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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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ニュース


 コンスタンツェ嬢が聖女認定されてから、シレンツィオ派に入ろうと縁談を持ってくる者が増え、難癖を付けて派閥の評判を下げようとしてくる者もいた。ジュリ様やカリーナ様、"信奉する会"などが、振る舞いには気を付けて隙を突かれないように、衝突しないように、と呼び掛けているが小さな諍いは起きていた。

 その中でも俺の振る舞いがアレ(コレリック侯爵の怒りを買う)だったので、許可はもらっていたとはいえ大変申し訳ない。

 

 そしてなんとジュリ様にも第二夫の立候補が何人も来るほどに影響は大きかった。


 俺は『調子に乗るな』『ジュリエッタ様の足を引っ張るな』と色んな人に遠回しに叱られてた時期だったので、自覚はなかったが自信が目減りしていたのだろう。

 どちゃくそめぇっっっちゃ嫌、と思いつつ「ジュリ様が必要だと判断したなら第二夫を取ることも反対しない」と良い子ぶった。

 ――――ジュリ様が悲しそうな顔をしたので一分くらいで撤回したのだが。


 爵位持ちが何人かと結婚するのは主に政治的な安定のため。仲間……血縁者を増やしてお家の繁栄を図る、家同士の同盟のようなもの。容姿や能力が優れているので見初めたという理由で求められることも勿論あるが、有力な後ろ盾がなければ愛人に収まり結婚まではいかないことが多い。


 シレンツィオ公爵家当主になったならその辺りは私情を挟まずに判断しなければならないと真面目なジュリ様なら考えているんじゃないかと思っていたが。

 俺との子供が出来なかった場合は誰に何と言われようと養子を取る、とまで言ってくれた。


 ジュリ様は頭も良いし強いし聖女だし、俺にとってはものすごい美少女だし、シレンツィオ派を率いる優れた代表で、傑物のように思っていたけれど。

 まだ十七歳の女の子だってことがいつの間にかすっぽ抜けてたかもしれない。

 恋人以外の人と結婚したいわけがねーじゃねーか。俺だって嫌だ。この時は本当に反省した。

 

 第二夫を取らなくたって俺がジュリ様とシレンツィオ家を支えていけるように頑張らなければ。……勿論子作りだけじゃなく、他の事も頑張る。うん。



※※※



 ある日、教室で人だかりが出来ていると思ったら、フォルトナ様を中心に机の上の一枚の紙を囲んでいた。

「おはようございます。何かあったんですか?」

「ご機嫌よう。アマデウス様もお読みになる?」


 それはざらりとした質の悪い灰色の紙で、小さな字でびっしりと何か書かれている。

 近付いて顔を近づけて読むと、『カーセル伯爵家の罪はパシエンテ派を崩壊させるか?』という文章が目に入る。

 カーセル伯爵家が王家の強制捜査を受けて次々逮捕者が出ていること、関係者筋の話によると容疑は聖女コンスタンツェへの悪質な嫌がらせ、ともすれば暗殺未遂ではないか……という推測が書かれている。

 読んでいる途中にジュリ様も教室に入ってきた。挨拶をして彼女にも手渡す。


「こちら"王都新知紙"と呼ばれている物ですの。印刷が始まった時分から度々富裕層向けにこういう読み物が作られてはいましたけれど、これは二週間に一度定期的に発行しているのですって。発行しているのは平民の工房ですが、貴族の伝手があるのでしょうね、社交界のお話も案外詳しく載っていますわ」

とフォルトナ様が説明してくれた。


 …………新聞だこれ! 


 この国の印刷技術は貴族の血筋だが平民として暮らし成功した商人が考え出した。

 盛んな領がいくつかあって、ヴィーゾ侯爵領は侯爵家がお抱えの工房で新技術の開発などに勤しんでいるが、大体は平民の工房だ。富裕層向けの茶屋なんかに社交界の噂や新しい法、珍事件や捕まった犯罪者の話などの雑多な話題をまとめたチラシが置かれている。こういうチラシの主な客は字が読める富裕層なので工房の上層部は貴族の分家の者が多いという。

 そういう新聞っぽいものは既にあったが様式などは定まっておらず不定期で、定期的に発行されるものはまだなかった。

 印刷物の流通が安定してきて、ついに定期刊行物が出来たか。


「今回はパシエンテ派のことが中心ですが、シレンツィオ派を揶揄する内容や、的外れな噂や……まあ……少々お下品な話題もあるので毎回読む必要はないかと思いますが」

 それを聞いて他の生徒達は思案気に眉を寄せる。

「今回はわたくし達には直接関係のないお話ですが……侮辱的な内容が書かれているのなら圧力をかけた方がよろしいんじゃないかしら」

「事実と異なる内容であれば規制するべきでしょう」

「その場合、工房のある領主へ厳重抗議すれば潰せるでしょうか?」


 さらっと物騒なこと言ってる。今ここに集まっているのはシレンツィオ派と中立の生徒達だから感情的にはなっていないが、パシエンテ派の者が見たら不愉快になるだろう。矛先が自分達に向いて不都合な噂を広められたら困るのはわかる。


「あまり抑えつけても反発を招くとは思いますが……威圧的になればこちらに情報が隠されてしまって把握し辛くなるやも……」

 ジュリ様はそう言った。慎重派。

「間違った情報が広まったなら対抗して正しい内容の発行物を出すのが良いのではないでしょうか?」

 カリーナ様は真っ向勝負な意見。健全。

「著しく名誉を傷付けるような内容なら抗議すべきですが、いちいち圧力をかけるのは手間ですし追い付かない気がしますわ。アマデウス様はどうお思いで?」

 ちろりとプリムラ様に流し目を向けられる。試されてる感がこわい。


「え~~~~と……そうですねぇ……自領の商品とか商会の広告なんかを載せてもらう代わりに出資するのはどうでしょう」

「はい? 出資? ……ああ、出資者になることで悪い噂を書こうという気をなくさせるのですね。でも全ての工房の出資者になるのは無理でしょう」

「ひとまず大きい所のどこかだけでいいでしょう。小さい所はそもそもそんなに沢山刷らないし、信用性も拡散力もたかが知れてると思うし。で、出資して基本的には自由にさせておいて、流してほしい情報があれば流してもらえるようにしておくのがいいんじゃないでしょうか。目に余る記事を書くようなら出資をやめて、その工房の好敵手の工房に鞍替えするって脅すことである程度は操作できるんじゃないかなって……」

 なんとなく右上の虚空に向けていた目を正面に戻すと皆がシンとして俺を見ていた。ダメすか。そう上手くはいかんか。

「まあ今のは思いつきなので……」

「いえ、なかなか良いお考えだと思いますわ。広告で出資とは……」

 プリムラ様が珍しく素直に感心した顔でそう言ってくれた。他の皆も「そんな方法が……」「さすが面白いことをお考えになる」と褒めてくれる。


 そういえば、新聞に広告が載っているのは俺にとっては当然だがこの国では新聞自体がまだ生まれたてほやほやだ。紙面は簡素な絵が少しと大きさを変えた字のみでシンプル。商品の宣伝の看板やチラシなんかはあるが、新聞に広告を載せるというのは新しかったのかもしれん。

 ……ちょっとディネロ先輩に相談してみよう。マルシャン商会は既に有名だから広告の効果がどれだけ出るかはわからないが……。


 因みに俺とジュリ様の婚約の時には『軟派な伯爵令息、金目当ての婚約』という記事が出てたらしい。

 新知紙が手に入らないかとそういう読み物についての話をしていたら、ちょっとバツが悪そうに使用人の一人が教えてくれた。デミオという茶髪そばかす顔の純朴そうな好青年。ここ一年ほどポーターの補佐によく入っている。


「印刷工房で記事を書いている友人がいて、読む機会が結構あるんです。あ、婚約当初は勝手なことを書かれていましたが、今はアマデウス様を悪く書く記事はほとんどないですよ!」

 ほとんど、というからには少しは悪く書かれているらしい。まあ多少はスルーしよう。

 色んな演奏会や舞台の批評が載っていることもあり、同じ公演でも批評する人によって絶賛されてたりボロクソに言われてたりする。俺の今の公演は慈善公演ということもあり酷評は見てないそうだ。興味深い。ちょっと怖いけど普通に読みたい。

 

 そこそこ詳しいようだったので新知紙の入手はデミオに頼むことにした。

 富裕層向けの茶屋に行けば色々置いてあって読めるようなのだが、子供や学生が通される席からはどかされることが多いらしい。基本大人向けとして作ってるんだろうしな。

 それに社交場に出席している人間は普通に知ってる情報が多いから、分家や籍だけ貴族、貴族と付き合いが多い職業などの人々に需要を見込んでいるのだと思う。中流階級っていうか。


 絵本と解説書でコンスタンツェ嬢のイメージ戦略が成功したように、印刷物は平民に対するプロパガンダに非常に有効だ。平民の意見を軽視しがちな貴族はまだその有用性にいまいちピンときていない。

 ディネロ先輩に協力してもらってどこか大手の印刷工房と懇意にしておくべき時期なのかもしれない。

 薬局の広報にも良いと思うし。コンスタンツェ嬢がもう少し落ち着いたら定期的に聖女として民間で治療する計画も動く。


 ……そのためには今度の婚約パレードを乗り切らなきゃいけないんだけど。

 

 予言者改めよく当たる占い師(自称)ネレウス様曰く。

「パレードの中、民衆が悲鳴を上げて逃げ惑っている光景、目が虚ろな男が数人刃物を持っている光景。今の僕に見えるのはそれくらいだ。兄上とコンスタンツェの警備は万全にするにしても、めでたき日に血生臭い事件が起きるのは望ましくない。『縁起が悪い』『王太子の婚約者が卑しいから神がお怒りだ』などとくだらない主張をする者が出てくるのは目に見えている」


 容疑者の男達の様子からしてコレリック家かぁ~~~…… 同時多発猟奇事件、嫌すぎ!!!

 



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