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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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101/268

愛好



届いた緑茶は淹れると若芽のような緑で、俺が前世で慣れ親しんだ味にかなり近かった。風味が違うかな、くらい。微かな甘みがあって高級な味っぽい。

折角なので楽師と侍従に振る舞ってみた。


ポーターが躊躇なく自分が飲む杯に砂糖を入れたので エッ緑茶に砂糖!?!? と驚いた。

そういえばこの国ではお茶には砂糖を入れて飲むのが普通という認識だった。ストレートで飲む人より砂糖入れる人の方が断然多いのだ。

地球でもお茶には砂糖を入れたり甘くして飲む国の方が多数派だと何かで読んだ気がする。日本が少数派だったのかもしれない。甘いお菓子と一緒に飲むことが多いので俺は茶に砂糖を入れることはあまりない。


どこか懐かしい味の緑茶。ちょっとお高いので飲みたい時にちまちま飲むことにする。


「アマデウス様の瞳の色と似ていますね。…慣れない味ですが美味しいです」とロージーが評した。

変わった風味ですね、私は好きです などの感想を言いつつ皆普通に飲んでいた。そこまで好き嫌いは別れないようだ。


言われてみれば俺の目の緑色に似ていた。

……髪とか目の色の物を贈るのは、確か仲良しアピールに良いんだよな。


マルシャン商会に追加で二瓶注文した。



※※※



「…貴様、何の香水をつけている?」

呼びに来たロレンス様が睨みつけながら俺にそう訊いてきた。いつも無言なのに珍しい。

「香水ですか?つけてないです」

「…本当か?……でもアナスタシア様が良い匂いがするって…」

ぼそぼそと何か言いながらしかめっ面で俺にずいと近寄ってスンスンと嗅がれた。嘘じゃないです。

「何でそんな…え、臭う?」

まだ教室の前なので近くにいたリーベルトに訊くと「いや?」と首を振る。

「良かった、毎日風呂入ってるのに臭ってたら困る…」

「風呂に毎日???」

ロレンス様が眉をぎゅっと寄せてガンを付けてくる。15センチくらい下から。近い近い。


そういえばこの国、毎日風呂に入る人あまりいないんだった。

空気が乾燥しているからあまり汗をかかないし、汗をかく職業でも濡れタオルで体や髪を拭くくらいで済ます。香水を使う人も多い。

アルフレド様やハイライン様、リーベルトも香水らしき匂いがする時がある。樹木系、花系、柑橘系に分かれる感じ。ペルーシュ様は常に無臭なんだけど。臭いケアどうやってんだろ。

ジュリ様は花のような甘い匂いがふわっと香る。ドキドキする。


スカルラットに来てから俺が毎日風呂入るので、どうせ沸かすならと姉上やジークもよく入っているけれど毎日ではないようだし。

健康の為と演奏にも体力は必要なのでよほど忙しい日以外は護衛と訓練場を走ったり軽く筋トレしたりしてるが(そういえばジュリ様が遣わした女騎士セレナはやたら走れ走れ言ってくる。俺を鍛えたいのだろうか)、その後すぐ風呂に入っている。汗臭くはないはず…。

「デウスは香草っぽい匂いとか、石鹸みたいな匂いがすることはありますよ。洗髪水の匂いじゃないかな」とリーベルトが言った。香草…ハーブ的なアレだから…

「ああ、多分寝癖直し水の匂いだ…」

そういう髪質だと思ってたけど、寝癖がつきやすいのは毎日風呂入ってるからかもしれないと今気付いた。


「…婦女子に好かれる為の身嗜みにはよく気を遣っている訳だ」

ロレンス様はダイレクトな嫌味を吐き捨てる。

「いや、風呂が好きなだけです。身嗜みよりは顔つきの方に気を遣ってますかね。…可愛いお顔が台無しですよ」

貴方、眉間の皺すげーぞという気持ちを込めて自分の眉間を指で叩いて見下ろすと、ロレンス様がカッと顔を赤くした。「可愛い」と言われるのは屈辱に感じる系男子だろうと予想したがビンゴ。めっちゃ睨まれてるけど言われっぱなしもよくないし…これくらいの反撃は許される。はず。

ロレンス様のこの般若面を見るのも今日までだろうし。




音楽室でいつもの通りピアノの練習が始まりそうになると、俺は目で合図してスプラン先生に出て来てもらう。

「畏れながらアナスタシア殿下、私はピアノの教師としては未熟ですので、今日からはスプラン先生にご教授をお願いして下さい。相談したところ先生も快く引き受けて下さいました」

スプラン先生が優雅に礼を取ると、ロレンス様、イリス嬢、モルガン様はぽかんとした。

「…どうして…」

王女殿下も呆気にとられたような顔をしている。どうしてと言われても。これ以上は音楽の教師に教わってくれというのがそんなに不思議か…?


沈黙を破ってスプラン先生が一歩前に出た。

「アナスタシア殿下。…見目麗しい殿下が、異性と一つ部屋の中で何やら仲良くしているというのは、良くない憶測を呼びますわ。侍女候補と婚約者候補の方々が一緒で何もやましいことはないとはいえ、そう思わない方々もいます。教師ではないアマデウス様に何度も指導をさせるというのも彼の負担になります。もしわたくしでご不満であれば、王家で信頼に足る指導者を正式にお雇いになるのがよろしいかと存じますわ」

事前に打ち合わせした通り王女殿下を柔らかい口調で窘める。


「…はい…そうですね…気付かなくてごめんなさい」

王女殿下は気の毒に思ってしまうくらい落ち込んだ様子でそう言った。

それを見たロレンス様が俺を睨みつけてくる。俺かよ。スプラン先生ではないんかい。



それでは私はこれで~…といそいそと退室した俺は開放感で溢れてスキップしそうになった。しないけど。

上機嫌に教室に戻るとジュリ様たちがまだいた。間に合った。

「今日でお役御免になったのでもう呼び出されないと思います」と笑顔で報告するとジュリ様がほっとした顔になった。俺が呼び出される度に少し不安そうにしていたから心配かけちゃってたんだろうな。


「“信奉する会”が火消しして下さったから良かったですけど、妙な噂が流れていたのですからね」とプリムラ様にジト目で言われる。

「まあまあ、王族の呼び出しを拒否など出来ませんもの…今回アマデウス様に非は無くってよ」とカリーナ様はフォローしてくれた。

「ああ、“信奉する会”には何かお礼をしないといけませんね…」

楽譜一枚タダで持ってけ券、みたいなの作って配ろうかな…。



~俺とロレンス様たちが王女殿下と愛憎劇…~みたいな噂は与太話として面白がられていただけだったらしいのだが、コンスタンツェ嬢みたいに真に受けちゃう子もいるので俺を信奉する会の令嬢たちが小まめに潰してくれているそうだ。俺がジュリ様に跪いて愛を誓い直した話がまだ記憶に新しく、王女殿下とどうこうというのは突飛な話だったようで、与太話。

俺は「ピアノを教えてくれと言われているだけ、王女殿下の婚約者候補の方々もその場にいる」と明言してたし、リーベルトたちも周りに訊かれたらそう言ってくれてたみたいだしね。助かった。



「ところでジュリ様、緑茶をご存知ですか」

「緑茶…?緑のお茶ですか?そういうものがあると本で読んだことはあります。東洋のお茶ですよね」

「はい。この間手に入れて飲んだんですが、好きな味だったのでジュリ様にもお贈りしたくて。お口に合うかはわかりませんが届いたら直接お渡ししてよろしいですか?」

家に贈ろうかと思ったが学院で渡した方が仲良しアピールとしては良いかなと。純粋に俺が好きな味をジュリ様が気に入ってくれたらいいなとも思う。合わなければ仕方ないけど。

「ええ、勿論ですわ」

「淹れた時の茶の色が、私の瞳の色に結構近いんです」


そう言うとジュリ様が目を丸くしてから照れたように微笑んで「楽しみです」と言ってくれた。

カリーナ様は「まあ、それは素敵だわ」と晴れやかに笑って、プリムラ様は「割と気が利いた贈り物ですわね」と褒めてくれた。



久しぶりに馬車チューするとジュリ様が俺の袖を摘まんで引き留めた。

潤んだ目で見上げられると顔に血が上り、衝動的にもう一度口付けて桃色の唇に舌を捻じ込む。彼女の舌が遠慮がちに俺の舌を舐めると体の芯が歓喜で震えた。キスのテクニックとか正直よくわからないのだが、ジュリ様と口を合わせるのはひたすら気持ち良くて陶酔する。ジュリ様もそうだといいんだけど。


たまには長めに楽しんでもいいかな…?と舌を絡めながら薄く目を開けて彼女の赤い頬と長い睫毛を愛でる。左手で彼女の頬から首元を撫でると白粉が手についた。服につけないように気を付けないと、と思って目を下にやるとジュリ様の鎖骨が見える。そのまた下を想像してしまう。

――――――――――――あ、ヤバい。


下半身が元気になりそうな予感がして慌てて唇を離した。まだ結婚出来るまで何年もあるのに今からこんなんで大丈夫か。いや我慢するしかないのだが。


「…これくらいにしておきます。また週明けに」

「…はい…ぁ、ありがとうございます…」


とろりとした涙目で謎にお礼を言っててかわいい。もっと見ていたかったが息子(※下ネタ)がはしゃぐといけないので馬車を出た。

御者と話せるように馬車の前方にも細めの窓がついている。声をかけるまで御者はこちらを見ないようにはしてくれているようだが、長い時は(長いな…)と思ってチラ見されてるかもしれんのでちょっと恥ずい。


……最近キス出来てなかったからジュリ様も寂しいと思ってくれてたのかな。会えない時間が愛を育てる…とは何の歌詞だったか。タダ働きも悪い事ばかりではなかったのかも(解放されたからそう思えるやつ)。


あ~~~~~~~~ジュリ様はまだ14歳14歳14歳…… と唱えて自制心を呼び起こしながらも、ニヤついてしまう口元を手で隠しながら帰路についた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あんだけエロいキスしといてまだ勃ってなかったのかよ!?すごいな!!?
[良い点] スプラン先生好き!(挨拶) 「もしわたくしでご不満であれば、王家で信頼に足る指導者を正式にお雇いになるのが~~」 王女はアマデウス狙いなのに勝手に担当変えて大丈夫?と思っていたのでこのセ…
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