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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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晴れのち曇り



 俺を"信奉する会"とスチュアート殿を"讃える会"。口論までなら何とかなったものの、令嬢が平手打ちし合うというキャットファイトじみた揉め事があった結果、俺の評判は今かなり悪いらしい。

 ここぞとばかり敵派閥がイキイキと悪口言い触らしてんだろうなぁ。



「改めて、申し訳ありませんでしたアマデウス様……エーデルを止めることが出来ずふがいなく思っております」

「同じく……言い訳になりますが、同じクラスでなくなるとやはり目が届かなくなる部分が増えまして……」

「いえいえ、二人は別に彼女の保護者とかではないんですし……もう周囲から散々怒られたでしょうから、あんまり責めないであげてください」


 しゅんとして俺に謝るアルピナ様とエンリーク。今回のことはこの二人とエーデル様のクラスが離れた弊害と言ってもいいようだ。

 

 この二人は多分どちらかと言えば推し(俺)と比較的冷静に向き合えるタイプで、古参ファンとしても信頼されているからこそ会のまとめ役に納まっていた。 

 しかしエーデル様は古参というのもあるがおそらく熱量の多さで周囲に認められているタイプ。そういうタイプは感情が高ぶった時過激になる可能性を持つ。ストッパーになれる二人が近くにいなくなった結果と考えてよさそう。


 一応、ジュリ様と俺が直接『気持ちは有難いが暴力はダメですよ、今後気を付けて』と丁寧なお説教をした。こっちの気が引けるくらいめちゃくちゃ落ち込んでいた。


「幸い、と言っていいかはわかりませんが……"讃える会"はもうほとんど会の体を成していません。近々なくなるでしょう」

 アルピナ様の台詞に頷く。彼女も俺と同じくあの会が長続きするとは思ってなかったようだ。

「まあ、そうでしょうねぇ」



 俺の考える、"信奉する会"と"讃える会"の決定的な違い。

 それは――――――ガチ恋勢の多さである!


 "信奉する会"にガチ恋勢はまずいないと考えていい。

 昔はいたとしても既に退会してるか気持ちを切り替えてるだろう。俺は婚約して何年も経ってるしジュリ様との仲も円満、第二夫人を堂々と娶るような立場でもない。

 純粋に俺や俺の音楽活動を支持してくれているか、俺の楽師のファンか、友達が入ってるからとかノリでとかもあるかもしれんが、基本的にそういう人達で構成されているはずである。中には俺とジュリ様をカップリングとして萌えてる人もいるっぽい。エーデル様はおそらくそれ。


 しかしスチュアート殿の方にはそんなエンジョイ勢が入る余地が少ない。

 アイドル戦国時代であった日本でも『会いに行けるアイドル』というコンセプトは成功していたが、学院のお嬢様達にとってのスチュアート殿はそれを超えた、『結婚できるかもしれないアイドル』である。

 現代日本でさえ無理とはわかっててもアイドルと結婚したいと夢想する者はいたのに、そんな可能性がわずかでもマジである相手に夢を見ないわけがない。正式な婚約者が決まるまでガチ恋勢は皆ライバル同士。恋の前に友情は脆いなんて言うつもりはないが、組織としては不安定極まりないだろうなと思っていた。



「"信奉する会"には今まで散々お世話になってますし感謝しかないですよ」

 ホントに。改めて礼を言う機会も少ないからすかさず感謝しておく。

「そう言っていただけると励みになりますわ……社交界に出た暁にはわたくし達、決してこのような状況には甘んじておりませんので、御安心ください」

「ええ、デウス様の理不尽な噂など一瞬で潰せるように努めますとも」


 そこまでしろとは思ってもないし言ってない。二人とも目が軽く血走っててこわい。

 俺のため、だけではなくエーデル様を追い詰めたこの状況にも腹が立ってるんだろうけど。



 ……"讃える会"会長シモーネ嬢と顔を合わせた時のジュリ様も迫力あったなぁ。


 キッとした顔のカリーナ様とじっとりした目のプリムラ様を率いて(別に率いてるつもりはなかったかもしれんが)長い黒髪を靡かせ、ツンと軽く顎を上げて見下すような紅い瞳をしたジュリ様は――――


 ――――――――すごく………悪役令嬢っぽかった!!


 全然悪役じゃない、むしろ俺達は濡れ衣を着せられた被害者側なのに何だかとても悪そうだった。俺個人の感想としては『強そうでかっこいいな』だったが他の人達には大分怖がられていた。


『面白い推理ですね探偵さん、小説家になれますよ』的なことをつい言ってしまった時は(あっ、これやらかしてる奴の台詞だ!)と謎に墓穴を掘った気分になった。

 もしかして俺達って悪役に見えてる……? 後輩をいじめてるように見えてるのか……?? と心配になった俺は弁解しながらジュリ様とイチャラブタイムに入った。仲良しで幸せだから私達嫌がらせなんてしませんよ~~~というアピールである。

 やり過ぎるとふざけてるように見えてしまうかな、ともちょっぴり危惧したがジュリ様もノリノリだったし皆は一旦冷静になったみたいだったしOKだろう。


 ジュリ様が『浮気したら……軟禁しちゃうぞ❤』とヤンデレみたいなことを言い出したりして、やっぱり俺達ポジションとしては悪役かも……と思ったりなどした。


 多分本気ではないだろう。俺浮気しないから本気でも別にいいけど。

 哀しいことだが……ジュリ様は自分がストレートに『彼を信じてるから大丈夫!』とか言っても通用しないとわかってるのだ。それだと『騙されてるよ』『信用しすぎ! 絶対浮気してるよ彼』みたいな反応をされるのが目に見えているのである。

 だから『こうやって束縛してるから大丈夫なんです』というポーズを取らざるを得ないのだ。

 ある意味、本当に悪"役"令嬢みたいなものかもしれない。



※※※



 婚約祝賀パレード前日。


 俺はジークと一緒にネレウス様と面会へ。ジークに隣室に待機を命じたネレウス様はソファの上で姿勢を崩して斜めになった。そこはかとなくダルそう。


「……やっぱり、また限界まで予知しまくってるんです?」

「そこまで無理はしていないが、なるべくな。おかげで殺傷が起こる大体の場所は割り出せた」


 国全体の命運を握っていた時よりは切実ではなかろうが、無辜の民の命がかかっている。予言者は結局これからもありったけの魔力を駆使して未来を探り続けていくのかもしれない。

 ……体に悪そう。

 素晴らしい、有難いことなんだけど、個人的には良くないな。不健全だ。


「大変な事が起ころうとしてるんだからそりゃやれることはやるという責任感がおありでしょうが……長生きしてくんなきゃジークも俺も泣きますから、無茶しないでくださいよ。若い頃の無茶は中年になってから一気に来たりするらしいですからね!」

「……ふ、何だそれは……脅しか?」

「脅しです」


 予言者は数秒呆れたように微笑んだが、顔をまた無表情に戻した。


「君は、パレードを見に行くだろう?」

「ええ、行くなとも行かないとも言える立場ではないですからね……」


 無差別殺傷事件が起こるだなんて言ったら大変な騒ぎになる。テロに屈してパレードを中止に、なんてのは王家の威信にかけて出来ない。

 

 危険だからパレードを見に行くなと身近な人達に言いたい欲求にかられるが、予言のことは口外禁止。

 聖女を後援する立場の俺とその関係者がパレードも見ずに家に籠ってるのも不自然過ぎるし。

 

 シレンツィオ公爵家はパレードの通る王都大通り沿いの四階立ての高級宿屋兼茶屋を丸ごと貸し切ったそうだ。二~四階の窓から軽食を摘まみつつパレードの様子を見ることが出来る。

 そこにスカルラット家と俺の楽師達も招いていただき、ご一緒させてもらうことになっている。ただし姉上と第一夫人はヴィーゾ侯爵家所有の王都の別邸に招かれてるので、ファウント様とそっち。

 ティーグ様とジークと第二夫人で一部屋、公爵閣下とジュリ様と俺、ロレッタ様とモルガン様で一部屋、楽師達で一部屋の予定。

 他の部屋と行き来もできるし、部屋にいるのが飽きたら護衛付きで外に出ることも可。


「殺傷が起きる場所を教えておく。刃物を持った者がいたら取り押さえるように命を出した騎士と、負傷した者がいたら直ちに治療にかかれるように治癒師をそれぞれ配置した。……おそらく全ては把握できていない」


 地図で赤丸がついた所を確認していく。全部で七か所。

 騎士は王家の騎士団員、治癒師は大多数が教会から派遣されている。教会の修道士は治癒師としても腕のいい人が結構多いのだ。

 時間は曖昧だが大体の場所は判明したため、負傷者は出たとしても死者は出さないように王家と教会が協力して乗り切ろうとしている。


「ん? ネレウス様、この時計塔の丸は……?」


 大通りからは一つ外れた通りの王都中央時計塔に青色の丸が書かれていた。その名の通り巨大な時計盤を掲げた塔。王都の観光名所にもなっている。


「ああ、……ここで不吉な事が起きる。事が起こるのは、何らかの条件が揃った時だと思われる。そこまで視るにはもう時間がないが……」

 ネレウス様は翠の眼を俺に向けて暫し黙った。

「……俺の顔に何か……?」

「いや。これは君に言おうかどうか迷ったんだが……言わないと後で怒りそうだから、やはり言っておく。不吉な出来事の内容までは視ることが出来ていないが……一人、重要人物は見えた。その人物が何をするか、これまでの傾向からしてなんとなく予想がついてしまった」

「……誰です?」



「何らかの条件が揃った時ーーーーこの中央時計塔の天辺からシルシオン・カーセルが身を投げる。……聖女の晴れの日に一点の曇りを残すために」



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