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幸せな夢を見た。
あの日まどかが攫われなかったらっていう仮定の世界。
鈴葉ちゃんとは高校で会ってお似合いのカップルになってて、私達家族とは時には喧嘩もしたりするけど仲良くしている姿。
そして何よりも誰も壊れていなかった。
まどかは誰も怖がっていなくて誰とも仲良くなっていた。鈴葉ちゃんは誰のことも嫌っていなくて警戒心も今ほど持ってなかった。そして私はまどか至上主義じゃなかった。
全員が普通の人として暮らしていた。
今の環境に不満があるわけじゃない。まどかのことは大好き。お父さんとお母さんももちろん好き。
でも、もしかしたらこんな未来があったのかもしれない、というのを見てしまった。
どっちが良かったなんて分かり切ってる。
まどかと鈴葉ちゃんからしたら私が見た夢の世界の方が良いに決まってる。
.................でも、それでも私は思ってしまった。
現実の方が私は良い、と。
――――――
だんだん意識がはっきりしてくる。
私の目の前にはすこし寝ぐせがついた綺麗な黒い髪が見える。
昨日と変わらずお母さんに抱きしめられたまま寝てるまどかがいた。
まだお母さんもまどかも起きてないらしい。
.............あれ?お父さんは?布団にいないしもう下に降りた?
まぁ、いいや。何かあったら戻ってくるだろうし、もう少し私はまどかの後ろ姿を見ようかな?
.........................やっぱりやめた。暇だからまどかの頭でも撫でよっと。
「んうぅ..........」
ありゃ?もしかして起こしちゃった?
....................そんなこともなくグリグリとお母さんの腕の中に潜ってちゃった。
「こら。いらないことしないの。まどかが起きるでしょ?」
お母さん起きてたんかい。
「でもこうやって無意識にでも身体を寄せてくれるって良いわね」
そりゃそうだよ!!まどかから甘えられるってのは滅多にないことだからね!!!
「やっぱりまどかは可愛いわね」
待って!!私は!?あなたの娘の私は!?!?
「もちろん玲華も可愛いわよ。親にとって子供はいつまで経っても子供なのよ」
そう言ってまどかの頭を撫でる。
私だって頭撫でたいのに!抱きしめたいのにぃぃぃぃ!!
「ん?............あ、れ?......あ、おかーさんだ。おはようおかーさん」
寝惚け声ふにゃふにゃしたまどか可愛い!!絶対笑ってるよね!ふにゃふにゃした顔して笑ってるよね!!!見たいその顔!!!こっち向いて!!
「あら、起こしちゃった?おはようまどか?」
「だいじょうぶー、いつもこれぐらいには起きてるからー」
「今日ぐらいはもっと寝てても良いのよ?」
「んー、もったいないから起きとくー」
「もったいない?」
「だって、せっかくおかーさんに抱っこされてるんだから起きとかないともったいないきがするー」
そのままギューってお母さんに抱き着く。
「..............お母さんはいつでも良いんだから寂しくなったら抱きしめてあげるから」
「うん」
やっぱり私はあの夢よりもこの現実の方が好きだな。
――――――
あれから朝ご飯を作りに行こうとしたらもうお父さんが作ってた。だからいなかったのか。
そのまま朝ご飯を食べて、ゆっくりしてたらもうお昼過ぎ。
まどかが家に帰る時間が来た。
鈴葉ちゃんを1人にしてるからって。
....................なんか悔しいな。
「まどかもう帰るの?もっとゆっくりしていっても良いのよ?」
「ありがとうお母さん。でもリンちゃんが寂しがったらいけないからね。それに気軽に来れる距離にあるんだからまた来るから!」
「そうね..........じゃあまどか元気でね」
「うん!...........そうだ!お母さんにお父さん最後に良い?」
「良いわよ?」
「どうしたんだい?まどか」
「じゃあ一人ずつ!!」
まどかがギューって抱き着く。ボソッと何かを言った後お母さんも何か言い返してた。
もちろんお父さんにもギューって抱き着いて何か言ってた。
...........私にはあるのかな?
「最後にお姉ちゃん!!」
「なーに?まどか?」
「またね!!」
「うん。またね、まどか」
これでお別れか.......。
さっき、まどかが言った通り全然遠くない、むしろそれなりには近い距離にはいるんだからまた会いにいけば良いか。
「お姉ちゃん!!」
考え事してたらまどかが近づいてきてたことに気づかなかった。どうしたんだろ?
...........................................................え?
「それじゃ!また来るねお父さん!お母さん!お父さんとお母さんこそ元気にしててよね!!」
そう言ってまどかが後ろを向いて歩きだした。
見送らなきゃいけないのになんでだろう?涙が止まらない。
次から次へと涙が溢れてくる。
またねって言わないといけないのに、また遊びに行くからねって言わないといけないのに......。
何度も何度も目をこすってたらお母さんが黙って抱きしめてくれた。
....................やっぱり私はこっちの方が好きだ。大好きだ。
――――――
「お姉ちゃん。あの時助けてくれて、見捨てないでくれてありがとう。お姉ちゃんのおかげで私が今こうやって笑っていられるんだ。だから言葉では言い尽くせないけど本当にありがとう。..........愛してます」
とりあえず玲華視点のまどか家族のお話は終わりです。次書きたいのはもう決まっているのですが、それを上手く書けるのか不安でしかないので次の更新は時間が空くかもしれないです。




