20 (クリアリングはしっかりやろう)
「マズイな…こんな時に…」
いや こんな時だからか?
クオリアが テロリストの武装蜂起に気づいたのは テロリストが王城に侵入する直前だった。
それも別件で探索していて、偶然引っかかった物だ…運が良かったと言っても良い。
夜中に 建築作業員の正規パスで 団体がゲートを通過…更に深く調べて見ると跳ね橋が作動していなかった。
深夜に車を使わず50人の建設作業員が 跳ね橋を使わず侵入と…とても真面な集団だとは思えない。
私は 量子通信を使い、ハルミとコンタクトを取る。
荒廃し、崩れた建物が あちこち建つ 市街地…。
太陽の日差しが暑く、高温多湿の悪環境をスピーダーに乗るハルミ機が走る。
味方は私を除いて全滅…幸い死亡したヒトは出ていない。
撃墜された味方はコックピットブロックの装甲をパージし、コックピットと一体化になっているバギーを使って、戦闘区域から離脱中…。
そして現在…DL1個中隊 12機に囲まれ、既に撤退戦状態。
私は 味方のバギーが破壊されないように 敵を引き付けて、味方から引き離す。
正面に敵…機種ベック…敵が赤い四角形で強調され、ハルミ機が、ボックスライフルを腰の位置で構え、発砲。
DLの重要機関が満載で、かつ装甲が一番薄い腹部に命中…腹部の駆動系がやられバランスを崩して倒れた。
後方から射撃警告が入り、ハルミ機は 減速せず撃墜した機体を飛び越え、右の建物影に隠くれる…。
敵の機体から放たれた弾が、先程までスピーダーの腹部があった場所に命中…正確で良い射撃だ。
『EMERGENCYだ…。』
外部回線から進入し、ボイスチャットが勝手に起動…クオリアだ。
「こっちも現在EMERGENCY」
敵の足を狙って撃ち貫き 転倒させ、ジガ機は撤退ポイントまで走る。
『もう、そちらまで 来ているか…。』
「は?何が…あっ」
ハルミの視界が暗転し地面に叩きつけられる。
「あがっ…。」
「コイツ…サイボーグか?
念入りに縛って置け。」
「ハッ!」
「は?SWATか?
プレイヤーに直接攻撃とか頭おかしいだろぉ!」
「スワット?何を言っている…クソ暴れるな…」
「私は 無実だ~!!」
私は 2人がかりで押さえつけられ、手を後ろで念入りに拘束された。
「おいおい、平和な国じゃなかったのかよ…。」
VRでは警戒していたトヨカズも 現実世界では オフにして爆睡を決め込んでいた。
こんな要塞に敵が侵入…ましてや客人が攻撃されるとは微塵も思っていなかった。
いち早く気づいたのかレナは 下着姿でベッドひっくり返して 盾にしてナイフを構えている。
M4は ベッドの下だが、ベッドをひっくり返した事で取れない…。
「所属を言いなさい…あなた達はどこの者ですか!?」
レナが ベッドに隠れ、怒鳴る。
「我々は低所得者の意見を通す『パラベラム部隊』の者です。
レナ・トニー砦学園都市、次期都市長…武装解除し、ご同行をお願いします。」
AKがあると言うのに ハンドガンを向けて こちらを包囲する。
接近されて場合AKだと取り回しが悪いからかな?
「同行には応じます…ただ私は外交の為に来ています。
せめて着替えさせなさい。」
男は レナの下着姿を見て…「了解しました…。」と言った。
私が パイロットスーツからハンドガンを抜き、両手を上げてマガジンをリリースする。
重力に従いマガジンが落下し、スライドを引っ張り弾が無い事を確認…暴発の危険が無い事を確認し、クローゼットの近くの床にそのまま放る。
少しでも不穏な行動をすれば 4人のハンドガンにより、即座に私の頭を撃ち抜かれるだろう。
次に コンバットナイフ…。
乙女の着替えだと言うのに目も背けず、銃を私に向け続ける。
パイロットスーツを装着し、手を後ろに回し縛られる。
「失礼…」
男が武器を持っていないか 私をボディチェックをする。
その手の動きには、いやらしさが一切感じられず、淡々と行っている。
「さあオマエもだ。」
「はいはい…レナ良いか?」
「武装を解除…拘束に従ってください。」
「あいよ…。」
トヨカズは 男達に腕を後ろが組まれ、拘束される。
レナとは違い 手荒にボディチェックをし、ハンドガンやナイフを取り上げる。
「後で返してくれよ…」
「ええ、ここに まとめて起きますのでご安心を…ただマガジンは回収させて貰いますが…オイ」
「はい、マガジンは すべて回収しました。」
「それでは ご同行を…。」
「SWATTINGかよコノヤロー…アカウント情報 ネットに拡散してやる~」
ハルミが連行されながら英語で男達を罵倒している。
具体的には母親との近親相姦についてなのだが…デバイスが翻訳の際に問題ありと自主規制を始め、とうとうピー音しか聞こえなくなった。
その後ろには レナとオレだ。
そして隣の部屋から天尊が拘束されて合流する。
「あーこれで全滅か…。」
オレが天尊を見て そう言い「そうみたいですね…ここは大人しくしておきましょう…」と天尊が答えた。
天尊とジムの部屋…ジムに叩き起こされ、緊急だと即座に理解した天尊は ジムのモニターを折り畳み、布を被せ 紅茶とカップを置き、即席の台としてカモフラージュした。
こう言った事は 太陽系中を周っていれば 度々起こる事で警戒しつつも、いつも通りに努める。
暢気に紅茶を入れ、ティータイムを楽しみつつジムの上にカップを乗せて待つ…。
男達がショットガンで錠前が 破壊して中に入ってくる…。
男達に動じず「あー少し待ってください…今飲み終わりますので」と紅茶をゆっくりと飲む。
その間に僕の目は 敵の武装を確認…。
「クーデターですか…まぁこの都市なら仕方ないでしょうね…僕は人質でしょうか?」
クーデター側に友好的な発言をしつつ無害だとアピールし、紅茶をゆっくり飲む事で こちらのペースに持ち込む。
恐らくクーデター側はテンポが崩れて イラついているだろう…だから早く僕を拘束したいはずだ。
僕は 友好的に拘束に応じ…歩いて行く。
こうする事で部屋の中をチャックさせず…ジムを守る事が出来た。
照明が消された暗がりの中…音が静まり、台が動き出します。
折り畳まれていたモニターが起き上がり、乗っている紅茶や皿が落ちます。
台から蜘蛛の足ような4本足が出てきてゆっくりと歩き、隣の部屋に行く…。
辺りを確認して クローゼットに近づき、コンコンとノックをし、開けた。
そこには『広い部屋では落ち着かない、この中で寝る』と言っていたロウさんの姿でした。




