88.障害を取り除けば全て解決といかないのが、政治の難しい所であるな……(SIDE:トビアス)
というか、下手に難しく考えるせいで単純明快なお話にできなかったともいう/(^o^)\ドウシテコウナッタ
ハイジからの活もあって、正気へと戻ったトビアス。
改めてブリギッテ達に詫びを入れて今後の事を話し合う。
過ぎた時間はもう戻らない。
後悔したところで何も生み出さない。
大事なのは……これから何をすべきかである。
(不幸中の幸いか、世間一般ではトビアス王は引きこもりの愚王とされていた。人をあまり寄せ付けず、自室にほぼ一日引きこもってた事もあって、部屋から抜け出しても気付く者は居ない。それに余はビィトとしての籍も残ったまま。すなわち、ほとんどの者は国王トビアスが平民ビィトとして活動してる事を知らないということ)
ブリギッテ達は別にそんな意図でビィトの籍を残したわけでない。だが、ビィトの籍はトビアスが暗躍する隠れ蓑として最適だった。
こうしてトビアスは正気にもどって以降、表向きは愚王トビアスを演じつつ裏では平民で暗部所属のビィトとして動いた。
王ではなく平民の目で王宮や王都の様子を確認した。
それで判明したのは、デルフリのクズっぷりや貴族達の腐敗っぷり……
ブリギッテ達の取り巻くあまりよくない近況……
王国だけでなく、帝国含む様変わりしていく油断ならない世界情勢である。
幸い、現状は微妙なバランスながらも安定していたのですぐに行動を起こす必要性はない。トビアスは自分の行うべき事をじっくり見定める猶予があった。
優先事項は愚かだったかつての元王太子ザルフリと同類のようなクズになり果てた息子のデルフリと、そのデルフリを祭り上げる腐敗貴族の排除であるも、トビアスが行うには問題が多すぎた。
ブリギッテへの夜伽拒否に加え、正気を失って乱心していた間の愚王っぷりが祟って王家への求心が最低まで落ち込んでるこの状況。
それらを打破させるだけの資質。カリスマともいうべき王の資質があるとはトビアス自身考えてないし、なんらかの拍子で開花するなんて楽観視もしない。
身の丈以上の才覚を求めて失敗した経験もあって、自身はあくまで裏方でこそ本領を発揮できる器であるっと矢面に立つ道を早々に放棄した。
なら、王としての器を持つブリギッテが最適かといえば、そうではない。
彼女は帝国の人間であり、元婚約者だった前王太子を残虐に処刑したという真実や側妃ハイジに嫉妬する悪女という印象操作のために市井での評判が悪い。
そんなブリギッテ達に追加されていた新たな悪評。ハイジの死やトビアス錯乱の真相を探る調査が第三者目線だと隠蔽工作にみえたらしい。
そこをブリギッテに反感を持つ敵対貴族達に付けこまれ、気づけばこれら事件の首謀者にされたそうだ。
証拠不十分なので表向きは無罪となるも、裏では疑惑がくすぶったまま。
ブリギッテ達は強引な鎮圧ではなく、ある程度の譲歩という和解策をとったために結果として敵対貴族の台頭を許してしまったそうだ。
なお、これは国内だけの情勢をみてで語れば下策であるも、帝国が打倒魔王を掲げての共闘路線に切り替え始めたという国外の情勢を含めたら決して下策とはいえなかった。
(障害を取り除けば全て解決といかないのが、政治の難しい所であるな……)
トビアスは改めて現実の議会。
今なおヒートアップし続ける馬鹿達。かつての勉友達をみる。
彼等も昔は優秀だった。
貴族特有の傲慢さ故に相容れない所こそあっても、王国の未来を憂うだけの想いはあった。
ブリギッテ達を敵視するのも、王国の政治は王国の者で行うべきという気概からのもの。
そのために唯一の王家の血筋であるトビアスに期待を寄せてたのだろうが、結論からいえばトビアスはブリギッテ達に全権を預けるという彼等にとっての裏切り行為を行った。
彼等は表向き王に忠誠を誓っても、内心では王にふさわしくないっと考えていたのだろう。
正気を失った8年間の愚王っぷりをきっかけに、反乱を起こして自身が政権を取るなんて身の丈に合わない野望を抱くようになってしまったのだろう。
そんな彼等と一度でも腹を割って話し合ってればよかったかもしれない。
しっかりと詫びを入れ、お互いの腹の内をさらけ出してれば何か変わってたかもしれない。
少なくとも、国諸共破滅へと向かうような選択を取らなかったかもしれない。
(この愚か者どもが……)
トビアスは改めてぼやきたくなるのは無理なかろう。
例え、貴族達をあそこまで助長させたのは自身の不甲斐なさからであっても……だ。
もちろん、トビアスもトビアスで何の対策も取らなかったわけでない。
ただ、王国の安寧と王家の求心力の無さを考えると取れる手段が限られていただけだ。
それはブリギッテ達も同様。
彼女達はどこまでいっても帝国出身者というしがらみがある。
そのしがらみのせいで……
王国の利益のためとはいえ、王家や高位貴族の粛清や強引な改革のせいで……
何よりも、一昔前の帝国が侵略戦争を是非とする侵略国家だった事も相まって、打倒魔王へと向けた共闘路線へと舵を切り替えてる最中の帝国と少なからずの被害を受けていた属国や他国との亀裂を生じさせないためにも矢面に立って動くわけにはいかなかったのだ。
そんな取れる手段はあっても様々な思惑を考慮すれば取れないっという八方塞がりな状況下であっても、最適化ともされる打開策は残されていた。
アムル辺境伯の長女、アーデルである。
困った時に頼りとするのは主人公なのがなろうのお約束。
なんだかんだいってヒロインであると同時に主人公認定されてるお義姉ちゃんは格が違うのであるwww




