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8⑨.1000年以上続いたフランクフルト王家も余の治世で終わりと思うと、なんともあっけないものだ(SIDE:トビアス)

元々いつ滅んでもおかしくないぐらいガタガタだったし、あっけないのは必然かもしれない(ち~ん)

 アーデルはトビアスが持ち合わせてなかった、王の資質を持ち合わせていた。

 さらにいえばアムル家は表向き中立……あくまで表向き中立でしがらみが無いに等しい。

 現状では決定打のない王宮の停滞した空気に新たな風を巻き起こし、新時代を切り開いてくれると信じられる人材だったのだ。


 だからこそアムル辺境伯当主に無理を承知で頼ったのだ。

 アムル家にはすでにクラーラの件で貸しがあるにも関わらず、アーデルは王太子との婚約を引き受けてもらえた。


 ただまぁ、アーデルはデルフリとの顔合わせでいきなり⑨割殺しな目にあわせたという、ハイジを超える程の破天荒っぷりを発揮するかなりの問題児であったが、現状を変えるにはこれぐらい破天荒の方がよいともいえる。


 それに、彼女の足りない部分を補う側近は優秀だ。

 彼等彼女等は時代が違えば王となるに相応しい者達であるも、自らが王になる野望を抱こうとせず進んで王に忠誠を……

 アーデルの臣下へと下ることを選んだのだ。


 帝国の皇帝という、大国のトップもアーデルに王としての資質を認めた辺り、アーデルの才覚は本物。

 そんなアーデルとその臣下の者達が国政を任せられる程に成長してくれた今こそが、動く時なのである。


 トビアス達はそう確信したため、行動に移した。

 ブリギッテ達重鎮は愚者たちの油断を誘うため、アーデル達の卒業式に出席という自然な形で帝国へと渡った。


 あちらでは今頃、内乱へと突入して荒れる王国から漁夫の利を得ようとする他国に対し、あの手この手を使って牽制を入れてるだろう。


 ブリギッテの悪名は他国にも響いてるぐらいだ。その悪名高い女傑が直に交渉(脅迫)するのだから、よほどの無謀な馬鹿でなければ静観を選んでくれるはず。


 そして、王国に残ったトビアスの役目は……





 歴代屈指の愚王として、アーデルに討たれる事だった。


 かつて、ブリギッテが悪女となってトビアスとハイジの仲を後押しする選択を取ったように……


 トビアスが愚王というわかりやすい悪となり、新時代の王にふさわしい逸材であるアーデルに害悪となり果てた馬鹿貴族や王国諸共討たれる道を選択した。


 これなら、革命後の王国の混乱も少なくなる。考えうる案の中でもっとも最善策だった。


 そのため、正気に戻った後もトビアスは愚王を演じていた。

 愚王を演じて害虫貴族達の油断を誘いつつ、裏では革命の下準備を進めた。


 自身がそれほど有能でない事を自覚していたので、素直にブリギッテ達の手を借りて焦らずじっくりと水面下で計画を進めた。


 その過程でとんでもない爆弾が設置されたりするも、ブリギッテの過激な性格……

 かつての元婚約者達を残虐な手段で(素手で首をねじ切って)処刑したブリギッテの性格を思えば、当然ともいえよう。


 よって、トビアスも爆弾案件にはあえて触れない事としている。



 そんな革命の準備が終え、デルフリの断罪計画をきっかけに革命計画が発動。


 第一段階では予定外な事……特に先日の懇親会ではアーデル陣営がスタンドプレーしまくって内心ハラハラするも、結果論ではまぁおおむね計画通りだ。


 第二段階でもやはり予想外は起きるも、害虫貴族達を炊きつける餌を用意できたので成功ともいえる。


 そして、今は計画の第三段階であり……

 この先に進めばもはや後戻り出来なくなる。


 だが、すでに決意を固めているトビアスにはもはや引き返す気などさらさらなかった。



(ふ……1000年以上続いたフランクフルト王家も余の治世で終わりと思うと、なんともあっけないものだ。だが、後始末が得意な余にふさわしい大仕事でもある。それに、国民にとって大事なのは歴史ある王家の血筋でない。国民を幸福に導く王。そんな考えにいたる余は帝国に毒されたといえそうだな)


 帝国は近年こそ侵略は控え目でも、少し前までは歴史ある国を無数に滅ぼしてきたのだ。

 例え歴史ある王家の血筋であっても、害悪となれば躊躇なく滅ぼす。


 第一、フランクフルト王国の王家は30年前時点で滅ぼされても文句言えない程のやらかしがあったのだ。

 あの時点ですでに王家や王国の終焉は確定していたともいえる。





 そうこうしてる内に、あれだけ白熱してた議論も疲れのためか下火となっていた。


 ちらりとマイヤーとその隣の書記(ミスミ)に目を向けると、断罪の準備……

 どの貴族をどう処分するかという閻魔帳への記録を終えたらしく、次は貴方様の出番ですっと訴えてくる。



 トビアスはマイヤーに感謝していた。

 自分一人だけではこうまでいかなかった。


 途中で計画が頓挫するか、バレて幽閉か処刑されて王の挿げ替えが行われたであろう。

 それが今日まで貴族どころかアーデル達にすらバレずに居られたのだ。


 その立役者は間違いなく表向きの立案者であるマイヤーである。

 マイヤーはトビアスの頭にある朧げな案を具体的にまとめてくれた。

 実際に人や物を動かし、着々とその下準備を整えてくれた。


 もちろん一人で全てを進めるのでなく、王であるトビアスの要望を最優先した形で進めてくれた。


 一体なぜそこまでしてくれるかと理由を問いただせば、彼はこう答えた。


 “敵対者が驚愕や絶望していく様を見るのが、何よりも大好きだから……では駄目ですか?”



 相当歪んだ思想は持つも、婚約者のロッテンや仕える王となるアーデルは馬鹿達にとっての絶望の象徴として君臨してくれるという、やはりアレな理由で気に入ってるようだ。


 まぁとにかく、暗躍に関してはピカ一なマイヤーが今後も王国を裏から守ってくれるなら、王国の未来は安泰。


(それに……マイヤーは自身を悪党と称しつつも情はある。あんなどうしようもないクズとなったデルフリにさえ情を寄せてくれている。王家が倒れ、王である余が処刑される中であってもデルフリが生存する道をなんとか模索してくれるだろう)



 例え親ばかと言われようとも、トビアスはデルフリを見捨てられなかった。

でも、クズにそんな親愛は届かないに一票

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― 新着の感想 ―
判りやすい交代劇の為には目に見えての何かが必要ですけど、自分から進んでその役割をするなんて……王様、自己犠牲強すぎですよ"(-""-)" 閻魔帳(笑)に記録済みだからもう逃げられない……更に極めて断…
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