間はなくなりました」

「なによりだ」


 立地的にも申し分ないところで営業させてもらっている。

 感謝の気持ちも含めて、今回は前週より多めに採れたての茶葉や豆を持ってきた。


「こんなにもらって良いのかね?」

「もちろんです。また来週も収穫したものを持ってきます」

「大変助かる。フィレーネ殿からもらったお茶やコーヒー、紅茶を毎日飲んでいたら、元気になっていてな。もはやこれなしでは生きていけぬ」


 さすがに大袈裟な……。

 毎日通ってくれるようになったお客さんも似たようなことを言ってくれるし、ありがたいし嬉しいことではある。

 来週はもっと多めに茶葉を持ってくることにしよう。

 店で出す分と収穫できる量を考慮しても、そろそろ余裕がなくなってくるが、まだ許容範囲内だ。


「国王陛下ならびにレリック殿下には感謝しても足りないほどです。おかげで王都でカフェを始めることができたのですから」

「そればかりはレリックに言ってくれたまえ。あやつが押してくれたのでな。今となってはここまで素晴らしい者があの場所で店を始めてくれて嬉しく思う」

「そんなに褒めていただかなくとも。もったいないお言葉……」

「本心だよ。ひとつの心配事さえ除けばレリックの嫁にしてほ――」

「父上っ!」


 レリック殿下が応接室に入ってくるやいなや、いきなり大きな声を出すものだからびっくりした。


「来たか。今ちょうどおまえのことを褒めていたところだ」

「いえ。全てはフィレーネ殿の努力と一生懸命さが成果を出したと言って良いでしょう。私はただ、そのための場所を提供したにすぎません」


 その場所のおかげで上手く軌道に乗りはじめたのだ。

 レリック殿下がなんと言おうとも、こればかりはずっと感謝し続ける。


「ところで、先ほど陛下はなにか心配事とおっしゃっていましたが……」

「あぁ、実はな。フィレーネ殿の本店へ足を運んでみたのだよ」

「え? 本店……?」


 王都でやっているカフェチェルビーが本店のつもりである。

 もちろんどこかに本店を構えているわけではないし、高原の三姉妹カフェとも完全に縁を切っている(無理やり切らされた)ため、なにか勘違いをされているのではないかと思ってしまった。


「カフェチェルビーが本店です」

「なんと。フィレーネ殿は高原の三姉妹カフェの者で、支店としてやっていたわけではないのか?」

「ち……違います。実のところ、高原のカフェとは縁が切れてしまい、それで私は単独で王都でカフェができないかと探していまして……」


 これはマズいことになってしまったかもしれない。

 陛下やレリック殿下は、私が高原の三姉妹カフェのひとりだからという理由で立地条件の良い場所を提供してくれたのかも……。

 だとすれば、すぐに立ち退かなければならないのだろうか。

 だが、こればかりは言いわけもできない事実。


「フィレーネ殿は、高原の三姉妹カフェの者かとばかり思っていたのだが」


 今さら誤魔化すわけにはいかない。

 国王陛下やレリック殿下には、正直に話すことにした。

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