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12 (小さな戦争)

 放課後…今日も砦祭の前にあるテストの対策の為、勉強中だ。 

 初等部1年1組の教室の『仲良し トリオ』と呼ばれるようになった ヒロム(オレ)、カズナ、ロウ…オレだけ成績が低い…。

 教えてくれる教師役をしてくれてるのが トヨカズとレナの娘のカズナ…歳は3歳…。

「う?何で、こうなるんだ?」

 獣人のロウは 5歳…文字の読み書きは出来るんだが、計算がまだ苦手だ。

 そもそも ロウが外の世界から来てから1週間程度しか経ってないのに 読み書きと四則計算を如何(どう)にか出来るレベルになっている。

 ロウはARウィンドウを出し、電卓アプリを起動して 計算を始める。

*(カケル)とか/《ワル》、押せば答え、出てくる…。」

「あ~もう けいさんき つかわない…。」

「う~ん何で、9個のリンゴ、3人で分けると、3個になるん?」

 ロウがカズナに聞く。

「なんでって…。」

 カズナは それが当たり前で どう説明しようか考えている見たいだ。

 ARウィンドウを開きアイテムボックスから、リンゴを9個出し机に置く。

「こうやって、わけて、いくとおおおお。」

 ロウが素早く…リンゴを回収する…。

「ロウ7個…ヒロム、カズナ 1個…ちゃんと分けた。」

「ロウ…ズルいぞ…オレにも寄こせ…。」

「ロウ 早かった ロウのリンゴ」

 リンゴを取ろうとするオレの手をロウは素早く回避して、リンゴを守る…。

「そこだ!」

「遅い!!」

「のああああああ」

 カズナがブチ切れた…。

「ロウ…ケンカになる から、リンゴをヒロムに 2つ、わたしに 2つ ちょうだい。」

 カズナが手を出す…その後ろで電子妖精のナヴィがレナにどす黒いオーラのエフェクトをかけている。

「むう…」

 ロウは渋々4つのリンゴをオレとカズナに2ずつ渡した。

「さあ ロウ みて…リンゴが おなじ かずに なったでしょう」

 ロウ ヒロム カズナが手に持っているリンゴを皆に見せる。

 確かに皆に3個持っている。

「ほら これで ケンカしない…。」

「ケンカ しない?

 ロウ 良く食べる、2個じゃ足りない…ヒロム 1個寄こせ」

「オレも3個食べたいな…よし…ロウ1個寄こせ」

「取れる 物なら「取って見ろ「おう」

 オレとロウのリンゴ争奪戦がまた始まった。


「ああ…また…ナヴィ~」

 肩に座る光るボールに4か所の羽を付けた妖精にカズナ(わたし)が泣きつく。

『マスター教え方は合ってますよ。

 う~ん…そうですね…30÷3にしてみてはどうです。

 流石のロウさんも10個もあれば、十分でしょう…。』

「おお…ナヴィ ナイス アイディア…。

 ありがとう…。」


「はい…ふたりとも、おちついて…。

 リンゴあげるよ…。」

「お?」「ほしい」

 なるほど物をあげれば良いのね…。

「さて…リンゴをかえして…。」

「ええ」

 ロウ達のリンゴが消えた。

「リンゴ~」

「せいかい したら、リンゴあげるから…。」

「頑張る。」

「絶対当てる。」

 ロウもヒロムもやる気だ。

 わたしがARのリンゴを机にドサッと置く…。

「じゃあ、リンゴの、かずを、かぞえるよ…。」

 1…2…3…4…………。

 29…30…。

「30?」

「そう…ここに リンゴは 30こ あります。

 これを わたしたち、3にんで わけます。」

「ロウ、分ける。」

「なら…ロウ おねがい、ただし、ひとりじめは ダメ」

「ぶう~」

 ロウがロウ、ヒロム、カズナの順でリンゴを置いて行く。

「さぁ、リンゴはいくつ?」

「1…2…3…10?」

「そう…10…だから30÷3=10なの…。」

「おお…分かた」

「流石…カズナ…。」


「はぁ…あとは 九九をおぼえれば、けいさんは だいじょうぶ。

 さぁヒロムしっかりやって…また、りゅうねん、しちゃうよ…。」

「いいんだよ…オレは遺伝子が壊れてる バカなんだから…。」

 カズナの3歳とロウの5歳…そしてヒロム(オレ)が7歳…。

 オレら『仲良しトリオ』は歳の低いヤツ程、頭がいい。

「バカでも すこしづつ おぼえれば、あたまが よくなるって、トヨ兄ぃ いってた。

 トヨ兄ぃも、むかし バカだったって…。」

「トヨカズも?」

「うん」

「さあ 九九 おぼえよう」


『マスター ヒロムさんは 遺伝子疾患(いでんししっかん)持ちですか?』

『いでんし しっかん?

 いでんしが こわれているってこと?

 でも、きゅうじだいの しょとうか、7さいから にゅうがく らしいよ。

 ヒロムは 7さい…まだ、ふつう じゃないかな?』

『そうですか…(ひど)くならないと良いのですが…。』

『うまれる ことは、えらべないからね…。

 わたしは あたまが いいように つくられた みたいだけど。』

『なら、頭の良い マスターは ヒロムさんを如何(どう)しますか?』

『どうって…せんせい やるくらい しか、できないよ。

 ゆっくり じかん かけてね…。』

『そうですか…。』


「オレもナヴィが入ればな…。」

 ようやく大人しくなって勉強をし出したヒロムが、問題を解きながら言う。

「ナヴィが いても、つかい こなせないと いみないよ

 ナビゲートAIに ふりまわされる…わたしも、まだ つかい こなせてない。

 いいどうぐが あっても、つかいかた しらないと、つかえないでしょ…。」

 カズナ(わたし)が生まれた時にトヨ兄ぃが お母さん役として造ってくれたのが ナビゲートAIの『ナヴィ』だ。

 そのメタルリックの光る球体に羽が生えた『ナヴィ』は 保育士さん達が忙しく働いている中、わたしを見守ってくれた。

 今では わたしのお姉さんと言う形で、過保護を卒業して 助けを求めた時だけ助けてくれる。

 でも、検索するのに検索ワードを知らないと検索出来ないのと同じで、わたし が完璧に知らない事は答えられない。

 ナヴィは わたしが成人しても使えるように、スペックは軒並み高いはず…なのに わたしの能力がまだ低く、ナヴィが合わせてくれているので、性能を全部引き出していない…。

 まだナヴィが言っている事が 時々理解出来ない事も多い…だから わたしは 勉強している。

「ちい…宿題やって貰おうと思ったのに…。」

『ヒロムさん…それでは訓練にならないので、私も協力出来ません…ただ解く為のヒントや資料は出せますよ…。』

「じゃあ お願い…。」

『マスターお願いを聞いても?』

「ええ、きょか する。」

 ずら~と資料のARウィンドウが並ぶ…。

「え?これ何?文字だらけ?」

「それ、かがく ろんぶん…。」

「正確性が高いのを選んだのですが…。」

「せいかくせい ひくくても わかりやすい ほうがいいの」

「でも…それでは 相手側に誤情報を与えてしまう事になります。」

「と、こういう ことに なるの」

 わたしが『ナヴィ』に指を()して言う。

「流石にこれを読むとか無理…。」

 ヒロムが言う…ひらがなとカタカナの文字だらけの文にめまいを感じている。

「じゃあ、ナヴィ『5~8さいを たいしょうにした きじで、しんぴょうせいは ふつう』」

「はい…完了…どうぞマスター。」

「ありがとう…やっぱりね…。」

 わたしは ウィンドウをひっくり返し、ヒロムに見せる。

「?」

「りかのきょうかしょ、でてきた。」

「え?つまり…。」

「きょうかしょ よめば、わかるって…。」

「はぁ楽は出来ないか…。」

「いいえ、その きょうかしょを、みることが いちばん らくなの」

「は~い」

「く~~~」

 ヒロムが科学の問題を解いている時に数学をやっているロウは 机に頭を乗せて寝ている…。

 ロウは 眠りが浅く…よく眠るが、少しでも異変があるとすぐに起きる。

 わたしは ARウィンドウを開き、アイテムウィンドウから 何でもかんでも光にしてしまいそうな、金色に輝く 大きなピコピコハンマーを出し、ロウを思いっきり叩いた。

 明らかに ピコピコハンマーの音では無い 重低音のSEが鳴り、ロウが起きる…。

 ARのハンマーだが AR機器が自動でロウに感覚を伝える。

「あた…」

 ロウが起き…危険が無いか周りを見る…。

「ふむ」

 危険が無い事を確認し、また眠った。

「だめ…ねたら…。」

「何で、数、多いの~。

 ロウ、12まで、数えられれば、良かったのに…。」

 ロウが言う。

「かがくには きょうみしんしん なのに すうがくは だめなのよね…。」

「ロウ、色々、燃やしてたから…」

 ピンポンパンポン

『学校敷地内の生徒の皆様へ…下校の時刻です。

 皆さん気を付けてお家に帰りましょう…。

 生徒会から でした。』

 帰りのBGMがなり、他のクラスやクラブに入っている生徒も ぞろぞろと校門を出て行く。

「わたしたち も いきましょう。」

「おう」

 ロウは 今まで寝ていた事が 嘘見たいにテキパキと帰る準備をしている。

 結局…わたしの地道な頑張りもあり、ロウとヒロムは 苦手科目での点数を上げる事は出来た…それでも点数は悪いのだけど…。

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