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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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渋面




テタルティ氏たちが田舎の教会に円盤を届けに行くのに何度かついていったことがあったが、小さい子たちが遊んでいるのを見かけた。

「よし、こいつがわるものだ!!せいばい!」

「どれくらいわるいの?」

「サンドリヨンのママハハとか姉くらいわるい!!」

「うりゃー!!」

「あたしがころすわ!!」

「いーやおれだ!しねぇー―!!!」

木の枝や棒を武器に見立てて、代わる代わる汚いかかしに襲い掛かっている。バシバシと子供の打撃に痛めつけられるかかし。通りかかったかかしの持ち主らしき大人が「おい…ああ、あれならいいか」と黙認した。「いいのか?」と問われると「ああ、あれもう処分するやつだからいいんだ」と言う。かかしが倒れるとワーッと盛り上がる。先程持ち主らしき人に確認していたガタイの良い男がそのかかしをヒョイと持ち上げて「よーし、悪い継母は鉈でバラバラにして、芋でも焼くか!」と笑った。「やったー!!」と子供たちが楽し気に付いて行く。


お、おう……。

その言い方は倫理的にどうなの? …なんて言う大人はおらず、皆微笑まし気にそれを眺めていた。

結構な田舎にもサンドリヨンが広まっていることをヨシヨシと思う気持ちと、サンドリヨンの継母と姉に対する感情が予想以上に攻撃的だ……と引く気持ちにもなる。

そういえば御伽話って原型は子供トラウマになるだろっていう残酷な展開のやつも多い。地球の現代だと子供への影響とか真面目に考える人が増えたけど、この時代観だと公開処刑を親子連れお祭り気分で見学しに行くメンタルでも不思議ではない。

貴族もだけど、平民も敵には回したくないよな~… と背筋を寒くした。



※※※



「聖女認定された後、数カ月に一回くらい地域の教会を巡礼して人々を治療するのはどうでしょう。平民にも聖女だということが知れて、支持がより明確になると思うんですが」


二週に一回くらいこっそりと中央神殿の一室でネレウス殿下とコンスタンツェ嬢と集って計画の進捗報告などを行う。行うというか放課後に時間がある曜日を把握されてるのでネレウス殿下から呼び出される。周囲の貴族の動きが怪しいとか何か気になることなどがあれば報告して対処する。何やらきな臭いと判断したらネレウス殿下が未来予知してくれる。


歌手の顔と聖女の顔、どっちも広く示しておけば平民がもっと味方になる!と割とその場のノリで提案した。

教会は困窮している人や具合が悪い人への炊き出しや支援活動を度々行っていて、そういう人たちの居場所を大体把握している。教会に病人を集めてもらってそこに聖女が行けば一気に治療出来る。臨時の病院だ。

「数カ月?…一カ月に一度くらいいけるんじゃないかしら!」

「いや、あまり頻繁に顔を出し過ぎても有難味が減る。聖女が来るんだから薬を買わずに耐えようとする者や、何故もっと与えてくれないのかとつけあがる輩も出てくるだろう。教会へは三カ月に一回程度にして、薬では完治の難しい患者が出たら聖女が対処するような流れを整えておくのがよかろう。計画を立てておく」


俺が提案するとコンスタンツェ嬢本人はもっとやる気だったが、ネレウス殿下が待ったをかけてブラッシュアップ案まで出してくれる。頼りになる~。

ネレウス殿下は神から予言者としての任を得た者として神殿で確固とした地位が出来ているので、国の教会全体へスムーズに権力が効くのだ。すげー助かる。

「よくそう色々と思いつくものだな」とネレウス殿下は俺に感心してくれたりするが、彼の方が普通に賢いししっかりしている。

今は薬局の設立を優先しているが、ゆくゆくは病院も作りたいよなぁ。薬局が出来れば、それを拡張して病院に近い設備を作ることが出来るんじゃないだろうか。


コンスタンツェ嬢に人気が集まって来ているのは確かだが、まだ弱い。

つい先日彼女の通学の馬車に細工がされており、王家がつけた影が気付かなかったら道の途中で馬車が崩壊していたと思われるとか。犯人は逮捕されたが、金で雇われたその辺のごろつき兵士だった。以前より娘を王妃の座に付けようと狙っている、コレリック侯爵家かジャルージ辺境伯家の仕業ではないかとネレウス殿下は疑っているが、決定的な証拠は掴めなかったという。

違法媚薬事件があってから学院警護騎士団の身辺や素行は厳しく調査され、ユリウス殿下も結構目を光らせてくれているようなので、学院内は安全と言っていいと思う。学院の外では彼女も俺もエリート隠密が付いてるからそこまで危険は近付かないだろう。

と、なると。

残るは、学院内で生徒に直接何かされる可能性。

そこかしこに見張りの騎士もいるしそこまでリスキーなことは起きまい…とは考えられるものの、気を付けるに越したことは無い。

でもまあ、コンスタンツェ嬢にも味方は増えた。一組に上がってから最初は孤立していたが、今はドロシー嬢がクラスメートとコンスタンツェ嬢の橋渡しをしてくれたそうで上手くやっているらしい。ドロシー嬢はいつの間にかコンスタンツェ嬢のマネージャーのような存在になっていた。コンスタンツェ嬢の侍女と連絡を取って研究所に行く予定や公演の打ち合わせの時間なども把握して、サポートしてくれている。

王女のお茶会の後初めて顔を合わせた時は、「えー、アマデウス様、…あのう…先日は…ご気分を悪くさせてしまいましたかと…申し訳なく思っております……」と縮こまっていた。「ドロシー嬢には怒ってませんよ」と笑って返したが、今でも俺の前ではちょっと縮こまる。


コンスタンツェ嬢を薬局設立計画の顔として持ち上げたことで、計画全体の調整をしてくれてたマルガリータ姉上は怒るかなぁと思って謝ったが、「ふん、別にいいわ。今からあの子に恩を売っておくのは悪くないもの」とツンとしつつ意外とご機嫌だった。コンスタンツェ嬢のことはたまに食卓で「教養が足りない」「所作が野暮ったい」「素直なところはいいけど」「意欲は認めるけど」みたいな評価を下しているのを聞く。最近機嫌が良い気がするし、時折褒めるということは割と気に入ってるんだと思う。嫌いな人のことはボロクソ言うからな姉上。



※※※



「お見知りおきの方もいらっしゃるかと存じますが、改めまして、わたくし、カーセル伯爵家第三子、シルシオンと申します」


牡丹色のストレートロングに赤茶色の瞳の美少女が、授業後の廊下を歩く俺たちの前に現れ優雅に礼をした。

一年生だが、すらりとしていて大人っぽい佇まい。入学式で挨拶に来たしそれ以前にもお茶会で顔を合わせたことはあるので知っている。伯爵家の中ではかなり有力な家で、派閥でも良いポジションにいる――――ただし、俺たちと同じ派閥ではない。

微妙に対立している、パシエンテ公爵家の派閥だ。


王国の公爵家は四つ。権力の濫立を防ぐ為にこれ以上増やさないことになっている。

シレンツィオ、タンタシオ、パシエンテ、アロガンテ。

タンタシオとシレンツィオは昔から割と友好関係にあるが、他二つとは距離を取っている。アロガンテとパシエンテの子世代は俺たちより少し上で、学院にはいない。


派閥が違うからと言って交流しない訳ではないのだが、俺としては顔を合わせるとほんの少~し気まずい令嬢だったりする。

カーセル伯爵家は王都で劇場を経営していて、宮廷音楽家テタルティ氏のパトロンだ。そして、ランマーリ伯爵家の商売敵である。

俺が慈善公演をするにあたりランマーリ伯爵家のエミリオ様にはとてもお世話になっている。王都の劇場を使わせてもらい、各地を巡る際も楽団や裏方を貸してもらっている。エミリオ様の劇場も評判が上がり顧客が増え、良い感じに儲けているらしい。そうなるとカーセル家の劇場は……閑古鳥とまではいかないまでも、渋い状態のようだ。


「いやあ~~いい気味ですよウチの劇場を“オーナーの外見が良いだけで中身が無い”だの“芸術をわかってない若造の遊び場”だのとわかったような口をきいてたカーセルに一泡吹かせてやったんですからね!」と、夕食を一緒にした時にエミリオ様が実に嬉しそうに話していた。彼は酒も飲んでたので酔っ払っていた。「いや~~貴方のおかげだ!ハハハハハ」と上機嫌に俺の手を握ってブンブン振ったりした。


そう、カーセル劇場の経営不振は……俺のせいだと思われてる可能性、ちょっとあるよな…。


カーセル伯爵はテタルティ氏が俺の円盤や公演に協力することに反対などしてない。王都のランマーリ劇場にテタルティ氏が出演することはストップをかけたものの、他領の公演での出演は許してくれてる。テタルティ氏に対しても親切なようだし、俺の公演に対して悪い感情を持ってはいない…とは思うんだけど。光が強まれば影が出来るように致し方ないとはわかっているが、罪悪感のようなものは多少湧いてしまっていた。

そういう訳で俺はカーセル伯爵家の人に会うと勝手にちょっと気まずい思いをしている。だが彼女の視線は俺ではないところに向けられていた。


「あ、ぁ、アルフレド様!!コレリック侯爵家のお茶会で、ゎわわたくしをエスコートして頂けませんでしょうか!?!」


目をぎゅっと瞑りながら頬を赤く染め、そう言った。


――――ハイライン様、ペルーシュ様、リーベルトと『アルフレド様がカリーナ様と婚約したいと考えている』(王女の事件のことは言えないので「以前からお人柄に惹かれていた」という説明にした。これには皆納得していた)、そして『アルフレド様はご自分に男としての魅力があまりないと思い込んでいる』…という情報を共有して(皆目が点になっていた。「ちょっとよくわからない。何だって?」と返されて四回くらい同じ内容を喋らされた)、――ヨシ、これから俺たちで二人を良い感じにしようぜ…!――と団結したところだったのに。


最悪のタイミングで勇者が現れてしまった……… と思わず眉を寄せた。

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