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22 (サル+道具=人間)

 ハルミ()と天尊が あちこち動き回り調べる。

 拘束は解かれたが、地下の部屋に入れられ軟禁状態だ。

 中は それなりに豪華で、ベットには 清潔で真っ白なシーツが敷かれ、冷蔵庫、トイレにシャワー室などもあるが、壁が電波を通さない素材で出来ているようで外部とは一切通信が出来ない電波暗室になっている。

「あ~!!ネットが使えねーのかよ…あ~」

 トヨカズは苛立(いらだ)つ。

「私のデバイスも使えなくなってる…こう言う時不便よね。」

 レナのデバイスは 処理の大半を別のサーバーで処理し、映像や音の出力データだけ送る物だ。

 こうする事でデバイスの処理を大幅に引き下げる事が出来、消費電力が低い特化型のチップを入れる事が出来る。

 更に日進月歩で進むスペック上昇の度にデバイスを買い替える必要性が無くなり、好きなスペックを好きなだけ使う事が出来る。

 サーバー側もデバイスの処理をまとめて行う事で効率化をはかるのと、高処理を掛けてないと電力辺りのデータ処理効率が悪くなるので双方にメリットがある。

 つまりレナのデバイスは 高速無線通信のインフラがある前提での設計の為、電波が使えない今だと ただの板切れだ。

「トヨカズもエアトラS2に乗っている時には ARだけでネットは使って無かったでしょうに…。」

「ネットが使えない環境その物にストレスを感じているんだよ…。」

 トヨカズが答える。

「本当に機械が使えなくなると私達人って弱いなぁ…。」

 レナがベットに座り ARウィンドウを表示するが、アプリの大半が起動しない。

「道具を装備して 自分の能力の底上げが 出来るのが人の特徴なんだ。

 それを取り上げられれば、少し賢いサルでしかないからな…。」

 私が言う。

「人は 道具も含めて人だって事?」

「そう、裸のサルを人とは呼ばないだろう…。

 寒いから毛皮を羽織ったり、力が弱いから剣や槍、銃を作る。

 だから、こういう時こそ…持っている武器を有効活用しないとな…。」

 私は ポケットを探るが…何もない。

「………。」

 あーカッコよく決めたってのに…。

「量子通信機…部屋に落としちまったか…。」

 クオリアとの通信を確保する為に持たされた物だ。

 あれなら この電波暗室でも十分に機能するはずだったんだが…。

「ハルミ…クオリア見たいに壁を分解したり出来ないの?」

 レナが言う。

「空間ハッキングなんて 使う機会なんて無かったからな。

 アプリも入れてないし、自力での構築は無理だから、大人しくしているしかないかな~」

 私は オフライン用の暇つぶしアプリを展開し、長期戦に備えた。


 重い扉がゆっくりと開く…扉の隙間から武装した男の姿が見え、脱出が出来ないように(ふさ)がれている。

 まず兵士が入ってきて状況の確認。

 安全を確保した所で今回の首謀者が入ってくる。


「『パラベラム部隊』の指揮官を務めている『ヘンリー・ジャクソン』です。

 あなたは お分かりですね…ピースクラフト都市長」

「ああ…何故(なぜ)オマエが…逆恨みかね…。」

「それも勿論(もちろん)()りますが…私が動いたのは、あなたが低所得者を(ないがし)ろにするからです。

 民主主義と言いつつ選挙で当選した議員を懐柔(かいじゅう)し、手懐ける…。

 選挙演説時に低所得者の減税と言う公約で都市民を(だま)し、当選したら公約を1つも達成せず、むしろ増税を推進し、高所得者には 減税をさせる…。

 客の財布が閉まれば 企業に影響が出て、労働者の賃金に響く事は知っているでしょうに…。

 国債も発行せず『財源が無い』と都市民をプロパガンダで洗脳して『増税は仕方無い』と思わせる。

 このままでは、重要産業が磨り潰され輸入無しには 生きられない都市になります。」

 ヘンリー()が言う。

「金が無いからこそ 人は知恵を絞り、そこに発展が生まれるのだ。

 実際、企業収益は上がっている…。」

 ピースクラフトが力強く答える。

「それは 大規模なコストカットのせいでしょう…そして退職させられるのは低所得者です。

 まあ言い…要求を伝えます。」

 私は もう どれだけ言っても無駄だと思い要求を言う。

「ピースクラフト…あなたは今夜、都市民に向かって都市長退任のあいさつをして頂き、そして次の都市長は 我々『パラベラム部隊』にすると言って貰います。

 報酬として、今後のあなたの身の安全と中央区での生活を保障しましょう。」

「くっ………。」

 結局の所、民主主義は まやかしに過ぎず、人は賄賂(わいろ)で動く。

「さて…私達は これで失礼します。

 ああ…天尊さん…体制を整え次第、すぐにサービスを再開出来るようにします。

 ご不便をお掛けしますが…よろしくお願いします。」

「ええ、こちらからもチェック要員は手配します。

 それと場合によっては資金も…。」

「…感謝します。」

 私が部屋を出て武装している男も後に続く…。

 そして、また重い扉が閉じられた。

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