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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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出られない部屋




一人で来いとの王女殿下からのお呼び出し。

何となく、ジュリ様とリーベルトがいない時を狙われた気がする。



リーベルトとハイライン様、ペルーシュ様は今、騎士コースの課外授業に参加している。

ジュリ様はエストレー侯爵夫人のお茶会に参加すると急いで帰宅した。俺は図書館に寄っていて、放課後の静かな校舎にもうあまりひとけはない。


急いで教室に戻って扉を開けると、数人残っている。

「あっカリーナ様…と、アルフレド様?」

「あら、忘れ物ですかアマデウス様?」

カリーナ様は数人のご令嬢と授業の復習をしていた。そしてその中にアルフレド様も混じっていた。

「難しい問題をアルフレド様にお教え頂いていたのですよ」

「教えるのは少々不得手で。お役に立てたかわかりませんが…」

アルフレド様が自信なさそうにしているのは珍しい。アルフレド様すぐに理解するタイプみたいだから、人に教えるのは確かに向いてないかも。頑張らずとも出来る人は出来ない人が何故出来ないのかわからないから教師にあまり向いていない。

「いえいえ、有り難かったですとも。それではこれくらいにしてそろそろ…」

「あ、カリーナ様とアルフレド様!少しお時間よろしいですか…?」



他の令嬢には帰ってもらった。

アルフレド様は既に実家でやったことがある内容なので騎士コースの課外には参加しなかったらしい。


かくかくしかじか。

「……という呼び出しをイリス嬢から受けてしまいまして。厚かましいお願いですが…そっと後ろを付いて来て頂けませんか?」



一人で来いと言われて馬鹿正直に一人で行く必要などない。

だって、漫画とかなら『一人で来ないと…ほにゃららがこうなるぞ』という感じで脅してくるのがセオリーだが俺は人質とか取られていない。多分。取ってるなら言うよね。うん。

命令違反?たまたま居合わせただけという体にすれば問題ない。一人で行かなきゃいけない真っ当な理由なんて思いつかないし。嫌な予感しかしない。


「それは…穏やかではありませんわね。王女殿下は何をお考えなのかしら…。わかりました、わたくしは付いて行きますわ」

「私も構わん。行こう」

二人とも快く了承してくれた。やさしい。



1・2年生では昼前に登校して夕方前には寮・家に帰って軽食おやつの時間…くらいの時間帯に授業が終わったが、授業が増えて学院にいる時間が伸びる3年生から四限の後に長めの休憩時間が設けられ、生徒は学院の食堂をよく利用するようになる。

軽食と飲み物が提供されている広い食堂が4年~6年生の校舎にある。

営業時間が終わってがらんとしている食堂の裏を初めて通ったが、少し不自然なくらい静かな気がした。見張りの騎士も少ないような…。放課後はこんなもんだっただろうか。


少し離れて後ろに付いて来てくれている二人。二人で並んでいると妙な噂になるかもしれないから、とアルフレド様の少し離れた後方にカリーナ様がいる。



着いた。軽く深呼吸してアルフレド様方に一度目を合わせてから、指定された教室の扉を軽くノックする。扉にある窓からは誰も見えない。

中から「どうぞ」と声がした。


「…失礼致します」

扉を開いて、少しマナー違反だが閉めずに中に入る。お香が焚かれているのか甘い匂いがした。この匂い、どこかで嗅いだことがある気がする。どこだっけ…。

奥の方に机が端に寄せて開けたような空間があった。

そこに王女殿下が座っていて、すっと立ち上がった。うっとりとした顔で俺に数歩近付いてくる。


「アマデウス…来てくれたのですね」

そりゃ命令されたので、と苦笑…する余裕はなかった。

何故なら。



――――――――――――王女殿下が、裸足だったからだ。





この国は湿度が低く、カラッとしているので夏に靴下を履いていても暑苦しいとは感じない。

靴下は人前では履いていて当然の物であり、年頃の女性になると親しい家族か…恋人、体の関係がある相手くらいにしか素足を晒したりはしない(男だともう少し緩いが、素足=パンツ一丁と同じくらい恥ずかしい姿というイメージ。おそらく平安時代の冠に近い?)のだそうだ。

素足はこの国だと破廉恥なパーツなのである。胸とか尻と同じくらい隠して当然の部位。


小説本とかで『女が裸足を男に見せる』という表現が『誘惑』を意味していたりして、最初は(何でこの人急に

足を見せつけたの?)と普通に意味が分からなかったので家庭教師に聞いた。

膝から下の素足なんて特に珍しくもなかった高温多湿亜熱帯日本国育ち、脚フェチとかそういう訳でもない俺はそこにエロスは感じない。太ももだったら興奮するけども。




つまりこの状況は非常に、まずい。

誰か事情を知らん人が今ここに来たとしたら。


十中八九、俺が脱がせたと誤解される!!!!!!!!!!




素足を見てしまったニアイコール裸を見てしまったようなもの。お嫁に行けない!責任を取れ!と言われかねない、それくらいのトラップだ。

清楚(※イメージ)な王女殿下が学び舎で自ら脱ぐとはおそらく誰も思わない。俺も思わなかった。脱いで待ち構えてるなんて思う訳ない。

道端の露出狂くらい唐突だよ!!!!!



いや、まだ、まだだ。

不測の事態の為に二人に付いて来てもらったんだ。今すぐ逃げて二人と合流すれば……

扉を見ると、閉まっていた。開けておいた筈なのに。そして窓からアルフレド様が見える。何か言いながら扉を叩いている。けれど、声も、叩く音も聞こえない。教室の扉に鍵は付いてないのに、入って来られない?



いつの間にか目の前にいた王女殿下が俺の胸にもたれかかった。


「ねえ、アマデウス…ジュリエッタとはもう、そういう関係…なのでしょう?彼女がそういう手で貴方を繋ぎとめているのなら…わたくしにも覚悟はあるわ。恥ずかしいけれど、好きにしてくれていいから…どうか、貴方の心をわたくしに頂戴…?貴方が、好きなの…」


切なく頬を染めた王女殿下に見上げられて、台詞を聞いて、俺とジュリ様のラブラブ作戦が悪い方向に効いたことを悟る。

そして自分の体がすぐに動かないことに気付く。



……何かおかしい。


血の気が引く感覚と同時にぶわっと冷汗が浮かぶ。

今、王女殿下を抱きたいと思った。目の前の少女を脱がせて、思いのままに出来たらこれ以上なく楽しいだろうな、なんて気分になっている。

――― いや、王女殿下だからではない。誰でも良い。誰でも良いからめちゃくちゃに犯して気持ちよくなりたい――― という衝動。

性欲が理性をじわじわと塗り潰しているような感覚。




魔法薬だ。媚薬の類だ。きっとこの匂いがそうなのだ。そしておそらく、いや確実に。

――――――――違法薬物!!!!!




実はこの国の貴族の間で媚薬は合法で売っている。成人は買える。ただし濃度に制限があり、人の理性をなくすようなものは作るのも売買も禁止されている。

性的興奮を高めて不慣れな女性の痛みを軽減するとか、起ちにくくなった男性を起ちやすくするとか、それくらいの補助効果に留まる。

そうか、どこかで嗅いだことがあると思ったけど昔メイドのクロエに襲われた時盛られた薬の匂いか?

あの時使われた魔法薬の詳細は知らないが、成分や香り付けが似てるのかも。



嗅いだだけでここまで強制的に性欲を引っ張り出すような代物が合法である訳がない。

やばい。

やばいやばいやばいやばい、自我が、自分の中の常識が、性欲に持ってかれそうなのがわかる。




王女殿下の瞳も、よく見るとどこか虚ろだ。コレ、彼女も今まともじゃないな。手を伸ばしそうになるのを堪えて少女を振り払い、扉の方へ走る。

しかし開かない。アルフレド様も外から開けようとしているようだが全く動かない。ガタガタしたりもしない、文字通りびくともしないのだ。これも魔術の可能性が高い。高難易度の魔術で結界ってのがあったな、それかもしれない。

ぴっちり閉まっているカーテンの向こうに窓をバシバシ叩いているカリーナ様のシルエットが見えた。カーテンを開けて俺も窓を開けようとするが扉と同じで微動だにしない。音すらしない。


…俺をここに誘い出して閉じ込めて、王女殿下と致させて。

外から目撃させて既成事実を作って、ジュリ様と破談させるのが狙い…?か?

一人で来いとは言ったけど一人で来るとはあちらさんも思ってなかった?俺は目撃者を連れて来てしまった?



しかし、…こんなやり方、イリス嬢は本当に承諾したのか?

こんな状況で俺とヤっちゃって結婚することになったって、理由が目撃者から外に漏れたら王女殿下の淑女としての名誉は地に落ちる…――――――――――~~~~~~~~~駄目だ。エロいことしか考えられなくなってきた。


恐い。理性が完全になくなったら俺は王女殿下を襲うんだろうか。だろうな、そうしたくてたまらない。王女殿下だってそれを望んでいるんだ、いいんじゃないか、我慢しなくて、なんて ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――………






パン、と俺が俺の頬を張った音が響く。

自分の頬を渾身の力で叩くとほんの少しだけ意識がハッキリした。

こっっっわ…!!!!精神汚染恐過ぎ!!!!!!!!



脳裏に過ったのは、いつかの未来の夢。

俺ではない“アマデウス”が見たジュリ様の絶望する顔。


諦めちゃ駄目だ。ジュリ様にあんな顔をさせては絶対に駄目だ、と死んだ理性がわずかに蘇る。

痛み…。…それだ。




なるべく王女殿下から離れてしゃがみ、鞄から筆箱を見つけた。学院内に持ち込めるとある刃物を手に取る。

…手は駄目だ。万が一後遺症が残ったら楽器を弾く時困る―――こんな時にそんなん言ってる場合かとも思うが許されたい。足…太腿がセオリー、かな?漫画とか映画だと。深く考えている時間はない。一回だけ大きく息を吸って、暫し止める。



――――――… ジュリ様。



理性が塗り潰されてしまう前に。

目を瞑って自らの太腿に鋏の先端を思いっ切り、振り下ろした。





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― 新着の感想 ―
[良い点] アマデウス様がどこぞの女に襲われないか心配が実現してる
[良い点] アマデウスーーー!!!偉いよ!!君めちゃくちゃ偉いよ!!!!!でも太ももは下手すると動脈傷つけて大量出血でおなくなりになるから!!!次はやめてね!!! [気になる点] これ王子とジュリ様を…
[一言] こりゃ誰かそそのかした阿呆がいますね...
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