⑨1.これは予定通りに戦線を開いて直接叩くか、それとも王国のやらかしを大々的に暴露しての自滅を誘うか……(SIDE:ロッテン)
どちらを選んでも、王国\(^o^)/オワタの未来に変わらないところがあれであるwww
「これは想定外だった……と言うべきかしら?」
王印が押された宣戦布告の書状を前にして、ロッテンはうなった。
ゼーゼマン公爵家は30年前の時点で帝国貴族との個人的な貿易で多額の利益を得ており、国王トビアスの実家で王家へと返上されたナドラガンド公爵家を領地ごと譲り受けた事で得た公爵位と宰相の椅子を手に入れてからは繁栄の一途をたどっている。
もちろん全てが順調ではない。
急激に大きくなれば大小様々な歪が生まれ、適切に対処できなければ損失がでる。
時には海路の中継地点として開拓していた島が伝染病で放棄寸前まで追いやられる等、家が傾きかけない程の被害すらあった。
それでもゼーゼマン家が瓦解しなかったのは、決してあきらめる事なく最善の道を模索し続けていたから。
だからこそゼーゼマン家は現在も繁栄し続けているわけだ。
それは決して棚ぼた的な幸運と過去の栄光に縋っているのではない。あくまで実力で掴みとったものだが、腐った貴族達はそれがわからないようだ。
嫉妬とも逆恨みとも取れるような不満の声が貴族の間でくすぶっており、今回の戦争で表面化した。
王家に協力する貴族の大半は王家への忠義なんて考えてない。王家と正義という看板に乗っかって美味しいところ……具体的にいうとゼーゼマン家が抱える富目当てでの協力だ。
今回の戦争はそうした害虫貴族達をあぶり出すのが目的であり、それは達成できたと言えよう。
後は戦争に勝利するだけなのだが、愚王トビアスはマイヤーが持ちかけた裏取引に応じていると聞いてるのだ。勝敗なんか開始前の時点ですでについている。
そう……ついているはずだったのに、ここで予想外の出来事が起きた。
「総大将が愚王じゃなくクズになるだなんて……アーデルにあれだけ心をへし折られたっていうのに、一度解体されて繋ぎ合わされたはいいものの、執刀後の容体が悪くて五体不自由は避けられないっていうのに……そもそも、戦争中に余計な事しでかさないよう一か月は昏倒し続けるだけの鎮静剤をぶっこんでやったのに、それでもなお復活して立ち向かってくるなんてあのクズの精神力と生命力を見誤ってたわ」
「ははは。まさに灰から蘇る不死鳥のごとくってやつだな。その執念はわずかながらも好感持てるぞ……本当にわずかながらな」
隣にいたハイドが笑い出すも、ロッテンはどうしようかと悩む。
革命に想定外はつきものとはいえ、今回の件はきな臭さがある。
クズは物理的にも精神的にも、そもそも意識すら回復の見込みがないほど追い込んだというのに復活したのだ。
その事実にロッテンはなんとも言えない妙な胸騒ぎを覚えた。
水面下の底の底。深海とも深淵とも呼ばれかねない人知の及ばない所から何者かが暗躍してるような……
「ハイドはどう思う?これは予定通りに戦線を開いて直接叩くか、それとも王国のやらかしを大々的に暴露しての自滅を誘うか……」
「もちろん直接叩く!!……っと言いたいとこであるも、若干のきな臭さがあるのは事実。
ならここは探りを入れる意図を含めて、いくつか戦争ルールの提案をしてみよう。その反応をみて、改めて対処する。それでどうだ?」
「問題ないわ。普段の貴方は政略なんて全く無縁な馬鹿だけど、戦術に関しては一級品の将軍といっても過言でないもの。私達王国では人同士の戦争なんてほぼ未体験だから、常日頃からドンパチしてる帝国の直系、第4皇子様の手腕を期待させてもらうわ!!」
「はっはっは、任せておけ!!では具体的な戦争ルールだがまず人数を絞って戦場を指定しよう。そして……」
こうして戦争のルールの叩き案を作り、その間侍女のカナリアに命じて町の運営に携わる者や実際に兵を動かす士官や隊長達を招集。
彼等を交えてあれやこれやと話し合う事で戦争ルールが完成。
「よし、まずはこれを提出して向こうの出方をみる。それと並行して罠作りだ。戦争に勝つ秘訣はただ一騎当千の猛者や多数の兵を集めるだけではない!!自分達が有利となる戦場を用意してこそだと心得よ!!」
「「「「いえっさー!!お行儀よく戦うお貴族様達に度肝抜かせてやりましょうぜ!!!」」」」
最早どちらが正義かわからないようなノリで士気をあげる面々。
特に罠なんて卑怯と言われそうだが、戦争ルールに『罠の使用は禁止』なんて書いてない。ついでにいえば武器の制限もない。
お行儀よく戦ってほしければ、それをルールに盛り込ませればいいのだ。
帝国も侵略戦争こそ起こしても消耗戦による泥沼化を防ぐため、宣戦布告後にすぐ開戦はしない。開戦前に戦争ルールや決着方法の擦り合わせを行ってからの戦闘を基本としていた。
その際のやりとりはもう一つの戦争。武官ではなく縁の下の力持ちたる文官や外交官達が主役となる戦争なのだ。
まぁ、中には交渉の席に付かなかったり駄々捏ねたり、酷ければ交渉にみせかけた騙し討ちもあるが、そうなれば降伏を一切聞き入れない殲滅戦を行うだけ。
ルールは何事も大事なのである。
そんなわけで今回王国に送る戦争ルールの提案書は挨拶がわりといわんばかりのリバーブロー。
あくまで敵陣営の様子を探るためのものであるが……
「返事が来たわ。要求の方は全て飲むそうよ。ついでにいえば、兵は300人までっと指定してるのにクズ達は平然と3000人ぐらい集めてるみたい」
判明したのは、敵陣営の愚かっぷりであった。
わかりきっていたが……あえて言おう
愚 カ ブ




