魔力測定
いつメンはまた一組で同じクラスになれた。
俺の順位は、7位。去年は10位だったので少し上がった。5位以内に入りたかったが及ばず。上位は本当に数点の違いしかない接戦だった。
堂々1位のジュリ様、2位のアルフレド様。
ペルーシュ様が8位、ハイライン様・プリムラ様が9位(同点)、カリーナ様が11位。リーベルトは15位。
「またアマデウスに負けた…!」とハイライン様がぐぬぬ顔をしている。プリムラ様も少し面白くなさそうな顔をした。ふふん。誤差くらいの点数だけど勝った。来年こそは5位内に入るぞ。
三年から騎士コースに魔術学、薬学など選択制授業が増える。
魔力がかなり少ないと判明したら魔術学は取らないという人もいる。簡単な魔術を使っては魔力切れで具合を悪くしていてはどうにもならない、ということで。
比較的、身分が高い方が魔力は多いものらしい。身分が高くとも魔力が少ない子もたまにいるが、その場合は魔術師を雇って置いておけばいいし別にそこまで困る訳ではない。でも何だかんだ魔力がある方がやはり羨ましがられるし重宝されるという。便利だしな。
そして入学式の次の日に魔力測定がある。
地球の学校でやった身体測定や体力測定を思い出すな。俺はひ弱だったから良い数字は出なかったし憂鬱だった。貴族学院には身体、体力測定などはない。助かる。
不安だ。結局公爵閣下から俺は何も知らされていないが、ジュリ様の魔力量を誤魔化すことは出来るんだろうか。
教師が少し緊張した面持ちで机の箱を開けた。
『魔力計』は王家所有の魔道具。大きめの懐中時計みたいな見た目だった。円が大まかに10等分され、天辺に『0』『1000』と書かれている。短針が100の位、長針が10の位を示すらしい。長針が一周すると1の目盛りに短針が進む。
低い身分から計るように指示が出た。いきなり高い数値が出て次の人が尻ごみしたり落胆したりするのを避ける為かもしれない。段々下がってくより上がってく方が見応えはあるしな。
そんな訳でジュリ様とアルフレド様が最後。それまでドキドキしてなきゃいけない。
男爵位(一組には数人しかいない)の次、子爵位。
リーベルトが魔力計を持つと、330で止まった。男爵位は一人300台がいたが150~200くらいで、子爵位は大体200~350くらいのようだった。
聞いたところ、100~150だと日常的に魔術を使うのは厳しい量だという。
平民でも100くらいはあるものなんだとか。ということは平民でもたまーになら多い人もいるんじゃないか?でも計る機会も教育機会もないんだよな…。
伯爵位の番。
記録している教師からペルーシュ様に手渡された。ペルーシュ様は、420。他の伯爵位の子が次々計ると、一人200台がいたが伯爵位は大体400に届くかどうかくらいだった。子爵位とそこまで変わらない。
プリムラ様は400ぴったり。
そして俺の番が来た。
どんなもんなんだろう。俺は男爵の家系と公爵の家系のハーフ。魔術は使ってみたいからあんまり少なくないといいなぁと思いながら魔力計を持つ。
ぐるぐると一定の速さで回った。短針が半分を超えた辺りで勢いがなくなったが、ゆったり進み続けて、止まる。
――――お……? 多くないか…?
「……えっ。…失礼、一旦預かっても?」
先生が俺から魔力計をさっと取り上げ、暫く盤面を見てから(自分の魔力量を計って動作確認してるっぽい)紐を持って吊り下げて数値を0に戻した後「…もう一度お願いします」と手渡してきた。
針はさっきと全く同じ動きをした。
俺の魔力量は、700。
周りも先生もかなりびっくりしていた。そもそも500を超えることも珍しいらしい。
「血筋としては多くとも不思議ではないな…」とアルフレド様がぼそりと呟いた。公爵家の血の影響か。
え~~~、母親に関しては良い思いしたことないけど、これに関してはちょっと嬉しい~~~。
ハイライン様の数値は550だった。
「ぐっ、またしてもアマデウスより下だと…!?」と悔しそうに魔力計をユサユサ振った。
「いえいえそれでも多いですよ…」と先生が目を丸くして言う。
現在学院の生徒で500を超えるのはユリウス殿下だけだそうだ。詳しい数値に関しては濁したので、もしかしたらハイライン様か俺より下か…?
カリーナ様は450だった。
侯爵位は400前後が多かったが、一人520が出た。ずっと学年3位の才女、ヴィーゾ侯爵令嬢フォルトナ様だ。アイボリーの縦ロールに青い目、金縁の眼鏡。カリーナ様と仲が良く、たまに俺とジュリ様がいちゃついていると「仲がよろしい事~!」などと笑顔で囃し立ててくれたりする、令嬢にしては豪快な人である。肌は綺麗で、この世界でもなかなかの美形判定。
ジュリ様が「どうぞお先に」と譲ったのでアルフレド様が先に計った。
アルフレド様の数値が、なんと800。
おお~~~~っ!!!と歓声が上がる。雰囲気で拍手をする人も。俺も思わず拍手した。
「さっすがアルフレド様…」
「お前とそこまで変わらんだろう」
100の差は結構変わると思うが。アルフレド様は泰然としている。多いことは予想していたのかもしれない。
そしてついにジュリ様の番が来た。
俺は顔には出さないように頑張ったがめちゃくちゃドキドキしていた。ジュリ様はずっと穏やかな顔をしていた。いや、表情を変えないように努めている…ように見える。俺やアルフレド様の数値を見た時も全く驚いた顔をしていなかったから。
ジュリ様の数値は―――――――――――800だった。
おお~、アルフレド様と同じ、流石公爵家の… と感心するような声の中、ジュリ様は少しほっとした表情で魔力計を教師に返す。
そうか、公爵閣下が何か対策したんだな。それがちゃんと成功したのだろう。
俺も胸を撫で下ろした。
しかし対策してもアルフレド様と同じくらいのメチャ多。誤魔化す前の数値、どれくらいなんだろう……。
「飛び抜けて魔力が多い方がこんなに…これは…学院長に計り間違いではと疑われそう…」と教師が悩ましそうにしていた。
魔力量にも収穫物の豊作、不作みたいに多い年と少ない年があるのかもしれない。
※※※
そして、数日後。
「アマデウスと、ディネロ・マルシャン子爵令息をお茶会にお招きしたいのです。是非、録音円盤のお話やエイリーン嬢との馴れ初めなどお聞きしたいわ」
顔を合わせた王女殿下からお茶会の招待が。
もう招待状は用意していて手渡された。こちらの予定などは確認せんのかい…と思ったが特に何もない日を指定されていた。ある程度予定を把握されてるのかもしれない。
流石に、マジで外せないでっかい仕事の予定でもない限り、王族の招待は断れない。
直接手渡しというのも断る理由を見つけさせない為かもしれん。
「学園内で、わたくしの少しのお友達とのささやかな会にするつもりですから、気負わなくても大丈夫です。楽しんでほしいわ」
期待に満ちた目で下から見つめられる。結構素気無くしたと思ったがめげないな。
「ええ―――あ、婚約者とご一緒させて頂いても構いませんよね…?」
そう言うと王女殿下は暫し固まった。イリス嬢が眉間に皺を寄せロレンス様はいつも通り不機嫌そうに俺を睨んでいるが、断る理由なんてないよな?という意を込めて王女殿下を見つめ返す。
「…ええ、勿論です」
にこりと快く了承した、ように見える王女殿下。内心どう思っているのかは読めない。
咄嗟にジュリ様を巻き込んでしまった。家に帰ってから取り急ぎ事の次第を手紙に書き使いに届けてもらう。返事は明日になるかと思ったが、夕飯後に返事が来た。
『大丈夫です。受けて立ちます。ご一緒させて下さいませ』
と、端的だが気合いの入った返事だった。
余談:ネレウスがコンスタンツェと百合カップルにして封印をやらせてみようと試みた女子がフォルトナです。




