表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/268

魔術の実践




ネレウス殿下や法務大臣の返信を待つ間も授業は進む。


魔術学の授業では、三年は基礎を座学でやり四年になってから実践授業が始まった。昔は魔術式を書くことを魔術、呪文を唱えることを魔法と言い分けていたが今はもうごっちゃになって魔法と言っても魔術と言っても別にいいらしい。授業は魔術学とされている。

魔術は地、水、風、火の四つの属性にざっくり分けられている。

拡声や集音の魔術式は風になっていた。シミ抜きの魔法は水。火や光を出す系は火。治癒魔法は体の中の水や血を操ると考えられている為、水らしい。人によって得意な属性があったりして、水は全く使えないのに火は難しいレベルも使えるという人もいるそうだ。初級と言われる魔法から実践していったが、最初から出来ない生徒も普通にいた。魔法はやってみないと使えるかどうかわからないものらしく、適性があって感覚を掴めるかどうかで決まるという博打みたいなものだった。諦めずにずっと挑戦して出来るようになる人もいるらしいが、稀だという。

才能やセンスが無いと使えないというのは無慈悲だなあとも思うが、職人とかスポーツ選手、芸術家の上澄みみたいに、適性と才能がものをいう分野というのはあるものだし、そういう感じなのかもしれない。


幸い俺は、初級魔法は何回か練習すると全部使えるようになった。魔法がある世界に生まれたことをようやく実感し始める。ひゃっほう。

いつメンだとリーベルトは火属性が苦手(使えない訳ではないがなかなか成功しない)、ペルーシュ様は風属性がすごく得意だが他の属性は少し手間取る、プリムラ様は地属性が苦手、カリーナ様は水属性が苦手……と個人差が出ていた。俺は髪の色的に火属性が得意だったりしないか、と思っているがまだ不明。



本日は中級防御魔法『盾の魔法』の実践授業。

物を作ったり変形させたりする魔法はほぼ地属性。最初は筆記具やノートなど身近な物の具現化に挑戦した。目の前で思い描き、それの重さや感触を思い出して呪文と名前を呼び、魔力を巡らすとそれが目の前に出来るのである。ちゃんと触れる。だが結構魔力を消費する為ずっと出しておくのは現実的ではない。魔法で出したペンは書けるのだが魔力を注ぐのを止めるとペンも文字も消える。それはそれで何か使い道がありそうだが…。

脳内イメージを目の前に思い描くというのは絵を描くのに少し似ているからか、絵を描くのが好きな俺は割とすぐに出来た。

『盾の魔法』はそのまま盾を作る魔法だ。バリアーである。地面の土や石を変形させて盾にすることも出来るが、移動しながら戦う騎士などは盾の魔法が使えると盾を出したり消したりして戦える。基本的に戦う者の為の魔法だが、身を守る必要がある貴族なら覚えて損は無い。

まっっっっ…たく武術の心得が無い俺が絶対覚えておきたい防御魔法だ。



「盾の魔法の実践を始める!一組と二組の担当教官ニフリート・ジャルージだ」

初級から中級に上がると教官が変わる。騎士コースの教官の一人、ニフリート先生はまだ二十歳。少し日に焼けた肌、人参みたいな赤みの強いオレンジの髪に逆八の字の太目の眉。漫画に出てくるかっこいい主人公みたいな細マッチョ美青年である。騎士コースの人は何度も顔を合わせているらしいが、俺は初めて見る。訓練場の真ん中辺りに来るのも初めて。

イフリートは地球の文化だと有名な火の精霊だったかと思うが、イフリートじゃなくてニフリートなんだ。イケメンだな~モテそ~~~ と見てたら目が合った気がした。そしてキッ…と睨まれた気がした。すぐに視線は外れたが。

今回は見本の盾をそのまま具現化し、成功したらどれだけ持続出来るかを計る。次回からもっと自分なりに使いやすいサイズや重さの盾を作る練習をするとのこと。魔力を帯びた攻撃だと弱い盾は弾かれたり貫かれたりするので、上を目指す人はより硬い盾を目指す。まあそこまで出来るのは騎士団長になれるレベルだそうだが。


沢山用意されている見本の盾は凧型の大きな物だった。重さを考慮してか木製。魔力を使わない攻撃を防ぐにはこれで普通に役に立つ。

魔術学を選択している四年生全員がいるので、クラスごとにいくつか配られる。よく観察してイメージを掴む。

具現化能力…少年漫画でそういうのあったなぁ…それだと舐めたりもしてた気がする… と思いながら流石に舐めるのは無理なので触ったり持ったり、臭いを嗅いでみたりした。砂埃と補強に使われてる金属の臭いがする。ハイライン様から『何やってんだお前』という怪訝な視線を向けられた。

離れてから「“テッラ・ギ・トルバ”…」と呟く。地属性の魔法はこの呪文で始まる。呪文の詠唱は慣れれば省略出来る。一瞬で出せるくらいになるのが理想。俺が攻撃されるのって多分不意打ちだろうからな…。

「…盾」

そう言った二秒後くらいにモヤリと目の前の手に盾が現れる。ズシッと重さが手に伝わってよろめく。

そう。重いのだ。具現化魔法は重さも感じてしまう。非力な者は盾を出したらそのまま隠れるのが良い。

「デウス、すごい、早いね」

「しっかり立て、情けない」

リーベルトが褒めてくれて、ハイライン様が盾を地面に置いた俺に少しほくそ笑んだ。どうやら具現化に成功したのは俺が一番乗りだった。だがその後三十秒くらいしたらアルフレド様やジュリ様も成功し、ちらほらと他のクラスでも成功した人が出始めた。誤差っちゃ誤差くらいの時間差だが、俺は結構地属性と相性が良いらしい。


「上手だな、アマデウス君。経験が?」

ニフリート先生が近付いてきて俺を謎にジットリとした目で見ながら言った。さっき知ったが騎士コースの教官は身分関係なく生徒を君付けで呼ぶ。

授業で習っていない魔法は使うべからず、とされているが騎士コースだと先輩や家族などに教わってこっそり練習している生徒もいるらしい。先達にちゃんと習うこと自体は怒られない。

「いえ。初めてです」

「嘘を言わずとも咎めんよ。君の養父は優れた武人であるしな」

「いえ、教わってはないです」

「…ふむ。自身が天才であることを強調したいらしい。そのような振る舞いはあまり感心しない。改めた方が良いと思うがな」


…えっ!? 急に刺々しくない?!

呆気に取られていたらスッと踵を返して他のクラスを見に行った。

傍で聞いてたリーベルトとハイライン様も驚いていたようだが、アルフレド様は「…ニフリート先生はお若いな」と少し眉を寄せた。ペルーシュ様がそれに静かに頷いた。

どういうこっちゃと思ったがひとまず俺は授業を続行し、盾を持続する。


出来ない人は盾を出す練習を続け、出来た人は盾を持続して時間を計る。プリムラ様はしばらく苦戦していた。

ほぼ同じ時間から持続を始めたアルフレド様が「…これくらいにしておく。眩暈がしてきた」と言って盾を消し、その場に腰を下ろした。そして直後に「わたくしもそろそろ…」とジュリ様の声がする。

集中して盾を見ていたので気付かなかったが、クラスの全員が座り込んだりしんどそうに両手を足に当てて屈んでいた。少し気分が悪くなるまで魔力を使ったということだ。

…あれ……? 

「アマデウス君。本当に持続させていたか?合間を見て消していたのではないか?」

ニフリート先生が俺に近付いて来て威圧的にそう訊く。背はそこまで変わらないので見下ろされてる訳ではないが怖い。

――――――――あ、そういえば俺、底をつくまで魔力使っても平気なんだっけ?

「その、私どうやら魔力…」

「魔力量の数値は知っている。だがアルフレド君やジュリエッタ君よりも低いのにここまで持続しているのはおかしいだろう」

そうだよな…。

ジュリ様は、実はまだ平気なんだと思う。アルフレド様と魔力量が同じってことになってるから彼と同じタイミングで限界を装ったんだろう。でも俺は普通に限界が来てないとおかしい。

あっ…もしかして、皆は多少温存してるけど俺はギリギリまで使っちゃうから急にプツンと電池切れになるのかもしれないのか。そろそろ限界だけど俺が気付いてないだけか?! 魔力耐性有りって、思ってたよりも常人よりかなり有利……? 戦士だったらだけど。

「虚栄心から何か姑息な真似をしたとしか考えられん。正直に言え!」

大声で凄まれて集中が切れ、盾は消えた。あ、もしや今が限界だった? わかんなくなっちゃった。

「いえ、特に変なことはしてない筈ですが…えーと」

証人がいれば良いが、皆自分の盾に集中してただろうからずっと俺を見ていた人などいないだろう。俺、魔力耐性がですねぇ!高くてねぇ!! と声を張ろうと息を吸ったところ、

「待て待て、ニフリート教官!」

と宥める声を掛けてくれたのは近くで三~五組の担当教官をしていた、オルデン・バーリント先生。

葡萄色の髪を8:2に分け、がっしりしたダンディなイケオジだがそばかす顔なのでこちらだと平凡顔。40代後半くらい。

「持続時間を計るのは別に競争という訳ではない。自分の魔力量の限界を計り、これから自分に合った盾を模索する基準にする為のものでしょう? 彼は魔力量を節約するのが上手いのかもしれない」

「……確かに、そうですね」

先輩教官には敬意を払っているのかニフリート先生は不満げにしながらも大人しく頷いた。

因みにオルデン先生はうちの女騎士セレナ・バーリントの叔父上である。面識はなかったが、バーリント子爵家はシレンツィオ派なので俺を庇ってくれたのだろう。助かる。



※※※



放課後、何で俺ニフリート先生に妙に目を付けられているんだろ…? と首を傾げると、ハイライン様が説明してくれた。

ユリウス殿下の妃、つまり未来の王妃として有力だった二大候補が、コレリック侯爵家のメオリーネ嬢とジャルージ辺境伯家のニネミア嬢。

二人とも美しく、殿下と歳が近く、健康状態と家柄は申し分ない。


ニフリート先生はジャルージ辺境伯家の次男 ―――――― ニネミア嬢の兄だ。

ニネミア嬢は今6年生。一度だけ挨拶したことがある。赤っぽい柔らかなオレンジのストレートロング、キリッとした表情でスレンダーな美少女。彼女は幼い頃から厳しい教育を施されて来たという。王子妃に相応しい教養を身に付ける為に、と。

成績は優秀で学年三位内から出たことはなく、王妃は彼女を気に入っていて顔を合わせるとお褒めの言葉をかけていた。

性格は、謹厳実直 ―――――――――― 有り体に言えば、クソ真面目。らしい。

どこぞの令嬢が「あの人のこういうところが嫌よねぇ」と不満や陰口なんぞ言おうものなら「そんなことを言ってはいけないわ」と真面目に説教しちゃうタイプだそうだ。ユリウス殿下に対しても小さい頃から普段の良くない行動を指摘し「王子として皆の模範にならねばなりません」と正論をかましていた。美人だし悪気が無いのはわかっていたので嫌うまではいかなかったが、案の定殿下には地味に疎まれていた。そんな調子なので社交はそこまで達者ではなくお友達は少ない。

悪い方向の風紀委員長タイプって奴かな…。


メオリーネ嬢は、成績は中の上といったところでお茶会などの集まりで自分以外が中心にいると不機嫌になるような子供っぽさがあるが、社交は手広くしており取り巻きは多いし高位貴族の人脈も広い。愛嬌も会話の上手さもありユリウス殿下との相性は割と良かったが、気位が高すぎる性格はユリウス殿下も扱いにくいと感じていたようである。


そんな具合で王家はどちらも一長一短と感じていた為、王子の婚約者はなかなか決定せず――――思わぬ第三者、コンスタンツェ嬢の介入を許す。

王子の寵愛を受ける娘現る、されど男爵令嬢。目障りではあるが王妃の器ではないと思っていたら、何故か歌手として民衆の支持を得て公爵家の後ろ盾までつけて、王妃候補に躍り出た。

誰の仕業か? ――――――――――――――俺である。

公爵令嬢の婚約者の座と音楽商売を存分に利用し、縁も所縁もない金髪娘を王妃に押し上げて権力を握ろうとしている男、それが俺である。

ニフリート先生からしてみれば、妹のこれまでの努力を無に帰そうとしている政敵。




………………………そーれは仕方ない!!!!!!

睨まれるくらいは甘んじて受けるべきだな!!!!!!!!!!



改めて、俺のしてることって傍から見て野心が無い訳がない。無い方が不気味。無いんだけど。

俺は滞りなくジュリ様と幸せな結婚がしたいだけなのに。何でこんなことになってるんだろうな。


それにしても、ニネミア嬢がそんなに王妃になる前提で生きて来たとは知らなかった。

俺だけ知らなかったのかと思ったが、リーベルトも知らなかった。ハイライン様曰く、辺境伯家は辺境故に案外情報が入りにくいのでそこまで広く知られていないだろうという。ニネミア嬢がそこまで社交上手ではないことも影響して。

補足すれば、別に王妃や王族はニネミア嬢やジャルージ辺境伯家に王子妃の地位を約束するようなことは言っていない。飽くまでジャルージ辺境伯家の独断でニネミア嬢に妃教育をしていた。それが徒労に終わったからといって王族や俺たちに責任は無い。

「家の事情でアマデウスを敵視する気持ちはわかるが、学院に教官として勤める限りは授業に私情を持ち込むべきではないと思うがな。アルフレド様も仰っていたが、感情の制御が未熟だ」とハイライン様は皮肉気に笑った。

アルフレド様がニフリート先生を「若い」と言っていたのはそういう意味か。彼とペルーシュ様も事情を知ってるんだろう。俺らの方が若いが…??と不思議に思ってた。


ジュリ様は授業後に「流石にあの言いようはデウス様に失礼ですわ。オルデン先生が止めなければわたくしが抗議しました」と言ってくれた。

オルデン先生が担当教官だったら良かったのになぁ~~~…。

次の魔術学の授業が少し憂鬱だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハイライン様に感情制御が未熟だと言われちゃったか〜(笑) ハイライン様ブーメランにならなければ良いけど… 仲良しメンツで一番制御苦手なのよね…可愛いけど ニフリート教官はザマァフラグ立ったのかなぁ……
[一言] アマデウス様またしても災難…と思いつつ彼はキツく当たった人々を(ポーター、シャムス、ロレンス)悉く自分の味方につけがちもしくは罪までのレベルまでになると遠ざけるか報いに持っていけるのことが多…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ