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85.余は選択を迫られ……(SIDE:トビアス)

命の洗濯を迫られ……(違)

 そもそも、ブリギッテが王国へとやってきたのは子作りのため。


 1000年以上の歴史あるフランクフルト王家の血筋を帝国にも取り込むため。


 ブリギッテとの子作りは何よりも最優先されるものだ。



 当然、それはトビアスだけでなくハイジも理解していた。

 2人には若気の至りこそあっても、政略結婚の意味を全く理解せずに愚行を侵した従兄の元王太子達と違った。

 彼等のせいで一時は王国の存続が危ぶまれるほどの被害を受けるも、ブリギッテ達の奮闘でなんとか持ち直したのだ。

 それを自分達が台無しになんてしたら、報われなさすぎる以上に許せない。

 自分自身こそが何よりも許せないっという想いが2人の根底にあったからこそ、自制が利いたのだ。


 まぁ中途半端に寸止めさせたせいで火種がぶすぶすとくすぶってしまった気はするも、世の中には決して実らぬ切ない恋の物語がある。

 特にトビアスは自由恋愛ができる平民のビィトとしてではなく、政略結婚が義務付けられる王族のトビアスとして生きる決意をしたのだ。


 よって、ハイジとの仲はお互い初恋として清算させたはずだった。






 ……………………


「いよいよ、今日この日が来たのか」


 トビアスはごくりと息をのむ。

 男としての興奮よりも、重大な任務の遂行という責任感から緊張が強まる。


 ブリギッテ達は芳しくない結果で終わっても問題ないから気にするなと笑ってくれるも、トビアスは心配性で責任感も強いためか全く笑える心境にはなれない。


「本当に難儀な性格してるっと我ながら思ってしまう」


「全くだよね」


 寝室へと案内してくれるのはハイジだった。



 ハイジにはまだ婚約者がいない。見合い話はいくつか来ても、その全てを断っているからだ。

 中には最良物件とも言うべき話すらあったのに、気に入らないの一言でばっさりである。


 一体何を考えてるのか……


 今回の件も何を思って引き受けたのか……


 もしかして、いまだに未練があるのか……


 だが、ハイジに直接問いただす勇気のなかったトビアスは結局何も聞けず、そのまま寝室へと到着。

 ハイジがノックした後にうやうやしく礼をしながら扉を開ける。


(いよいよか……)


 改めて覚悟を決めたトビアスは寝室へと入り、そして……














(ば、化け物!?)





 戦慄が走った。







 トビアスからみたブリギッテは婚約者というより姉のような存在であった。

 敵対者や反逆者には容赦なく粛清する無慈悲な面はあるも、それはあくまで一面。

 普段は国民の生活を第一に考える、厳しくも優しいトビアスが理想とする王だった。


 だが……トビアスはブリギッテの全てを知っていたわけではなかった。


 ベットの上で腰掛けて待っていたブリギッテを……

 普段はあまり見ないブリギッテの裸体を見た瞬間、恐怖した。


 まるで()()()()()()のような……

 出会えば確実な死が訪れるとされる伝説の魔獣、首狩り兎(ヴォーパノレバ二ー)のような……


 高性能な武具で身を固めた者が集う戦場を全裸という馬鹿げた姿で駆け抜け、すれ違い様に首を次々と刎ねるという『裸忍者殺法(裸〇活殺拳)』の使い手のごとき……


(いや、そもそもブリギッテ皇女はその『裸忍者殺法(裸〇活殺拳)』の継承者とされる初代皇帝の血を引きしお方!!つまり……今の姿は……)


 そうこうしてるうちにブリギッテが声をかけてきた。


 何を言ってるかわからないが、ちょいちょいっと手招きしてくる。

 その手招きに釣られて近寄ればその瞬間、その手でトビアスの頭をひっつかんでそのまま首をねじ切られてしまう自分の幻影をみてしまい……











 ……


 …………


 ………………




(それで、気が付いたらハイジに膝枕されていたのだったな)



 ハイジが言うには、ブリギッテの寝室に入った後に悲鳴が上がって何事かと思って部屋へ入ったら、錯乱状態になってたそうだ。


 錯乱中は全く記憶にないものの、錯乱自体は子供のころからよく起こしていた。

 それは責任感の重さや心配性からくるストレスがそれがピークに達した際の自己防衛として“発狂(SAN値直葬)”するのだと思われた。


 治す手段は簡単に、ハイジが脳天に一撃かますだけ。

 ただし、最初こそ軽い斜め45度チョップだったが、発狂回数を重ねるごとにただの45度チョップでは正気に戻ってくれないからっと両手を組んで殴ったり(ダブルハンマー)、椅子でぶん殴ったり、バックドロップだったりと少しずつ破壊力が増していった。


 ちなみに今回は後ろから抱えて飛び上がり、きりもみ回転しながら頭をたたきつけるというバックドロップをさらに強化した大技。『(ペガサス)(ローリング)(クラッシュ)』という、あからさまに室内で放ってはいけない大技であった。


(今更ながら思うが、この城の天井の高さや床の耐久はどうなってるのだろうか……)


 ハイジは喧嘩っ早い性格こそしてても、城の中では自重してたのでそれほど気にはならずとも次世代……アーデル世代は全く自重しなかった。


 城の中でしょっちゅう大技を繰り出し、その度に床やら壁を損傷させる。

 だが、天井はなぜか被害を受けないし、床や壁も翌日には元通り。


 一応ゼーゼマン家の影が修復してるとはいっても、限度というものがある。



 本当に謎なのである…………




(いや、わかっておる。こんな事考えてる場合ではないが……済まぬな。あの後の事は……その……あまりにこっぱずかし過ぎて詳細明かせんのだ。

 よってざっくり説明すると……ハイジに告白したんじゃよ。

 なんでも錯乱中に秘めていた想いをぶちまけてしまい、その件で余は選択を迫られ……




 余は……ハイジを側妃に迎える事としたのじゃ)

ラブストーリーは突然に……

いや、どちらかというと唐突に……か?

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― 新着の感想 ―
舌なめずりして待っていたのですか?目をランランと輝かせて。 その技は遥か高みから落ちるのですね……倒した証のカードは置いているのですか? これが運命の分かれ道。
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