表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/229

⑨8.そんな自殺願望しかないような馬鹿の行く末は……御覧のあり様って奴よ(SIDE:ロッテン) ※ 1度目の害虫貴族駆除回(その6)

馬鹿でも自ら敵陣に攻め込むという気概がある分、まだマシな死に方なのかもしれない?

「まさに阿鼻叫喚の地獄絵図ね」


 火に囲まれ、煙に巻かれながらも必死に存在しない出口を探す襲撃者達。

 悲鳴や怒声が響き渡り、やがて力尽きていく……

 その様を迷彩が施された見張り台から見下ろしていたロッテンは淡々とつぶやいた。


 自分が引き起こした惨劇……


 自陣地にあえて敵兵を誘いこみ、逃げ場を封じた上で火を放って敵兵を殲滅するように命じた責任者として、目を反らす事なくその様を見続けていた。


 そんなロッテンに隊長格の一人、普段は戦場ならぬ船上で海の荒くれ達をまとめる船長の男が声をかける。


「ところでお嬢。もうすでに勝敗が決してる相手にここまでする必要あったんすか?」


「この戦争に関して言えば、全く必要ないわ」


「だったらなぜ態々……」


「この戦争に関しては……よ。今回の戦争は予想以上の圧勝でも毎回こんな圧勝なんてない。むしろ完敗に近いような結末だってありうるわよ」


「完敗ってそんな相手どこに居るんすか?」


「居るじゃない。帝国と合衆国、双方に……ね」


「あーなるほど。あそこ、しょっちゅうドンパチしてるからなぁ」


「帝国は今のところ王国へ侵略する気配ないけど、いつまでも侵略がないとは限らない。それに隣国の合衆国は帝国と違ってトップの権力が少ないから領国同士で利権をめぐって内戦ばかり。その矛先が王国に向かないとは限らない。あちらこちらに戦火となりうる火種があるなら、こういった経験も必要でしょう」


「そうですな。俺達船乗りも荒事に長けてるといっても精々数十人程度の小競り合い。100人を超えるような集団戦なんてやった事ないし、本来ならそうした集団戦の指揮を取るべき本職が……あれだもんな」


「一応フォローすると、今回参加してない騎士団達は軍の指揮が取れるよう教育は受けてるそうだけど……それでも1000、ましてや万を超える軍で適切な指揮取れるかと言われたら疑問符付くものね」


「う~ん……100でひぃひぃ言ってる俺らからしたら、万の指揮なんて不可能にみえるんだが……不可能じゃないんだよな?」


「帝国や合衆国のような大国だと10万の軍でぶつかりあう事もあるそうだし、大軍を統率できる者は一騎当千の強者より重宝されるのよ。

 実際、帝国への学園で同期だった騎士団長の息子。彼は個人の武力こそ劣っていても集団戦での指揮官にまわれば少々の不利を覆すほどの手腕を発揮するという、まさに大群を率いるにふさわしい未来の騎士団長様だったわ。

 そんなわけで、もし帝国や合衆国が本腰入れて攻めてきたら……」


「おーこわいこわい。そんな恐ろしい国に喧嘩売るなんて正気じゃありませんな」


「えぇ、そんな自殺願望しかないような馬鹿の行く末は……御覧のあり様って奴よ。くすくす」


 今なお激しく燃え盛っている陣地で繰り広げられる阿鼻叫喚な灼熱地獄絵図を見下ろしながら、ロッテンは笑う。

 その様はただの一般人からみれば、恐ろしい姿ながらも荒事や情勢を正しく知る者達からみれば頼もしい姿だ。


 よって、船長とそのお付きであった者達は恭しく姿勢を正す。


「「「「ロッテンお嬢様。我々は今後も変わらぬ忠誠を貴女様に誓いましょう」」」」


「その忠誠、確かに受け取ったわ。それより、私達も次の行動に移るわよ。作戦では今頃ハイドが血の気の盛んな野郎どもと共に敵陣営へ逆夜襲仕掛けてる頃合いであるけど……成功するという保障はないのだから」


「失敗なんてありえるんすか?」


「戦場では何が起きるかわからないものよ。言い換えれば航海では何が起きるかわからない事と同様、予想外のトラブルは起きると考えて動くもの。そうでしょう、船長」


「その通りでございました!!すいません、浅はかだった俺を許してください」


 少々学に乏しい海の荒くれでも、自分達の専門とする航海に例えられたおかげですぐに理解できたようだ。

 この辺り、幼少期から海の荒くれと接してきたロッテンならではの機転であろう。





 こうして海の荒くれ達のハート(忠誠心)を改めてつかみ取ったロッテン達は様々な事態を想定した指示を出す。

 一通り指示を出し終え、伝令として散っていったもの達をみながらロッテンは思う。


「……まぁ、襲撃が失敗する原因は十中八九ハイドと荒くれ連中が調子乗ったせいでしょうね。なんせあいつらはノリと勢いだけで行動する悪癖があるわけだし、お目付け役としてついていかせたハイドの側近やカナリア達が頭抱えてる姿を容易に想像できるわ。

 かといってハイドの手綱を握る自信ある私が向こうについてったら、こっちが統率取れず好き勝手動かれそうだし、本当戦場だと一騎当千な強者だけど好き勝手に動かれる駒より、多少戦力で劣っても命令には忠実に従ってくれる駒の方が使い勝手いいわよね」


 味方なのにいまいち信用してないという、ある意味フラグを立てながら襲撃組からの報告を待つ事しばし。



 丁度夜が開け始めた頃に伝令が届く。



 その内容は……










 クズの生け捕り成功という、フラグをへし折る報告であった。

フラグついてにクズ達の骨の一本や二本も一緒に折ってるかもねw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
惨劇を見届ける……上に立つ者としての決意と覚悟の現れですね。この方になら付いてイケるとあらためて思ったことでしょう。 似たような計略で織田信長様の「一城皆殺し」というのがありました。敵対勢力に対する…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ