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24 (ロボットアニメ教)

 エクスマキナに来て2日目…。

 ナオ(オレ)は 時間を持て余していた。

 単純に暇なのだ。

 部屋には ネット用の人外レベルの高速回線があり、無線でならVRにもアクセスが可能だが、この義体の特性なのか VRゲームをやっても現実にしか感じない為、敵の頭を吹っ飛ばして得点を稼いで楽しむサイコゲームにしか見え無く、かと言って訓練と割り切り、仕事モードでVRを やる気にもなれない。

 こんな時 いつもなら外に出かけるのだが、あいにく、ここは ネットが現実世界のエレクトロンの都市だ。

 娯楽施設がある訳も無く、ワームの対策会議は 明日の午後…。

 今日一日は 丸々暇なのだ。

 という訳でナオ(オレ)は、エレクトロンが普段何 をやっているのかが気になり、暇つぶしに訪ねて見る事にした。

 オレが ジガの部屋に着きノックをしようとすると警備システムがジガに連絡を入れたのだろう。

 スピーカーから『どうぞ』の声がしてドアのロックが外れる。

 オレは 少し慣れない手つきでドアノブを(つか)み 回して中に入る。


 部屋と言うものは その人の性格で出ると言われている。

 さて、ジガの部屋はどうかと言うと…。

 ギリギリ見た事があるブラウン管ディスプレイにVHSのビデオデッキ…大型の液晶ディスプレイにBlu-rayレコーダー…棚にはDVDのディスクが仕舞われている。

 更に見て見ると小型のプロジェクターに旧式の大型スピーカーが(そろ)っていて、スピーカーから殴りつけるように音が放たれている…。

 完全にムービーオタクの部屋だ。

 スプリングと会わせて見たら気が合うだろう…。

「よう、よく来たな…今トヨカズとアニメを見ているんだ。」

 液晶ディスプレイを見たまま、ソファーに座るジガがオレに話しかける。

 その隣に座っているのはトヨカズだが こちらも画面に集中している。

 ジガとトヨカズの座るソファーの後ろから、オレは テレビを見て見る…。

 ロボット物のアニメで しかも相当に古いんだろう…まだ4:3比率だ。

「これ可動パーツが多すぎじゃないか?

 DLと同じで平時は 新幹線や輸送機、掘削機?をやってるんだと思うんだが…」

 しばらく立ったまま アニメを見ていた オレは ふと言う。

「は?」

『何言ってんの?』と言った感じでトヨカズが、こちらに向く。

「いや、だってパトカーに救急車とか緊急車両が多いし、後はトレーラーにクレーン車にダンプカー…土木車両だし…。

 コンセプトは 分かるんだけど…こんなに合体するなら、合体用の部品を外して 組み立てた方が、コスト的にも…。」

「いや…コンセプトって…」

 トヨカズが微笑(えみ)を浮かべながら ジガを見て「そりゃあ、カッコイイからだろう。」とジガが言う。

「見た目がカッコイイ事に 何のアドバンテージが?」

 DLは身体が大きく 高機動戦闘をする為、機体を迷彩にしても意味が無く、むしろ仲間からの連係(れんけい)が容易になるからと派手な塗装をする事も多い。

 だが塗装ならまだしも、胸にロボライオンを装着する事に何の効果が?

 まさか威嚇(いかく)って訳でもないだろうし…。

「そりゃあ(おもちゃが)よく売れるからだろう。」

 トヨカズが笑いながら言う。

「見た目より整備性と安いコストに 扱いやすさだ。

 どんな高性能機体だろうが、数がそろわなければ意味が無い。」

 オレは リアルの視点から言う。

 どんなエース機だろうが 1個中隊で包囲されれば、確実に撃墜される。

 だから数を用意し物量で攻めるんだ。

 そうすれば 結果的に味方の損害は少なくなるし、数で包囲した方が高度な操縦スキルも必要無く、(はる)かに安全で簡単だ。

「よーし…そんなオマエにこれらを解決させる便利な言葉を教えてやろう…。

 それは、ロマンだ!!」

 トヨカズが堂々と叫ぶ。


「……トヨカズ…キミは その信頼性の低い機体をロマンだからと言う理由で、戦場に行くのか?」

 トヨカズ(オレ)に ナオが言う。

「いや……あ~そうだよな…何せコイツ射撃武器が一切ないし…基本素手で殴るし…」

 遠距離攻撃にロケットパンチがあるが 戻ってくるとしても一時的に腕が無くなるし…。

 と言うか、腕を質量弾にするならコイルガンで亜光速でぶっ放した方が効果的だろう…てか、よく このパイロットは文句を言わずに戦ってたよな。

 確かに 現実的に考えるならオレは乗りたくない…。


「おいおい言い負かされてどうするんだよ…。

 なら、どんなロボットが良いんだ?」

 ジガがそう言い、色々なロボットの機体の画像をARウィンドウに一覧で表示し、ナオ(オレ)に投げる。

「ん…あーこれに、これに、これ?」

 オレは 気に入った機体をタップし、次々と黄色い枠線で表示されて行く。

「さて…結果はと」

 卵型の装甲を持つカエルを想起させるロボ、戦闘機に手足が生えたロボ、緑色の装甲に三つ目のカメラが特徴のロボ…。

「完璧にリアルロボットの量産機だなぁ…。」

 ジガがトヨカズと一緒にARウィンドウを見る。

「オレは、ほどんど見た事が無いんだがな…。」

 オレは ロボットアニメは あまり見ない…見ると仕事を思いだし、リラックス なんて出来ないからだ。

 なので オレが見るのは ファンタジー系のアニメや漫画、ラノベが多い。

「じゃあもう少しで終わるから…見て見るか?

 カナリアが好きな映画なんだが…。」

 液晶ディスプレイの画面では バニーガールが宇宙空間を生身で疾走し、巨大なクリスタルを叩き割る。

 あの人は 生身で推力を発生させているのか?

「となると歌か…。」

「そうそう、でさっきの足が生えた戦闘機…『タンク・スラスター・レッグ方式』って言うんだが…ハルミの戦闘機もこれを参考にして作られたんだ」

「へぇ」

 タンク・スラスター・レッグだから…燃料タンクとスラスターが一体化してそれを足のように動かせるようにしたのか?

 戦闘機のスラスターが足のように動かせれば 垂直離陸が楽になるだろうしな…特にまともな滑走路が無い この世界では 結構使えるかもしれない。

「暇だし…見て行くか…。」

 オレは そう言い、床に座る。

「よーし信者をゲットだ。」

「いやいや…布教して気に入るかどうかは別問題だろ」

 ジガに対してトヨカズが言う。

「リアルロボマニアなら これで行けるって…。」

 布教?信者?ロボアニメは宗教の域に達しているのか?


 それから3人で昼過ぎまでアニメ鑑賞をした…。

 確かに効率を突き詰めた兵器としてのロボットより、だいぶ娯楽寄りだが…楽しめた。

 まぁDLの『突然変異機』だと思えば行けるのか?

 さすがに入信する気は無いが…。


 トヨカズとジガとのアニメ鑑賞が終り、昼食を取った。

 1人の少女が歌で巨人族と人との戦争を止める話だ。

 CGが無い時代にセル画だけであのクオリティを出す何て、流石文化遺産に登録された作品。

 ジガによると この作画技術は失われたしまい…ロストテクノロジーになっているとの事。

 まぁ今の技術だったら、この作品の数百倍リアルな物が作れるんだが…。

 映画を見終わった後、トヨカズとジガが 高レベルのアニメ会話をし出し、午後もアニメを見るとの事で退出した…。

 流石(さすが)に12話を一気に見る気力は オレには無い…。

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